「junction」
物心ついた頃には、君が隣にいた。
見つけた目標。人生設計。
なにもかもが、ずっと君と一緒にいることを前提としている。
自分自身がわからなくなった時でさえ、変わらずに君はそばにいてくれた。
このあたたかさをずっと守りたい、そう思ったから、自分が何をするべきか本気で考えることができたんだよ。
うっすらと積もった雪は、十時過ぎにはもう溶けていた。
今シーズン最後の雪かもしれない。
正直言うと、離れたくない。
春にならなければいいのに。
このまま君を連れてどこかへ行けたらいいのに。
だけどそれではハッピーエンドにならない。
ふたりで決めた覚悟はひとつだけ。
目標を達成するための六年間が始まろうとしている。
────たったひとつの希望
「オオカミ、尻尾を出す」
特技は、本当の自分を隠すことです。
その結果が、コレだ。
安心安全。人畜無害。
そう思われるように行動してきた。
気を許してくれてるのは、嬉しいけど、嬉しくない。
幼馴染だからって、きょうだいみたいに育ったからって、いくらなんでもこれはないんじゃね?
何の拷問だ、これ。
好きな子が自分のベッドの上でうたた寝してるなんて。
頭を撫でてみても、起きないお前が悪い。
どうなってもしらねーから。
顔を覗き込む。
「……いいかげん、起きろよ」
そして、この状況に慌ててしまえばいい。
────欲望
「雪国の小京都」
端にほんの少し雪が残る住宅街から出発し、りんご畑を抜けて進んでいく。
ゆったりと千曲川沿いを走る。
トンネルを抜けるたびに雪の量が増えていく。
ふと気がつくと、窓に白い粒が当たっていた。
その大きさと激しさに、日本有数の豪雪地域──特別豪雪地域に指定されているのだと、改めて思う。
単線非電化のローカル線。
降り立った駅は無人。
母が生まれ育った町。
顔も覚えていないその人の足跡を辿る。
もしかしたら、一緒に見ていたかもしれない景色。
白い。
どこまでも白くて、目を閉じる。
────列車に乗って
「月が綺麗ですね」
君は高速バスを使う。
少しでも交通費を抑えて、会う回数を増やしたいから。
駅前のバスターミナルまで徒歩四十分。
ゆっくりと女鳥羽川沿いを歩く。
絡めるように繋いだ手を離すタイミングを迷う。
君と離れて暮らしてから初めて知った。
自分が心配症で嫉妬深いこと。
あと何年何ヶ月。
何度も二人で数えてる。
稜線の向こうにある、二人が育った街へと君は帰っていく。
この先にあるものを、二人で掴むって決めたから、どんなに辛くても頑張れるんだよ。
ひとりきりの部屋。
見上げる月。
君も見ていると信じて送るメッセージ。
────遠くの街へ
「ボーダーライン」
まるで蜘蛛の巣に捉われた蝶のよう。
手首を掴まれ、壁に押しつけられている私。
目の前にいる幼馴染の、熱を帯びた瞳から目を逸らす。
今ここで、こいつと唇を重ねてしまったら、たぶんもう幼馴染という関係には、二度と戻れない。
「……こっち向けよ」
手首を掴んでいた片方の手が外されたかと思うと、その手で前を向かされる。
抵抗できない力で。だけど、優しく。
覚悟は、あるの?
もしうまくいかなかったら、きっとそのあと周囲も巻き込んで気まずくなるよ?
そりゃ、小さい頃「おおきくなったら、けっこんしようね」と約束したけど……
「俺だけを見て」
射抜かれて、動けない。
どうしよう。
息って、どのタイミングで止めたらいいの?
もう、目を閉じた方がいい?
お父さんとお母さん、なんて言うかなぁ……
隣に住む、ひとつ年下の男の子と、こんなこと……
そういえば、なんで、こんなことになってるんだっけ?
絡まる記憶の糸を解けないまま、距離は縮まっていく。
睫毛長いなぁ……
────現実逃避