「この冬最後の雪の日 喫茶店 女友達と」
「あんな男のことなんかで泣いたりしない」と、貴女は窓の外に顔を向けた。
眉を吊り上げ、口を一文字に結んでいる。
雪降る街を眺めているように見えるけど、外の景色を貴女は見ていない。
「あんな男のことなんて忘れてやる」
「貴重な時間を無駄にした」
本当はそんなこと思ってないでしょ。思いたいだけ。
忘れられないと泣いてもいいんだよ。
涙は辛いことも苦しいことも、前を向くために流してくれる。
私が言うんだから、間違いないよ。
泣き虫だけど、ポジティブでしょう?
「説得力ありすぎ」
貴女は笑う。
その頬に、一筋の涙が流れた。
────泣かないよ
「後ろから前へ」
君は、昔から僕の後ろに隠れていた。
君を守るのはいつも僕の役目。
それはずっと続いてきたこと。
だから、きっとこれから先もずっと、君を守っていくのだと思っていた。
だけど、君はそうじゃなかったんだね。
このままじゃいけないと思った君は、いつしか僕の後ろから隣に立つようになって、今では僕の前を歩いてる。
僕には怖いものがあるんだ。
君にも言えない秘密。
それは、君が僕の前からいなくなってしまうこと。
君に必要とされなくなること。
────怖がり
「tears」
出会ってから何年経ったっけ?
故郷ではいくつも見えていた星が、この街では見えない。
だけど、星ならここにある。
数十年前のドラマみたいにすれ違って、ありえないくらい遠回りしたふたり。
一周回って、やっと想いが重なった。
大きな瞳は宇宙みたいで、吸い込まれそうになってしまう。
その瞳から流れるものを拭う。
ずっとこんな風に触れたかった。
故郷にいた頃も、都会に出てきてからも、ずっとずっと、君のことを諦められなかった。
君も諦めないでいてくれて、ありがとう。
────星が溢れる
「君の瞼にキスをひとつ」
頭を撫でてその瞳を覗き込めば、健康状態も精神状態も、なにもかもわかる。
子供扱いしないでと君は言うけれど、可愛くて仕方ないんだ。
祖父から受け継いだという、不思議な色の君の瞳。
澄んだ空を思わせる。
今日あったことの中から、良いことばかり伝えようとする君の唇から、辛かったことを引き出すのは意地悪じゃないよ。
その瞳をもっとよく見せて。
もうちょっとだけ、夜更かしをしよう。
見透かされることを恥ずかしがる君の、閉じた瞼に口付ける。
────安らかな瞳
「眩しいあなたを」
いつも見ていたから、知ってる。
あなたがどんなに努力していたのかを。
そして、それを他人に見せないようにしていたことも。
子供の頃からの夢は、簡単なように見えて困難があふれていた。
立ち止まりながらも、それらをひとつひとつ、解きながら、一歩一歩、着実に進んでいく。
その姿をずっと見ていた。
時々、眩し過ぎて胸が締め付けられるのは、私にないものをあなたが持っているから。
遠距離恋愛になるからなんて、出来ない理由にしてるだけ。
そんなことで壊れる私たちではないのに。
ひとりで歩けるようになって、初めてあなたの隣に立てるような気がするから、私は私の成し遂げたいことをすると決めた。
少し遠い未来。
いつまでもあなたの隣にいられるように。
────ずっと隣で