●「ねーお兄ちゃん知ってる?」
「なあに?」
●「お星様は天使様なんだよ!」
「そうなのか」
●「うん!だから、お星様に願って手をこうやって合わせたら願いが叶うんだよ!」
「おー願いが叶うんだな」
●「そうなの!でも……」
「どうした」
●「今日はお星様いない。雲が意地悪してるから」
「そうだなー」
●「うーん明日なら晴れてるかな?」
「どうだろうな、明日……手術頑張ったら、見えるかもな」
●「うん!僕頑張って病気治す!それでーお星様にお願いするの!」
「そうか。何願うんだ?」
●「うーん秘密。」
「どうしても?」
●「内緒の秘密ーー。しーだよ。」
「なんだそれ笑」
●「……お兄ちゃん」
「ん」
●「なんでもないよーだ。」
「はーもう寝るぞ笑」
●「うん!おやすみお兄ちゃん」
「……おやすみ」
翌朝
晴れやかな朝日が差し込む
病院の中は白すぎて眩しいくらい
弟が呼ばれて、手術に向かった。
……頑張れ。
●「おにーちゃーん!」
「あぁ、どうした?」
●「呼んでも返事しないから!僕、頑張るよ!」
「……ああ」
弟は、癌だ。
俺は馬鹿だから、詳しく話されても分からなかった
ただ癌であるらしい。
手術は成功するか、失敗するか、分からないらしい
でも、信じてる、きっと……って
……死ぬな、死ぬなよ。
「あのー手術、終わりましたよ?大丈夫ですか?」
「えっあ、大丈夫……です」
「君汗凄いね。大丈夫?」
「は、はい、えっと弟は……?」
「終わったよ、無事。」
「…………!!!!!」
「す、すぐ行きます!」
●「もういるよ、お兄ちゃん。」
「……!!よかっ……た。よかった、本当に」
●「大袈裟だよ、ほらお兄ちゃん立って」
「だっ、だってー……あーーーーよかったー!」
●「お兄ちゃんうるさい!ほら、僕もう布団に戻るから」
「ごめんなぁ、でも嬉しくてさーーーー泣!」
●「あっ今日お星様見えるよ」
「なんかお願いするか」
●「えーと、お兄ちゃんが僕なしでも生きていけますように」
「……へ?」
●「お兄ちゃん、今日すごい泣いてたし、一人暮らしとか心配。」
「だって」
●「だってじゃない!……お星様みたら僕のこと思い出して安心して!」
「……えーあーうん!」
●「へへっ」
「じゃあ俺は……」
この空に星が輝いている限り、俺と弟が、いつまでも、どこにいても、通じ合えますように。
●「お兄ちゃん、今なにお願いしたの?」
「へへっ内緒の秘密!」
『星に願って』
君の背中をずっと追ってた。
いつも頑張る君を。
でも、
そんな君の背中が見えなくなった。
君はある日を境に学校を休みがちになった。
前兆はあった、
君の弱音、恨み辛みその他有象無象をメッセージにて、聞いていた。君の背中は小さくなったように見えた。なんだろう、この感じ。
「はあ……かわ」
「おーーーーーい!!!!!サッカーしようぜ!」
結局、自分は何を思っていたのかも忘れてサッカーをした。
君の家に呼ばれた。
僕は家に向かった。
君のお母さんが部屋に案内してくれた。
君を見た。
「かわいそう。」
息の詰まるような暗い部屋
換気もされてなさそう。
そんな部屋の真ん中に女の子座りで俯く君。
その君の頭にボソッと吐いた。
「あんたもそういうこと言うんだ。」
「僕はもっと明るくて、サッカーを頑張って、頑張って、頑張る君が好きだった。成績も、やばいーって言いながら平気で10位以内に入る君が好きだった。何か、君の顔が見えたらそんなもんかって、なった。」
「そ、」
「そう。」
『君の背中』
「死んだらどうなるかって考えたことある?」
「さあ?適当に天国とか行くんじゃない?」
「ふんふん、あやは?」
「うぇ!?私?うーん。幽霊としてふわふわと浮いているんじゃないでしょうか。そういうまーやはどうなんです?」
「あたしはー人は死んだら輪廻転生すると思ってる!結構ガチめに!」
「私は天国行ってダラダラゴロゴロな毎日が良いけど?」
「めいはその調子じゃ天国にも行けませんよ……」
「説教やだー!ね、まーや。輪廻転生論でいったら私たちやっぱ前世あった系?もしかして一国の女王だったり……」
「ううん。私たちはもやし。」
「ん?もや……もやし?へ?」
「太陽の光を目いっぱいに浴びて成長したかった可哀想なもやし。その3人組。」
「前世の記憶ですか?」
「あと、暴走族。調子に乗ってバイクに3人乗りしてる。」
「……この前自転車でやりましたね。」
「それから判子。佐藤、鈴木、高橋。同時に売れたみたい。」
「佐藤あや、鈴木まや、そして私、高橋めい。」
「……どーゆーことだよ。
それ、ほんとに全部……前世の記憶なのか?」
「うん。」
「つまり……つまりね、死んだらどうなるかって答えは、私たち3人組は何も変わらないってことなんだよね。」
「3人組は変わらない……」
「あやの胸も成長しないままってこった」
「いまその話はしてません!破廉恥めい!」
「私たちは運命レベルで赤い糸……いや友情の糸……いやめんどくせ。赤い糸で結ばれてるって事なんだよ!!」
「だから、何百年後も、何千年後も、何光年先でも、未来と、思い出を繋いでいこうね。」
『終わらない物語』
「俺たちの冒険はこれからだ!!」
はあ?
「〜これからも多摩とりねん先生の
次回作をご期待ください〜」
なにこれ、さいっあくな最終回なんですけど。
何で とりねん先生の最高傑作が打ち切られるのよ!
人気投票第1位の
「カラビナ泣いたらお腹が空いた。」
この作品は1話が出た時トレンドにも入ったのに……
確かにとりねん先生は一風変わったギャグ調で、たまに何言ってるか分からない時もあるけど。
でも!それでも私はとりねん先生の感動シーン、全米がいや全宇宙が泣いてしまうような台詞回しに全てを理解する伏線回収が!好きだったのに……
「なにが「僕たちの冒険はこれからだ!!」よ!」
ふざけんな!ふざけんな……
目頭が熱くなっていくような感覚が私を襲う
泣きたくなんてちっともないのに
こんな作品に泣く価値なんてないのに
ピロン
スマホが鳴った
「……」
重い体をおこしながらスマホに手を伸ばす
「うぇ?」
思わず変な声が出て、口を塞ぐ。
「このニュース、本当?」
【現在話題沸騰中!強引な打ち切り!!
漫画家 多摩とりねん。真相は過労死!?】
そうだったんだ……
先生が過労死……そっかそれで……
ん?それで?それでなに?こんなゴミみたいな感じに終わったのは言い逃れできなくない?
担当編集は何してるの?こんなの世に出したら炎上確定だよね?この記事によるとラスト10ページは絵柄を寄せての代筆らしいけど……。こんなの先生の冒涜じゃない。死んだから適当に終わらせていいやって思ってんの?違うじゃん、私たち読者のこの気持ちは……どうすればいいのよ。せめてもっと……
「もっとどうにか出来たでしょ!!」
なんなのよ……
「やるせなさそうだね〜」
なに?漫画とかでよくある感じの妖精さん?
「今は感傷に浸りたいからどっか行って」
むかつく、むかつくむかつくむかつくむかつく
いま私をどうこうしてもなににもならないの!
「ああー!もう!めんどくさい!感傷に浸りたい?うるさい!このセンチメンヘラ!あたいのノルマ達成したら勝手にどーぞ!」
「なによ妖精もどき!人の気も知らないで……あ、人じゃないから分かんないか笑。」
「わかるけどわかんない!!ほら立って!」
「わあっ!」
体が勝手に……?
「全部言うから覚えてね!これは貴方たちの世界によくある時間遡行モノ。今から時間遡行して、多摩とりねん先生改め、本名 高島 和樹の過労死をどうにかこうにかとめて欲しい!時間遡行先は今から3日前の高島和樹の部屋!」
「ちょっ……いっぺんに言わないで!」
「習うより慣れろ!じゃあ行ってらっしゃーい♪」
『変な世界へようこそ』
「さっむーい」
「仕方ないなあ、ほら俺の手であっためてやるよ」
駅のホームで朝からいちゃいちゃして、楽しいのかしら。……まあ、楽しいのでしょうね。
寒ければヒートテックにカイロに防寒着ましましにしてやればいい。生足出そうとか、そんな元気のいいJKじゃない。こちとら受験でピリピリじゃい、と……。
でも、人のぬくもりであたためて貰えるのは……また違った温かみがあるんだろうな。
ひゅーーー
「さむ」
今日は手ぶくろを忘れてしまった
何とかしようとカイロの入ったポッケに手を突っ込む。
「あったか……」
「おい、手ぶくろないのか」
「おい、お前だよ」
え、私?とジェスチャーをして頷かれたので
「急に何?」
と、素っ気なく返した
制服は同じだけど、知らない人。
「はい、まだ新品だからやるよ。
転んだらあぶねーだろ」
「はぁ……」
まじでコイツは誰なんだろう
そんな私の困惑を待ってはくれず
「じゃ」
と一言いって手ぶくろを私に押し付け逃げてった
「……」
「ふふっ」
ちょっと可笑しくて笑ってしまった。
本当に新品そうな感じがする
はめてみると、あったかい。
翌日
「ねぇ、手ぶくろありがとう」
手ぶくろをした手で、
知らないアイツに手ぶくろを返す。
「あの……ん……その、手ぶくろ友達としてLINE交換しねーか」
「……」
「あははははっ
また意味わかんないことっあはははっ
なによ手ぶくろ友達ってあはっ
一方的に貸してきただけじゃんあはははっ」
「わ、笑うなって」
「だってーあははっ
まあーいいよ、その勇気に免じてLINE交換しても」
「まじかよ!じゃなくて、えー……サンキューな」
「クールぶらなくてもいいのに」
「るせーよ、困ったらLINEしろよな」
「ねー桐生ー今日は手ぶくろ忘れちゃったー」
「あ。俺も忘れたわ」
「まじかー今日は桐生から
借りようとしてたけどダメかー」
「……手、繋ぐか?」
「はーいダメでーすまだ繋げませーん」
「な、人の勇気を蔑ろにしやがって」
「勇気だけじゃダメなこともありまーす」
「じゃあ寒さ忘れるように入試対策の問題出すわ」
なんか、不思議な感じで出会った私たち
いつの間にか一緒に学校に通う仲に。
まだ手を繋ぐっていう勇気は私の方にはないから
雪が解けたころまで、待っててね。
『手ぶくろ』