夜のうちに静かに雪が積もることを知らない地域の人は、冬の夜が意外と明るいことを知らない。雪が街灯を反射するから日が落ちる18時よりも0時の方が明るいのだ。雪明かりに照らされながらポケットの中でも悴む手先をぐっと握り歩く。家路を急ぐと風呂を沸かすボイラーの音と共に少しだけぬるい空気が肌にふれた。
クリスマスが他の日と何一つ変わらなく過ぎる。サンタさんなんて子供の時から親だと知っていたのに、朝起きて枕元に何も無いことがやけに寂しい。あぁ、ほんとうにサンタさんは親だったんだなと田舎にいる両親を想う。
「イルミネーション 光の回廊だってさ」と声をかけた先にいる彼は目線をちらと私に向け「人多そー」と口を動かす。「たしかに、私達人混み苦手だもんね」と返した私の口には「別れよう」と言う言葉が留まる。ぐにぐにとした言葉を咀嚼してゆっくり飲み込み、「もう私達無理だね」と、あ、言っちゃった。身体を起こしてきた彼に「遅いよ」と笑いかけてスマホの電源を切った。
患者さんが手のひらに乗せてくれた手紙が、今まで貰った中で1番の贈り物だなと思う。退院後、どうかあなたの生活が安心して過ごせるものでありますように、健康でいれる日が1日でも長くありますようにと日々願っている。私の顔や名前を忘れてもいい。それよりも貴方が今大事にしていることを覚えて幸せに生きていてほしい。私が貴方を覚えておくからまたふとした時に病院の外で会えたら声をかけさせて下さいね。
昔の恋人の話を聞いて、あの人が私をちゃん付けで呼んでいたことを思い出した。芸能人の元彼が別れた後に攻撃的になり炎上しているのが流れてくる度、私の恋人は私を言葉や暴力で殴りにきていないなと思って、そんなところに少しだけ愛しさをおぼえる。1度交わった縁はまだ心の隅の方に残っていて、それはもうめったに心の真ん中にくることはないんだけれど。それでも貴方が真ん中にいた時はあったなぁと思いながら帰路に着いた。