「一輪の花」
病室のドアが開いた。
私は、ドアが開く音で目を覚ました。
「あら、寝ていたの?ごめん」
母だった。
「いいよ」
昼食後に読書をしていたのだが、うとうとして、いつの間にか、眠ってしまっていた。
母は、ベッドの近くに置かれた花瓶に一輪の花が挿してあることに気付いた。
「彼が来たのね」
「うん」
私は、もうすぐ退院する。
退院したら彼と、デートする予定がある。
「楽しみだなぁ」
私が独り言を呟く。すると、母は首かしげて聞いた。
「何か、楽しみな事でもあるの?」
「うん!退院祝いのデート」
「それは、よかったわねぇ」
「うん!」
母も自分の事のように嬉しそうだった。
私は、退院する日に早くならないかなぁと思いながら、彼から貰った一輪の花を見つめるのだった。
「魔法」
昔の話だ。
父は、本物のように絵を描くことができた。
私は、魔法みたい!凄い!とそう思った。
父に影響されたのだろう、私はイラストレーターになった。
私は、誰か一人でも笑顔になってくれるそんな魔法のような絵を描きたいと思って、仕事をしている。
これからも仕事を続けたいと私は思う。
「君と見た虹」
君と見た虹は、凄く綺麗だったと、虹の写真を撮りながら、僕は思った。
君と虹を見た帰り道に、猫を見た。
僕達の目の前を横切り、走っていく猫を見て、そういえば、今日は猫の日だと、僕は思い出した。
隣で君は、うれしそうにしながら言った。
「猫の日に、猫を見れるなんてラッキーだよ!」
「あまり猫を見ない気がするからほんと、ラッキーだったね」
僕がそう言うと、君は、大きく頷き、
「うん!」と言った。
君と見た虹は良いことを引き寄せる力があるのかもしれない。これからもっと良いことが起きるといいなと歩きながら考えた僕だった。
「夜空を駆ける」
僕は、夜空を駆ける。
僕は、君を探して走っていた。
僕は、君の名前を呼びながら、辺りを見渡す。
「いない。どこにいった」
連絡をしたいが、スマホの充電が切れてしまった。
僕は、途方に暮れて、立ち尽くしていた。
その時、君の声が聞こえた気がした。
声のした方向へ僕は、走る。
「いた!良かった。君を探していたんだよ」
何かを見ている君がいた。
「ごめん。心配かけて。貴方が好きな花を見つけて、見ていたら、夜になっていたよ」
君は、花を見ていた。
僕が好きな花を君に写真を見せ、話した事があって、その時に、また見たいと言った事を僕は、思い出した。
「ああ。そういう事か」
僕の好きな花は、夜にしか咲かない希少な花だ。
僕は、周りを見た。
そこには、辺り一面、僕の好きな花だらけだった。
「すごく綺麗だ」
僕は、呟く。
「うん!貴方と見れて、良かった」
君は、嬉しそうに言った。
「探してくれてありがとう!」
「いえいえ。私、君が好きな花を実際に見たかったから」
「見て!月も綺麗だよ」
君は、いつの間にか、月を見ていた。
「本当だな。月明かりに照らされて、僕の好きな花が更に綺麗に見えるよ」
僕は、月と花を交互に見ながら言った。
「そうだね」
君は、頷きながら言った。
「そろそろ、帰ろうか」
僕は、言った。
「うん!」
僕は、君と見た好きな花を忘れないだろうと帰り道に歩きながら、そう思った。
「君の声がする」
君の声がする。
僕は、夢から目を覚ました。