天然由来の油でギトギト
ほんのり甘いベール被せて
丸めて見せた綺麗な面
どうぞお好きに
白餡 黒餡 ときには辛味
知らない用語を使わないで、難しい意味を解説しないで、
噛み砕いたら歯が欠けちゃった
極彩色のタールと化した
複雑で単調なマーブル模様
【この世界は】
何度も何度もアラームかけた
眠くないのに起きあがるのは十分前。
玄関に置いてあったのに忘れた
鞄に入れては別の鞄を手に出掛ける。
人生うまくいかないどころか
日々の営みにつまずいている、
人間讃歌
なんともいじらしい、
ヒトは愛される素質があると。
愛をもとめて進化しながら
愛をみつめて退化してきた。
イヌやネコ、空や海
知らないだれかの愛からうまれ
何億光年と謳われている
問いかけたって返ってくるのは
あなたは愛されているとの詭弁ばかり
【どうして】
終点のない列車に乗り込んで、ただ揺られていた。
切符は早々に回収された。
乗務員がいうには「リサイクルの為です」と。命はまわす必要があって、終点がないのもその為だという。
外の景色はよく移り変わった。
眠気に身を任せるたびに。ゆえに目を覚ますたび、別世界へと入り込む。
カラフルな気球が晴空に浮かんでいた。かと思えば雪枝の山中を走っている。かと思えば金銀、小魚の群れが泳ぎ去り。かと思えば……
終わりなく眠ってしまう。
不思議とからだの疲れはなくて、もうどれだけの駅を過ぎたのか、はたまた停まっていたのか定かでない。
心地良く。
仮に今「降りてください」といわれても動けそうにない。
乗務員が巡回にきた。手帳のようなものを開き、切符を見せろという。
切符はもう渡した。
降りる予定の駅はない。
このように伝えると、相手は頁を捲りながら無言でしばらく立っていた。そうして何度目かの景色が過ぎた。
「リサイクルの為です」頁を捲り終えた乗務員がいうには。
「いちど本来の姿に戻し、さいど命をうみ落とす為の」
流されてゆく景色と眠気。噛みころす欠伸。
相手は繰り返す。
「再生の為です」
言い直すように強く。
まぶしさに車内が染まるなか、白、黄、赤などの光をみた。
サイセイのためです。
また言い直すように。
それは「再生」というよりも、別のなにか、響きとしては終着が始発に変わる瞬間に近いなにかを感じさせる。
【夢を見てたい】
眠れないね 雀たちが挨拶しだして
起きあがれないね 床には
ただひとりの生き物がいて
冷たくなった 脚とこめかみ、酷い頭痛
身を包むものが無いから
抱えこむものも、無いから
冷たくなってただひとり
ころがってる 生きたまま
ただひとつ、冷えたことばが
ころがってる 顔のすぐ横
着込んでも寒風 通り抜けたように
床で縮こまった体 串刺しにされた
まるで解凍の時を待っている
生き物、ことば
冷気に浸され 目を瞑り
一回、
二回 くしゃみした
【寒さが身に染みて】
古い会話履歴は削除した。
見返さない写真は削除した。
今に不必要なら棄ててきた。
約束される度、無責任に同調した。
寝付く度、穏やかな最期を想像した。
微かな期待は気のせいにした。
もとから居なかったんだよ。
それでも世界は変わらず回っていたんだよ。
ああ
でも、
長く生き過ぎた。
この日がくるまでに本当は、
本当はね、
……。
本当は絶望していたかった。
戻れなくなる度、幼さだけ引きずられて人生が進むんだ。
【20歳】