テーマ:ささやかな約束
保育園からの帰り際、娘のお友達が声をかけてくれた。
「またあした、あそぼうねー!」
ふたりはハイタッチして、にっこり笑う。
「またあした、あそぼうねー!」
うちの娘も、同じ言葉を返した。
娘にとって、その子はお姉さんのような存在だ。
月齢の離れたお友達は、いつも優しく手を引いてくれる。
2歳と3歳が交わす、小さくて、ささやかな約束。
ふたりは、姉妹のように、いつでもいっしょ。
朝、登園すると、自然に手を引いて席に着く。
小さなお手々を繋いで、散歩に行く。
明日もまた、仲良くあそべますように。
そんな願いを胸に、私はふたりの姿を見守った。
テーマ:祈りの果て
小さく、かすれるほどの声で、
ひとつの魂が祈った。
どこか、ここではない遠い場所へ――
心穏やかに過ごせる、
迫害のないところへと。
寒さに震えることなく、
痩せた体が病に蝕まれることもなく、
意地悪な人々に
心無い言葉を投げつけられることもない
そんな場所へ。
祈りの果てに、神様は遠い場所へ
運んでくださった。
暖かい寝床、安全で静かな環境、
優しい人々。
ほかほかと湯気を立てるスープ。
向けられる笑顔につられ、
こわばっていた表情も、やがてゆるむ。
お腹も心も満たされ、
守られながら眠る夜。
窓の外の月は、美しかった。
――もう大丈夫だよ。
空は、そう言って微笑んでいるようだった。
それが、祈りの果てに見つけた世界。
テーマ:心の迷路
大人になるほど、
「何がしたいのか」と問われる場面が増えていく。
進路は? 恋人は? 就職は? 結婚は?
そのたびに、心は迷路の中をさまよう。
右か左か——どちらが正解なのか。
いや、選択肢があるだけ、まだ恵まれているのかもしれない。
思い切って踏み出した先で、
行き止まりに気づき、立ち尽くすこともある。
引き返すには遠すぎて、
これまでの時間が無駄に思える。
ふと見上げれば、
時間だけが、確実に過ぎていく。
進んでいるのか、ただ同じ場所を回っているのか、
わからなくなる。
——けれど今、
この迷路の途中で出会った人と、
肩を並べて歩いている。
この人となら、
迷うのも悪くない。
テーマ:ティーカップ
アールグレイにミルクを注いだミルクティー。
チーズケーキに、生クリームを添えて。
カフェには少しおしゃれをして、
おしゃべりを楽しむ人々。
「お待たせいたしました」
ゆっくりと運ばれてきたのは、ノリタケのティーカップ。
薄いピンクの花柄、
メルヘンチックなシルエット。
まるで、不思議の国のアリスのお茶会のよう。
完璧な休日の午後。
私はこう思う——
やっぱり、家が一番落ち着くな。
テーマ:寂しくて
どうしてだろう。
学校にはあんなにたくさん人がいるのに、
その中に溶け込めないのが、どうしようもなく辛かった。
寂しくて、勉強をした。
休み時間は借りてきた本を読む。
他にすることも、話す相手もいなかったから。
休み時間も授業中も、友達とおしゃべりするクラスメイトたち。
教室がにぎやかになればなるほど、私は寂しくて、泣きそうだった。
そんな、遠い記憶。