チーズケーキ

Open App
2/7/2026, 2:23:19 PM

テーマ:どこにも書けないこと

まだ未熟だった学生時代の私には、心の内にある思いを言葉にすることが難しかった。
暗い気持ちも、言葉にして吐き出せたなら、どんなに楽だっただろう。
そんな、情緒不安定になりがちな心を救ってくれたのが、ピアノだった。

「あの!」
ピアノの発表会のあと、見知らぬ人に呼び止められた。
あのとき、その人に何と言われたのかは覚えていない。ただ、驚いたことだけははっきり覚えている。
私は見知らぬ誰かの心に、ピアノ演奏で何かしらの余韻を残したらしいのだ。

ベートーヴェン《悲愴》第一楽章。

毎日練習するうちに、私の激しい悲しみのような心が、音に乗り移ってしまったのかもしれない。

「―――」

あの黒い感情を指先に乗せ、公共の場で演奏していたのだろうか。
そう思うと、自分のことながら、少しぞっとする。

2/6/2026, 1:59:38 PM

テーマ:時計の針

今日はパパママ学級の日。
大きくなってきたお腹を抱え、たまには朝マックでもしようよとモーニングに向かった。
スマホからモバイルオーダーをする。

・・・が、なかなか呼ばれない。
「時間大丈夫?」
「うん、まだ時間あるよー」
私は太陽光で充電される時計の針を見て言う。
「それ、遅れてない?」
「えっ?」
夫にそう言われて、慌ててスマホを見ると、時間が15分もずれている。
「エラーでPayPayの決済ができていなかったみたい。どうしよう、間に合うかな。」
「松屋に行こう。あそこもモーニングあるよ。」
「そうなんだ。行ったことない。」
「おいしいよ!行こうよ。」

松屋に行くことにした。松屋では、なかなかボリューミーなモーニングを食べることになった。
「バスの時間、大丈夫かな。」
「え、バス?天気もいいし歩いていこうよ。」
「うん、そうね。でも間に合うかな。」
「大丈夫でしょ。」
このときから少し嫌な予感はしていた。

パパママ学級の場所は歩いて20分ほどの場所であり、若干遅刻することになる。最後は小走りになってしまった。

教室では、子どもを揺さぶることが、いかにこどもにダメージを与えるかについてのビデオが上映されていた。それを観ていたらだんだん具合が悪くなってきた。しまいには目の前が白くなってしまった。
「気持ち悪い。」
そう言って私は、隣に座る夫を見た。
「大丈夫!?」
「外に出たい。」
私は、夫に支えられながらよろよろと教室の外に出た。
朝から食べ過ぎた上に子どものいるお腹をかかえて小走りになるなんてと、後悔した。

しばらく椅子で休憩したら体調は良くなってきた。
教室に戻ると、赤ちゃんのおむつの替え方の実習だった。
もう体調は問題なく、普通に参加することができた。

太陽光発電の時計は気に入っていたけど、もう使うのやめようかな。
最後の産み方に関する講演を聞きながら、教室にかかる時計を見上げて、そう思った。

2/3/2026, 1:58:27 PM

テーマ:1000年先も

「健康でありますように」
「無事故でありますように」
「平和でありますように」

参道を抜けると
鳥居が赤々とそびえ立つ
そこは人々の祈りが集まる場所

1000年先も、
人の願いは、尽きることがないだろう。

2/1/2026, 4:12:01 PM

テーマ:ブランコ

公園には、普通の四角い赤いブランコのほかに、丸くて大きいオレンジ色のブランコがある。オレンジ色のブランコは小さい子なら寝そべったまま乗れるので人気で、行列ができている。

砂場で遊んでいた娘が、ふと砂場遊びをやめてオレンジ色のブランコに向かって駆け出した。
私の方を振り向いて「乗りたい」と言う。ブランコの横には、2組の子どもと親が並んでいる。
「並ばないと乗れないよ。おいで、並ぼう」
「乗りたい」
しかし、娘は行列に並ばず、少し離れたところからうらやましそうにブランコを見ている。

「乗りたい」「並ぼう」というやりとりを繰り返している間に、何人かの子どもが入れ替わりオレンジ色のブランコに乗っていた。

しばらくして、やっと「並ぶ」と言って、娘が列に並んだ。やれやれと思う。

娘の番が来た。嬉しそうにブランコに駆け寄り、「乗せて」と言う。私は娘をブランコに乗せてやり、ブランコを押す。ブランコに寝そべった娘は、笑顔で歓声を上げる。

しかし、10回を超えたあたりで、「降りる」と言い出した。ずいぶんすぐ降りたがるな、と思ったが、降りるというならとブランコを止める。

「もう降りるの?」
パパがパンの袋を下げてやってきた。パン屋さんまでパンを買いに行っていたのだ。こちらも人気のパン屋さんで、公園からパンを求める人の行列が見えていた。
「パパ〜!」
娘がパパに駆け寄る。
「お母さんのクルミパン、なかったから別のを買ってきたよ」
「ありがとう」

土曜日の昼下がり。オレンジ色のブランコがある公園は、子どもたちで大賑わいだ。

1/29/2026, 4:39:57 AM

テーマ:街へ

光る細かいラメ入りのフェイスパウダーを、頬や額にパフで軽くはたいていく。アイブロウとペンシルで、眉に緩やかなカーブを描き、口紅を塗ると、鏡の中でにっこり笑ってみる。

アイロンで、髪にカールをつける。爽やかな柑橘系の香りのするヘアオイルで髪型を整えた。

それから仕上げに、いそいそと、ピンク色の石のついた、ハートモチーフのネックレスを、引き出しから取り出してつける。

今日はデートだ。

鞄にスマホと財布、鍵と定期の4点セットがあることを確かめたあと、花柄のタオルハンカチとポーチを入れて、ワンピースの上からコートを羽織り、お気に入りのパンプスを履く。

ガチャ、と音を立ててドアを開け、足取りも軽やかに街へ繰り出す。

Next