貝殻

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12/18/2025, 10:00:29 AM

「雪の静寂」

雪の静寂が、怖かった。自分の足音も、友人の声も全部真っ白な雪に吸い込まれて、ないものにされてしまいそうで、怖かった。
あの人の存在さえも消えてしまったら、どうしようか。と、言いながら雪道を歩いて朱に染める自分は、とっくに静寂に、しじまに、狂ってしまっているだろうに。

11/30/2025, 2:10:52 PM

「君と紡ぐ物語」

“君と紡ぐ物語”。そんなものがあったなら、君を救えたのだろうか。臆病者の自分を嘲笑う。
毎日毎日、頭の中で繰り返したあの日。あの日に戻れたのなら、なんてそんな陳腐な台詞が浮かぶほどには、自分は君を好いていたらしい、と呆然とする。好きとか、愛してるとか、そういう恋愛的なものではなくて。それでいて、綺麗じゃない感情で。
だから。物語は、君と紡げないのなら自分にはもう必要なかった。

11/30/2025, 2:44:37 AM

「失われた響き」

あなたが世界から失われて、どれくらい経ってしまっただろうか。
あなたの名前を呼ぶ声も、もうずいぶん前に聞こえなくなってしまって、その響きを懐かしく思う誰かも減ってしまったのかもしれない。
それでも自分だけは、失われた響きをいつまでも想っていたいと、そう、願っている。

11/15/2025, 11:56:54 AM

「木漏れ日の跡」

木漏れ日の跡、どこかにあなたがいる気がして、そちらを見やる。それでもあるのは、晩秋にふさわしい枯れかけの葉ばかりの木々だ。その度に、そりゃそうだ、なんて口に出してみて無理に自分を納得させている。
木漏れ日の跡、それはあなたと生きた自分のいきどまり。

11/14/2025, 2:31:59 PM

「ささやかな約束」

あの人とした、ささやかな約束。ささやかすぎて、あの人は忘れてしまっているかもしれないけれど。自分だけがいつまでも思っているにすぎないかもしれないけれど。素直な心に従って、あの道を歩いていこうか。
そして、もしまた会えたら、初めて出会った時と同じ言葉をかけてみようか。

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