#揺れるキャンドル
年に一度やって来る灯籠まつり、
クリボッチの為か、対抗心なのか、
祭りは毎年クリスマス当日。
地元に残る若手、特に独身者にはイヤでも
お役目が回ってくる…。
まぁ、生まれた時から毎年ある祭り、
勝手知ったるなんとやら
今年も、古参のじぃばぁに
良いように使われるのだろう。
オレの仕事は、竹の切出し
普段使わない筋肉や筋が悲鳴を上げている
何とか必要分を切出し帰宅
玄関すぐの廊下で転がっていると、
母、帰宅。
重そうな買い物袋、邪魔そうな顔
ちょっとの生活費は納めているが、
居候息子は肩身が狭い…
両手を掲げて恭しく荷物を受け取る。
うん、満更でもなさそうな母の顔
台所まで運ぶ短い道すがら
母の言葉に時が止まった。
「みおちゃん、離婚して帰ってきたんだって」
#雪の静寂
この静寂を前にするとイヤでも記憶が蘇る
出会って、惹かれて、重なって、
ケンカして、離れて、また寄り添って、
永遠を誓って、喜びが二倍三倍になって、
このままがずっと続くと、人は永遠だと
本当に思ってた……。
いつもの朝、いつもの日常、いつもの冬
音もなく降り積もる白い悪魔
その中で鳴った着信音。
#君が見た夢
「先生、とうとう…、完成しましたね。これで、たくさんの人の命が繋がります。先生は、教科書に名前が載るかも知れません。」
「……いや、もしそうなったとしても、僕は辞退するよ。この研究は、友人である彼からバトンを繋いでもらったものだし、彼の前にも幾人もの先達者からの贈り物の結晶だ。人が、一人でなし得ることには限界がある。」
#ぬくもりの記憶
事後の気だるさを消す様に、
肺いっぱいに吸い込んだ
煙を溜息とともに吐き出す…。
「ねぇ、前から気になってたんだけど」
甘ったるい声に俺の中の何かが反応するが
無視して耳を傾ける。
「何でピアスもタトゥーもそんなに入れるの?」
「人生、痛みでしか愛情感じたこと無いから」
そう言った俺を、静かに抱きしめた。
#白い吐息
今日の月は、低くとても大きな月だ。
それに、みたらし団子のような色合いをしている。
その月を眺めながら、夜の街を歩いていると、
涙が一粒ポロリ
はぁ…ッ