#祈りの果て
神様、私はあなたの敬虔なる信徒です。
どうか私の願いをお聞きください。
贅沢は申しません。
衣食住があり、
(衣=ユニクロ)
(食=オーガニック希望)
(住=新築、オートロック)
やりがいのある仕事をし、
(在宅勤務のプログラマーとかカッコいい)
それなりの金銭を稼ぎ、
(年収800万とか…)
適齢期になれば結婚し、
(美女!!体重40キロ台!!)
子どもを二人もうけ、
(男の子にはサッカー、女の子はピアノだ)
成人までしっかり育て上げ、
(反抗期…?そんなのあるわけ無いwww)
巣立った後、孫を抱かせてもらう。
(完璧な人生計画だ!!)
それなのに、なぜ未だに独り身なのでしょう!!
#キンモクセイ
ふっと、鼻をかすめた匂い…
辺りを見回してみるが、視界にはそれらしいものが
一切見当たらない。
目的地に急ぐ足は、自ずと速くなり、
増える、口呼吸……
建物に入るその瞬間、視界の端にちらりと映った
オレンジ
#そして、
誰もいなくなった。
#コーヒーが冷めないうちに
本妻 「冷めないうちに、どうぞ」
(早く帰れ)
愛人 「私、猫舌なんです」
(あの人が帰るまで、帰るか)
#パラレルワールド
雨予報は、なかった。
『帰るまでに止んで良かったね』
放課後の下駄箱、雑談によりガヤガヤする会話に
心の中で同意する。
いつも入れていた、折りたたみ傘をどこかに
忘れてしまったらしく、雨を見ながら頭を抱えて
いたところだった。
ざわめきから離れるいつもの帰り道
ふと、凪いだ水溜りを何気なしに覗くと
『あちら』も『こちら』を覗いていた。
そして、悪びれもなく鞄から出した
折りたたみ傘をこちらに落とした。
端から見たら逆再生のように見えたことだろう。
あちら側の自分はもう居ない。
そして、水溜りを踏んでも靴が濡れただけだった。