special day
私にとっての特別な一日は、
娘が生まれた日だ。
ずっと母になるのが夢だった。
でも、妊娠や出産に対して
昔から恐怖心があった。
「鼻からスイカ」なんて例えをよく聞くが、
鼻からスイカが出てきたら死んでしまう。
つまり、死んでしまうほどの痛みなのか、と
周りの話を聞けば聞くほど、
恐怖と不安は募るばかり...
私は母にはなれないのではないか。そう思った。
結婚して一年、幸いなことに、
私のお腹に赤ちゃんがやってきてくれた。
喜びと不安が入り混じったのもつかの間、
つわりで、毎食吐いた。
エアコンの風や炊き立てのご飯、柔軟剤、
あらゆる臭いがダメになった。
おまけに、横になると吐きそうになるため、
1ヶ月以上、座って眠るハメになった。
つわりが終わると、今度はすぐに妊娠糖尿病の診断。
毎食前にお腹にインスリン注射を打つ日々
出産も安産とは言い難く、
人工破水からの促進剤、最後は吸引。
これまで出たことがない叫び声が上がった。
大変だった妊娠、出産だったけれど、
生まれたばかりの、
真っ赤になって泣いている赤ちゃんを見ると、
そんな痛みを全て忘れてしまうくらい、
愛しくて可愛くて堪らない。
無事に生まれてきてくれて、
本当にありがとう。
君が生まれた日が、私にとって
かけがえのないspecial dey
揺れる木陰
小学生の時に読んだ物語で印象に残っている本がある。
「さいごのまほう」という物語だ。
細かいところは覚えていないが、
年老いた魔法使いのおばあさんが、
残り何度かしか魔法が使えなくなる。
おばあさんは、最後の魔法を使って、
何かに変身しようと考える。
色んな動物なんかに変身してみるけれど、
どうもしっくりこない。
そんな中出会った心優しい少年、
最後の魔法を使って、
おばあさんはその子が休むためにベンチになる。
そんなストーリーだった。
この話を子供の頃に読んだ時、
おばあさんが物凄く可哀想だと感じた。
これからベンチとして生きていくだなんて、
どこにも行けないし、誰かと話すこともできない。
ただじっと木陰に佇むだけのベンチになるなんて、
私ならそんな孤独は耐えられないし、
毎日後悔ばかりするだろうと思った。
しかし、おばあさんは、
少年の「明日もまた来よう」という言葉を聞いて、
少年が明日も来てくれるということに、
嬉しさを感じて、楽しみに待っている。
幸せを感じている。
もし、私がベンチになっていたら、
揺れる木陰を見上げては、孤独と寂しさを感じるだろう。
木々の揺れる音が、泣いているように聞こえるだろう。
でもきっとこのおばあさんは、
揺れる木陰を見上げては、優しい気持ちになるんだろう。
木々の揺れる音が、笑っているように聞こえるだろう。
何事にも言えることだけど、
同じ場面で同じものを見ても、
きっと全然違うふうに見えている。
真昼の夢
真夏の太陽が照りつける正午、
日の光はカーテンでも遮れきれず。
そんなほんのり明るい寝室の、
エアコンが一生懸命に送る風下で、
うつらうつらと眠りについた。
エアコンをつけたばかりの室内は、
熱々のシチューを冷蔵庫に入れたばかりの感じ。
少し暑い日に見た夢は、
砂漠の中に咲いた向日葵畑が
蜃気楼で揺れている。
そんな景色だった。
1時間ほど眠って、
覚醒したばかりの瞳が映す天井は。
まだぼんやりと揺れていた。
ふと隣を見ると、
小さな寝息を立てて眠る
愛しい小さな娘。
少し暑いのか、顔に張り付いた髪の毛とは裏腹に、
寝顔はとても穏やかで、
どんな夢を見ているのかな?
と、ちょっと想像してみたり。
二人だけの。
子どもが寝静まった後、
夫婦二人だけの晩酌の時間が始まる。
家族が増えることはとても幸せなことで、
でも、子供を育てるということはとても大変なことで、
心身ともに疲れ果てている毎日。
ただただ、怒涛の毎日をこなしてゆく。
人は余裕が無くなると、
他人を思いやる心がすり減っていくもので、
私たち夫婦も、互いを思いやる心を
いつの間にか忘れそうになっていた。
“ゆとり世代“などと、世間は揶揄したりするが、
人にゆとりは必要だと思う。
人を思いやり、人に優しくするためには、
自分の心にゆとりが無いと無理だから。
そんな、心のゆとりを持つための、
夫婦二人だけの時間。
「お疲れ様」の小さな乾杯で、
日頃の疲れを、ワインと一緒に喉に流し込む。
この時だけは母の仮面を少し脇に置き、
くだらない話をして笑う。
そんな些細なことが、明日の活力につながってゆく。
夏
夏は私が最も愛する季節だ。
夏休み、夏祭り、花火、川遊び、プール
夏のイベントもさることながら、
向日葵の大輪、入道雲、蝉の鳴き声、
青々とした木々、ラムネのビー玉、風鈴の音色、
浴衣、エアコンの冷風、かき氷の冷たい舌触り、
夏を彩るちょっとしたことで、
私の心はわくわくする。
私の周りは、夏を嫌う人の方が多い。
気持ちは分からなくもない。
確かに私も夏の嫌な部分はある。
たくさんの虫、汗ばんでベタつく肌、
人のやる気を削ぐ暑さ...
特に近年の夏の暑さは異常だ。
数分外で作業するだけで、汗が滴り落ちる。
ふと、私の子供の頃はこんなに暑かったかな
なんて考えてみる。
夏休み、ほとんど毎日友達と
自転車で走り回っていた、あの夏。
キラキラした思い出の中の夏休み。
今はギラギラと形容するのがふさわしい気がする。
異常な暑さだが、それでも私は夏が好きだ。
毎年夏が来るたびにどうしようもなく心が高鳴ってしまう。
今年はどんな夏らしいことをしようかな。
帰宅途中の向日葵を横目に、そんなことを考えた。