今日みたいな雪明かりの夜、君にプロポーズしたね。
触れて仕舞えば雪のように溶けてしまいそうな儚さを纏った君の、手を握れなかった事を許して欲しい。
でも君は幸せそうに笑っていた。まるでスポットライトに当てられたように、君は雪の日に現れた女神だったよ。
でも、そんな女神は僕と君の天使を地に舞い降りさせた時、天界へ帰って行った。
今、天使は僕の手をギュッと握って雪を楽しそうに踏み締めている。
君によく似た、輝く笑顔を浮かべながら。
絶対に守ってみせるよ。僕の女神がくれた贈り物を。
もし、神様がいるのなら。
いや、神様なんていないけど。
どうか、どうか、私に……
なにが欲しいんだろう。
こんなに願って、何が欲しかったんだっけ。何がしたかったんだっけ。
あれ?さっきまで、あんなに…
あぁ、忘れてしまった。
無難なお願いでもしておこう。
世界が平和になりますように。なんて。
いつだったか。
あの人の手の冷たさに笑ったのは。
あの人の淹れたココアを飲んだのは。
あの人が私に口付けをしたのは。
いつだったか…
もう、新しい相手がいるよ。
あの人と一緒に来たイルミネーションに、違う人と来たの。
手はあったかいし、オシャレなイタリアンを食べさせてくれる。
でもね、その唇が私に触れることはないの。
ねぇ、もう戻れないね。…あなたが欲しいよ。
私は雨が好き。
雨の日は音がうるさくて安心する。
口から漏れ出す小さな声がかき消されてしまうから。
雨は濡れてしまうから好きだ。
目から溢れ出る弱さが誤魔化せてしまうから。
雪の日は音が静かで落ち着かない。
私1人が取り残されたようだから。
雪は溶けてしまうから嫌だ。
どれだけ隠れようとしても見つかってしまうから。
私は雪が嫌い。
『人は星になりたいらしい。
誰もが目を奪われる、そんな存在になりたいらしい。
お空でキラキラ輝けるようになりたいらしい。』
人間は手に届かないものを欲しがるし、手の届かないものになりたがる。
だって人間は自分より下に人がいないと生きていけないから。
上を見て悔しがるより、下を見て安心する。
なんとも哀れな生物だろう。
ん?あぁ、そう。大正解。君だよ君。
コレは哀れで醜く汚い君のこと。
大丈夫。君も死んだらお星様なんだからさ。