就労支援A、B型の人が夏草を刈っていた。真夏の暑い最中、作業着を重ね着している。しかし給料はほとんど出ない。まともに働けない人のための支援のはずなのに普通の仕事と遜色ない。ハローワークも就労支援センターも細かい仕事内容や業務の記載内容の正確さを把握せずに仕事を紹介している。何かあっても責任を取る必要はない。
弱い立場の人は、夏草のように踏みにじられ、必死に立ちあがれば搾取される。やがて無抵抗になる心に、秋風が流れこむ季節がやってくる。
題『夏草』
此処にあるのは何だろうと、考えられる精神的余裕と空間がある。ゲリラ豪雨から守ってくれる家、寝苦しい夜を癒す無機質な風と靴ひもみたいな人間関係。全てが完璧に揃っているわけではないが、今日を生き抜くには充分だ。
題『ここにある』
小学生の頃に読んだ『はだしのゲン』は衝撃的だった。あれほど逐語的な漫画は類を見ない。子供のためと規制するのは簡単だが、無菌室で育った野菜や甲殻類を食べずに育った養殖魚が、天然物よりも価値があるのだろうか。現実や写真、動画などは加工せずに、もっとありのままの姿でよい。
題『素足のままで』
あと少しで5段のトランプタワーが完成する。その時、ふざけて机を揺らされる。バラバラと崩壊する。
あーあ、崩れちゃった。でも、まあいいか。
どうせ完成間近で邪魔される気はしてたんだ。とくに感慨もなくトランプをしまう。それに完成していても何も変わりはしなかったさ。
10000歩が10001歩になっても変わりはしない。
題『もう一歩だけ、』
身長と同じ長さの木の棒を杖代わりに歩く。水平線に平行に砂浜を歩く。石と石をぶつけて平たく尖った方を拾っていく。気分はネアンデルタール人だ。お供に犬がほしいと思う。街には誰もいない。数ヶ月前に世界規模の感染症が広まり、この地域にも避難警告が出されたからだ。私の免疫力は常人より遥かに高かったらしく、今までニートのような生活をしていたが、今は一応仕事として周辺地域の調査を行い生計を立てている。私にとっては見知らぬ街だが、見知らぬ誰かにとっては故郷なのだろう。そんな風に慮りながら再び歩き始める。
題『見知らぬ街』