頼まれたから即座に動いて、そんな自分の行動力に誇りを持っていた。"事前に連絡していただいた方がありがたいです。折角きてもらっても居ないかも知れませんので"
「分かりました。次回からご連絡してから伺います」
"その方がいいですね"と遠回しに否定される。
ショックだった。心の中の揺れる羽根の先端がポキっと折れた。感謝ではなく否定。その自己評価との矛盾により相手の評価を1ランク下げる。
全ての人に「今からお伺いしてもよろしいですか」なんて聞かないと動けないなら、手間が多すぎて動けなくなる。必死に勢いをつけないと動けない人の気持ちは健常者には分からない。
僕がこの場に辿り着くまでに、どれほどの苦悩と葛藤と「えいやっ」という勢いがあったか理解できるか?
そこに追加で事前連絡が必要になったんだ
揺れる羽根の軽やかさに鉛玉がついて落下する。
地面にめり込んで絶望の沼に沈んでいく。
題『揺れる羽根』
秘密の箱には同居人に捨てることを拒絶されたモノや嬉しくないプレゼントが詰まっている。本当に大事なものは手放さない。しかし秘密の箱は必要である。何故なら、いまから「この話」を閉まってクローゼットの奥に隠さなければならないからだ。
題『秘密の箱』
そもそも家自体が常に緊迫感に張りためた無人島のようなものの為、誰もいないという環境は数時間の開放的な幸福を与えてくれる。そのあとで喉が渇く。生存の知識を持ち合わせていないため浄水フィルターが欲しくなるかも知れないし、寒くて防寒装備が欲しくなるかも知れない。手元に拳銃があるなら精神的な発狂から逃れられるだろう。何が起こって何が必要になるのか分からない。そのため無人島に行く前のセーブデータを保存しておいて欲しい。
題『無人島に行くならば』
自動販売機にHOTが売られておらず、急激な気温の変化に冷やし中華の看板は未だ取り残されていた。
石油の定期配達の連絡や冬タイヤへの切り替えも必要になってくる。秋風のように忙しなく冬の装いをする紅葉樹は足元に夏の名残を散乱させていた。区間賞を取る勢いで秋風が冬の季節にバトンを渡すだろう。
そのペースは年々速まっている。
題『秋風🍂』
常に苦しくて倒れそうな気がする。5回以上にわたる執拗なトラウマの侵略行為に対して、ラジオ塔が強烈な防衛本能を発揮して全チャンネルを緊急不安速報に切り替える。何か楽しい話が聞きたいのにダイヤルを回してもザーザーと心を掻き立てるノイズ音しか鳴らさない。不安のゴールデンタイムは常に精神を煽るだけだ。幸福の扉は開きっぱなしになっているが、数年未発生なことが今日は起きる予感がする。
題『予感』