たくちー

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2/4/2026, 7:56:08 PM

 美しい花を咲かせる場所を求めて、コンクリートの足場を踵でカツカツ踏み鳴らし、記憶の向こう側へ旅をする。だが、どれだけ進もうと満足感を得られた瞬間は見当たらない。もはやシャッター街となった記憶の商店街で売っているのは常備薬と疲労物質だけだった。母と兄が寄り添いにくる。近づく顔からそっぽを向く。頭髪は馬油の艶のある母親似の髪が白髪混じりに伸びており、ツヤはあるが少しキシキシしていた。側頭部に唇のあたる感触がある。特に不快感はなく、何とも思わない。萎み切った筋肉は熱生産を終了しており、その僅かな温もりでさえ貴重だった。



題『kiss』

2/3/2026, 7:56:11 PM

 蒸しパンとフランスパンでは密度が違うと気づく。いつも通りを心掛けていたのに意識すると吐き出したくなる。少しでも普段と違うと身体が拒絶する。

"痩せたいという想い"がなければ摂食障害と認められない。本人の言葉ひとつで誤魔化しは容易なのにだ。

きっと1000年先も他人の苦しみは分からない。


題『1000年先も』

2/2/2026, 7:54:08 PM

 死の土壌を開拓した過去は誰にも崇められず肥沃となった大地は偶々通りかかった略奪者に搾取される

"両脚のふくらはぎの痛みを忘れないで"

降り積もった疑念の雪は日記に書き留めた
勿忘草が咲き乱れても決して忘れないで

"あなたの人生を生きて"



題『勿忘草(わすれなぐさ)』

2/1/2026, 8:25:50 PM

 鏡に映る顔は、ここ数日で一気に老け込んだ。これはダメだ。リプトンティーに戻さなければ。冷蔵庫の脇に貼られたメモ用紙に書く。今の飲み物は水っぽさよりも明らかにジュースなのだ。子供の頃、車の販売店で出されたオレンジジュースと同じ甘さだ。血糖値がブランコのように乱高下している。夜中に飲むと歯に染み込んで歯磨き粉の名残を一瞬で書き換える。胎児のように身体を丸め、毛布を肩まで引っ張り顔を埋める。思考は止まらない。1時間以下の浅い睡眠しか出来ない。心臓がバクバクし始めた。苦しみからの解放を求めて入浴すると湯船から上がれなくなる。文章は朝から夜へ。夜から朝へ。行ったり来たり。ぐったりした脳は情報をジュースみたいに垂れ流す。もはや何も考えられない。近所のブランコは撤去された。


題『ブランコ』

1/31/2026, 8:22:56 PM

 旅路の果てに豚小屋に辿り着く。脂肪の塊たちが"普通"というものを語る。尊厳をカーペットにして踏み躙る。麦酒を片手に苦労話を肴にして喚き散らす。彼らは自分たちの縄張りで偉そうにしているが、酒場を離れれば豚でしかないと気づかない。



題『旅路の果てに』

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