NoName

Open App
2/10/2026, 12:48:05 PM

#誰もがみんな

―――

灰色の空と、スッキリしない空気に煽られ、溜息が零れた

足元に目を向ければ、彼が居る
目元にくっきりと黒を刻んだ彼が

自分の為〜だとか言いながら
結局は他の為に動き回る姿はそれらしいが

それでこんな顔を作ってしまうのだから、しょうがない奴だと思う。

それに、30分仮眠を取るのにあそこまで渋る事はないと思う

そんなこっちの気も知らず、眉を解し目を閉じている
...だから、頬をつまむくらいはしても良いだろう

少し歪んだ顔がすぐに戻るのが面白くて、起きてる時なら間違いなく苦言が飛んできただろう事を思って。
思わず、笑みがひとつ

だからお礼に、時計の針を一時間程ずらしてやる

それで彼が起きたなら、もう一度言ってやろう

「誰もお前にそこまで求めてねぇんだよ、ばーか」と

そうしたら少しは怒って、記憶に残してくれるだろうか

そんな事を思いながら、窓の方へ目を向けた
まるで夜だとでも言いたげな空が、窓をパタパタと叩いていた

2/9/2026, 11:18:20 AM

#花束

―――

想いの丈を表せと言うならば
何本でも足りる事がないからさ

どうか、三本の薔薇で許しておくれ

2/8/2026, 11:49:59 AM

#スマイル

―――

彼奴の笑顔が好きだった

よく言えば澄まし顔
悪く言えば、死んだ魚の目のような。

そんな彼奴が、甘味を前にした時だけは
ふわっと、花を綻ばせるのだ

最初は、物珍しさからだった...のだと思う
けれど何時しか、そんな彼奴の顔が見たくて
紙袋を提げ、彼奴の元へ足を向けるようになった。

甘いものが得意でない事が重なって、同じ様な物を渡す事が多いのに。
普段の態度が嘘のように、素直に礼を言われ驚いたのは最近の事の様に思い出せる。


「んーっ!」と、聞き慣れた声に思考が戻された
目の前には、フォークを片手に花を咲かせる彼奴

知らない味じゃないのに
本当、美味しそうに食べるものだな

それを見る為に甘味を渡す自分を棚に上げながら、湯気立つ珈琲を口にした。


2/7/2026, 10:28:48 AM

#どこにも書けないこと

―――




空白





眼前に広がるそれに、ほっと息が漏れた
嗚呼、まただ、と

『まずは、気持ちを文字に起こしてみてください』

そう言われたのは、何時だっただろう

言う分には単純で
僕にとっては最も難しい事

確かに、心の燻りは感じるのに
どうやったって、どうしたって
それを表す、適切な言葉が分からない

だから、未だそれは空白のまま

...それを見る度に、底から焦りが込み上げる


本当は、自分の勘違いなのではと
ただの逃げの言い訳で
世間で言われるような状態じゃ、ないのでは――


グシャッと、空白にシワが寄った
脳を侵食せんとする考えを、揉み消すように


...今日もまた、白が黒で埋まる事はなかった

2/6/2026, 11:03:58 AM

#時計の針

ホーッ、ホーッと、フクロウの声が遠くに聞こえる。

飾り付けられた部屋
一つの写真には、淡く差し込む光が反射していた

ふと顔を上げれば、代わり映えのない風景の中で、それだけが色を持っている様な気がした。

彼はおもむろに、それを自分の元へと引き寄せた。

時を刻む音を、ただ淡々と響かせるそれ。

手元に目を向けると、可愛らしい植物に飾られた予定表
書かれた数字が、それを囲むインクが
随分と色褪せている

...彼はそれらをひとしきり眺めると、後ろに着いていたネジを、グルりと回した

12を指していた長針が、6へと戻っていく。

そうして手元から元の位置に戻すと。

この部屋にはまた、同じ時間が流れ始めた



Next