2/24/2026, 2:52:47 PM
小さな命
小学校低学年の夏休み、カブトムシの卵を割ってしまったことを妙に覚えている。
朝のラジオ体操から帰宅後、飼っていたカブトムシに餌をあげることが日課だった。玄関隅に置かれた土いっぱいの籠を持ち出し、蓋を開ける。夜行性の彼らが地上にいることはほとんどないので、土の中から掘り出して、全員の存在を確認する。雄雌それぞれ2匹ずつだっただろうか。見分けがつかないぐらいそっくりだったので、名前は付けていなかった。新しいゼリーを置き、食べ始めるのを少し眺めてから籠に蓋をして玄関隅へ戻す。夏休みの朝は、そんなふうに過ごしていた。
ある日、いつものようにカブトムシを探すために土を掘り返していると、白い粒のようなものがいくつか見つかった。卵だ。つぶさないように、転がり落ちないようにやんわり手のひらに乗せて、卵を生んだカブトムシを探していると…手のひらに一瞬妙な感覚があった。違和感を覚えて指を開いてみると、卵が1つ消えていた。なぜか手のひらがほんの少し濡れている。割ってしまったのだ、とすぐに悟った。慌ててほかの卵を土に返した。小学生ながら悪いことをしてしまった罪悪感から、誰にも言わなかった。言えなかった。
小さな命を奪ってしまった後悔は、何十年と経った今でもふと思い出す。