優しさ
「ねえ、ねえってば」
「え?何?」
リビングのソファに座りスマホを見ていると、キミに声をかけられる。
「何?じゃないでしょ。さっきから声をかけてるのに」
怒った顔をされ
「ご、ごめん。気づかなくて」
慌てて謝ると
「まあいいけどね」
キミは表情をフッと緩める。
「それよりも、何に悩んでるの?」
そんなに怒ってなくて良かった。とホッとしたのも束の間、キミにそんなことを聞かれる。
「え?別に悩んでなんて…」
「誤魔化さなくていいよ。声をかけても気づかないし、スマホを持ったままぼんやりしているし、何か悩んでるんでしょ」
「………」
何も言えなくて思わず目を逸らすと
「私に迷惑をかけちゃいけない。って、何も言わないのはあなたの優しさだとは思うけど、何も言われないのも、信用、信頼されてないみたいで悲しいよ」
キミは悲しそうな声を出す。
「一緒にいるんだもん、1人で悩まないで」
その声に、逸らしていた目を戻すと
キミは優しく微笑むのだった。
ミッドナイト
「楽しみだね」
職場で噂になっているレストランに、キミと向かっていた。
「ミッドナイトタイム。大人の時間か」
そのレストランには、23時〜25時までミッドナイトタイムがあり、いろんな種類のお酒を使った、料理、スイーツがバイキング形式で楽しめるらしい。
「どんなに美味しくても、キミはお酒にはあまり強くないんだし、食べ過ぎないようにね」
「え~」
と文句を言うキミを
「気に入ったら、また来ればいいでしょ」
抱き寄せると、お酒を飲んでいないにも関わらず、キミは顔を紅く染めたのだった。
安心と不安
「大好きだよ」
「うん、俺も」
見つめ合い、微笑み合う俺とキミ。
付き合い始めて半年だけど、今までずっと一緒に過ごしていたような、安心感があった。
「何食べる?」
「そうだなあ…」
笑顔で過ごしているけれど、安心してばかりはいられない。だって、キミと想いが通じ合えたのはキセキだから。もしかしたら、キミの赤い糸が繋がる先は俺じゃなかったかもしれないし、このままずっと過ごせるのかもわからない。
キミと一緒にいることの安心と不安。
これからもずっと好きでいてもらえるように、努力しようと思うのだった。
逆光
「待って、行かないで」
キミに手を伸ばすけど、いつもその手はキミに届かない。
「ああ、またか」
目が覚め、ため息を吐くのが日課になりつつあるほど、同じ夢を見ていた。
「せめて、キミの顔が見れたらな」
逆光に照らされたキミの顔を、見れたことはない。
「でも、こんなに同じ夢ばかり見るんだもん。何かあるよね。たとえば、夢の中のキミにいつか現実で会えるとか」
そうなることを信じて、今日から寝ることを楽しみにしようと思うのだった。
こんな夢を見た
僕は今朝、こんな夢を見た。
それは、僕が子猫になっている夢。
子猫の僕は、母や兄弟たちとはぐれ、あてもなく歩いているところを、キミに抱き上げられた。
そう、今の僕みたいに。
「どうしたの?」
夢を思い出しながらキミを見つめていると、キミに不思議そうな顔をされる。
「ん?見た夢のことを思い出してたんだ」
「へえ、どんな夢だったの?」
「子猫の僕が、キミに抱き上げられた夢」
「ふふっ、かわいい子猫だったんだろうね」
キミは、かわいい子猫を想像しているのか、にこにことしている。
「そうだったのかな。でも僕は、夢の中でもキミに助けられてるんだね」
僕が失恋してどん底にいるとき、僕の心に寄り添ってくれたのがキミ。そのおかげで、また恋をすることができた。
「僕ばかりキミに助けられて、なんだか情けないな」
キミの顔が見れなくて、俯くと
「そんなことないよ。私だって、あなたと一緒にいることで、イヤなことがあっても、落ち込まずにいられるもの」
「でも」
「なら今度、私へのお礼として、ケーキ食べに行こ」
顔を上げた僕に、キミは微笑むのだった。