あめ

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11/27/2025, 9:25:23 AM

「時を繋ぐ糸」

糸電話の先に昔の自分がいて、一方的にでも話せるとしたら、人生をしくじらないために伝えたいことが山ほどある。

11/18/2025, 2:53:46 PM

「記憶のランタン」

怒りはよく炎に例えられますね。
つまりそう、ここは君が過去に怒りを覚えた記憶の集積場です!
このランタン一つ一つが怒りの感情です。こうやって、燃え広がることも消えることもないように管理しているのです。

びっくりした?
思ったより綺麗で?

それは、まあ、当たり前ですが炎って危ないですからね。すぐ燃え移るし、触ると火傷するし、そのままでは管理できないのでこうしてランタンに加工しています。綺麗と言っていただけて光栄です。頑張った甲斐がありましたね。

さて、君にはこの中からひとつランタンを持ち帰っていただきましょう。好きなものを選んでも構いませんが、よろしければ管理人である私が一番適切なものをお選びいたしますよ。

なぜわざわざ怒りを持ち帰るのかって?
今の君に必要だからです。炎はエネルギーですから、怒りの記憶は活動するための原動力になり得るのです。

ではこちらがよろしいですかね。どうぞお持ちください。丁寧に扱う必要はありますが、普通に持つ分には危なくないので恐れずに。
暗い場所明かりがあると落ち着くでしょう。
道は見えましたか?

それではお気をつけて。

8/23/2025, 4:27:32 PM

「遠雷」

[今の雷の音すごく大きくなかった??]

メッセージを送る直前でハッとして、手を止めた。
そうだった。この話はもう通じない。
文章を打ち直す。

[今すごく大きい雷の音がしてびっくりした! そっちにも聞こえた?笑]

送信。

8/23/2025, 8:10:51 AM

「Midnight Blue」

演劇やってる人って、派手な髪色の人が多い。
これは私の持論。でも、現に目の前の先輩がそうだ。

「もうすぐ公演なのにいいんですか、髪」
「うん」

食事の約束をしたのは1週間前。その時茶色だったはずの先輩の髪は、今は深い青色に染まっていた。
その内側でちらりと金色のピアスが煌めいていて、夜空みたいだ。

「生徒の役ですよね。怒られませんでした?」
「怒られたよ」
「なんでその色にしたんです?」
「気分」

これは、演出も大変だ。私が遠い目をすると、先輩ははははとお気楽に笑った。

「演技でそこにないものをあるように見せたりするでしょ。だから大丈夫。それに、遠目だと意外と分からないよ」

どうだかなあ。だけど、先輩は自信があるようで、私はそれ以上言うのはやめたのだった。


後日、最前列の席から見た先輩の髪はやっぱり目立っていたけれど、次第に気にならなくなるのが不思議だった。
光に当たって透ける夜空の青が綺麗で目を離せなかったのは、きっと私だけではないだろう。






7/1/2025, 7:43:59 AM

「カーテン」

カーテンの向こう側から、すずが寝転びながらこちらを見ている。
正確には、見ている気配がする。私は今カーテンに背を向けて作業をしているので直接見えないが、先程そちらに向かうのを目撃していた。彼女の行動パターンはよく知っている。
気位の高い彼女は、構われたいときもおねだりをすることはない。カーテンは人質のようなもので、私に取引を持ちかけているのだ。
仕方ないなあ。私はもう少しで終わるはずだった作業の手を止めた。

「ほら、おいで」

振り返ると予想通りすずはこちらを見ていて、目が合うと、満足げに一声鳴いた。

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