心の健康とは程遠いところにあるここは、
スネアグレと呼ばれる小さな街だ。
色とりどりの食事、
正しい教育、
法の行き届いた生活とは対極的に。
排気ガスの味がする食事、
世の中ですべての違法な物の売買、
横行する分厚い茶封筒による取引。
そんなもので成り立っている。
鐘の音が聞こえる学校に通っていた。
今どきは録音が多いのに、
あの学校では本物の鐘を使っていた。
鐘を突いていたのは、機械だったけれども。
毎刻、七つの鐘が古く薄暗い校舎に響き渡る。
同時に、生徒たちが教室から飛び出して、
廊下がにわかに騒然とした。
明日、もし晴れたら
散歩でもして帰ろう。
お祭囃子が遠くに聞こえる。
開け放った大窓から、賑やかな人の声。
神様が舞い降りてきて、こう言った。
「あなた、不運ですねぇ〜笑」
「…は?」
私は生前、どうやら不運だったらしい。
確かに孤児院に売られてから幾数年、
いつの間にか実験体にスパイに男娼までこなし。
この世の底辺を全て見てきた。
しかし、地獄の底で
たくさんの家族ができた。
この世で一番幸せな瞬間だった。
まぁ、殺されてしまったが。
私一人になり、何十年。
老衰で私は死んだ。
ようやく人生が終わると喜んだのもつかの間、
転生の順番待ちをしていたら、
神様が降ってきた。
失礼な文言とともに。
そしてやってしまった、
神への対応とは思えない、
絶対零度の返事。
私のことを見て、
やだなぁ怒んないでくださいよ、
ちゃんと次は幸福をお届けしますんで、と、
神は続けた。
「なんてったって、あなたご家族が居たでしょう?
彼らから伝言がありまして。
「生まれ変わったら、僕たちを探してね!」
だそうです。」
「????」
「だーかーらー、
あなたのご家族の来世を人間、
全員同じ世界線にしてあげてたんです。」
「…それって、もしかして」
「そうです!あなたはご家族にまた会えるのです!」