Love you
なんて今どき流行らないと思う
SNSが進化し、多様化が染み付いた社会では、
スタンプ一個で代用できる
それでも、
逆光で彼の表情は分からない。
ただ暖かな日差しが差し込む室内と、
対照的だったことを覚えている。
特別な夜になった、気がする。
鈴木華子、29歳。
ブラック企業に務めて7年目。
今日も今日とて終電を逃して、
深夜に2駅分の徒歩帰宅が決定した。
会社は大通りにあり、
ハイヒールをシューズに履き替えて、
華子は歩き出した。
近所には小さな物流センターがあり、
トラックが出入りを繰り返している。
今日も徒歩か。
一昨日も徒歩で帰宅したのに、
ああこれ以上考えるのはいけない。
次はいつ旅行に行こうかな。
去年の春に行ったっきり行けてないなあ。
なんて考えながら、
僅かな街灯が照らす薄暗い道を歩き続けた。
ふと道端に小さい猫のような生き物が見えた。
猫派な華子は久しぶりに見る猫に吸い寄せられるように近づいた。
「可愛い」
「ウニャー」
返事までしてくれた!何を言っても返事ができないうちの上司と代わって欲しいくらいだ。
美しい国
あるところに、美しい国があった。
華々しい都、豪奢な建築物、目鼻立ちの素晴らしい天女のような人々しか存在しなかった。
この話を聞いたある村人は、不治の病にかかっており、死ぬ前にその国を一目見ようと旅に出た。
病が悪化して、
たどり着かないだろうと考えていた村人だが、
目的があったのが良かったのか、
美しい国に辿り着くことが出来た。
案内などおらずとも、そこが美しい国なのが村人には分かった。ある境目から、草花までもが水晶のような光を帯びて、額縁に収まるべき輝きを放っていたからだ。
村人はあまりの美しさに圧倒され、
迷い込むように国に入り込んだ。
森をかき分け進んでゆくと、
集落のような場所に行き着いた。
村人は、そこに美しい人々が暮らすのを見て、
そこで力尽きて倒れてしまう。
美しい国を見るという夢を叶え、
とうとう病が、彼の身を奪おうとしていた。
彼は幸いにも目を覚ました。
薄い絹の柔らかい布団の上に寝かされていた。
彼の故郷では柔らかい布団などはなく、
藁の上に布を引いて眠っていた。
柔らかい布団で寝るのは領主様だけだった。
このため、何か罰されるのではないかと不安になり始めた矢先に、部屋の扉が開いた。
驚いている村人に、入ってきた人が驚いた顔を見せ、
「お客さんが起きてるわ!」
と大きな声で叫んだ。声からして、女の子のようだった。あまりにも美しい顔立ちのため、年齢が分からないほどだったのだ。彼女の声に反応したのか他にも数人やってきた。どうやらここは2階らしい。
最も身長の高い人が話しだした。
「こんにちは。驚かれたでしょう。貴方は村に入ってきてすぐに倒れられたんです。」
「なので私たちが代表して家で手当をいたしました。」
「特に変わったことはしておりません。お荷物もございますので、確認していただければ。」
村人は、さらに驚いた。3人が続けざまに話し始めたからだ。まるで、ひとつの脳を共有しているかのように。
「おや、さらに驚かれましたか。」
「外からこられた方ですからね。」
「私たちは、ひとつなのです。」
なにが、と村人が聞いた。
「私たちは全て、同じものなのです。」
理解が追いつかない村人はその時、
彼らの容姿が年齢と性別の異なる双子のように
そっくりなことに気がついた。
夢を見てたい、見続けたいと思ったことはあるだろうか。私はある。辛い現実から逃れるため、明日も同じ日々が来ることに飽きたから、色々な理由があると思う。私もその1人だ。私の場合はいつまでも続く監獄の日々からつかの間でも逃げ出したいからだった。