「世界にひとつだけ」
世界には沢山のキレイな物がある。
景色、絵、宝石。
建造物、橋、庭。
楽器の音、心に響く歌声。
心がこもった手紙、人を思いやる心、見知らぬ人への親切心。
気持を伝える為になりふり構わない姿、苦しくても這いつくばって懸命に生きる姿。
有形無形、沢山ある。
世界には沢山の汚い物がある。
ごみ、汚れた物、汚された物。
不協和音、雑音、騒音。
上っ面だけの嘘の言葉、心の入っていない賛辞。
人の事を考えない身勝手さ、人の誠意を踏み躙る姿。
有形無形、沢山ある。
でも、全てが世界にひとつだけ。
キレイな物の裏返しは汚い物。
でも、汚い物の裏返しは又キレイな物で。
見方によっては、キレイも汚いも一緒で。
どんな物も、世界にひとつだけって思って、自分の周囲に感謝して生きていきたい。
ナンバーワンも、オンリーワンも、どっちも大切にしていきたい。
「胸の鼓動」
貴方の胸の中で、貴方の鼓動を聞くのが、好きだった。
トクン、トクンって、落ち着いたリズムが好きだった。
時々、「大好きだよ」って言うと、途端に照れて鼓動が早くなって。
それを聞くのが楽しくて、嬉しくて。
ついつい貴方をからかってた。
私だけがこの鼓動を、この場所で聞ける事が嬉しくて。誇らしくて。
貴方のリズムを覚えてしまう程、貴方に抱きしめられてた。
あれから何年も経って。貴方と長い年月を過ごして。
溢れる程の愛情を貴方に貰って。
本当に幸せな人生を過ごせたのは、貴方のおかげです。
お互い白髪になって、足腰も言う事をきかなくなって。
目も耳も、記憶力まで悪くなって。
それでも、昔と変わらず貴方が好きで。愛しくて。
「生まれ変わっても又一緒になろうね」って、ありがちな約束もして。
もう貴方の鼓動を聞く事はないけど。
貴方の笑顔を見る事もないけど。
貴方の声も聞けないけど。
今日が貴方との最期の日です。
でも、私は本当に幸せでした。
貴方と過ごせた時間が私の宝物です。
貴方に愛された事が私の誇りです。
ありがとう。
「踊るように」
今は洗車って言ったら、コーティングして後はセルフで水洗い、とかが多くなってきたけど、昔はガソリンスタンドの洗車で、スタッフの人が拭き上げやら中掃除やら全部してくれてた。
その時代に、あるガソリンスタンドでスタッフの人が踊る様な動きで、って言うかほぼ踊りながら作業してくれる所があって、業界内の洗車コンテストでも優勝して、ニュースにも出てた。
で、その時に言ってたのが、別に踊ろうと思ってやった訳じゃなくて、作業を効率化しながら動いていた結果、こんな動きになった、って。
心の中では、「そんな訳あるかい!!」ってツッコミと、「いやいや、意外とそんなもんかもしれん。流れる様な作業が実は効率いいかも?」って何故かフォローする様な気持もあって。
まぁでも見てたら楽しめるし、作業も丁寧だし、店的にも売上も上がっただろうし、みんなwinwinで誰も困らないし、全部いい感じだな、と思った。
やっぱ幾つになっても遊び心って大事だよね。
「時を告げる」
毎日正しく時を刻んでくれる時計。
正午になると鳴る自治体の音楽放送。
時間通りになる近所の学校のチャイム。
入学式、卒業式、成人式、入社式。
時が経った事を知らせてくれる。
誕生日、記念日、金婚式、還暦のお祝い。
思い出を振り返りながら、時間の経過を告げてくれる。
でも、一番正確に毎日の時間を告げてくれるのは、自分の腹時計だったりする、どうでもいい様な事実······
「貝殻」
子供の頃海に行って、貝殻を拾うのが楽しみだった。
二枚貝、巻貝。色とりどりのキレイな貝もあれば、見るからに食用の、美味しそうだけど地味な貝もあった。
キレイな貝は宝物で、たまにお祭りなんかで売ってる貝殻の詰め合わせ?みたいなのも、全部が宝物だった。
大人になって、ただキレイというだけではなかなか価値を見い出せなくなり、ブランドだったり、金額だったり、流行りだったり。
色んな付加価値が気になって、純粋にキレイだけでは楽しめなくなって、あんなに輝いていた宝物が色褪せて見えた。
でも、その時期も通り越すと又、純粋にキレイ、というだけで楽しめるようになった。宝物、とまでは言えないけど、捨てたくはないし、飾っておきたいと思えた。
その物以外の余計な部分を削ぎ落として、ただ自分の価値観や感受性で、良い物を良いと、好きな物は好きと、自信を持って言える様になった。
貝殻は何も変わってないのに、自分が変わったせいで見え方が全く違う。価値が全く違う。
多分、貝殻だけじゃなくて、世の中全部そうなんだろうなあ、って今思った。