「風のいたずら」
冷たい風が吹く。
コートを着ていない私は、制服の襟元を合わせる様に、手でぎゅっ、とする。
さっむ。
手も冷たいし、多分鼻もほっぺも真っ赤になってると思う。
昔から、寒くなるとすぐにほっぺたが赤くなって、リンゴ病じゃないのに疑われて、保育園や学校から帰されてた。
昭和の子供みたいで恥ずかしいんたけど。
寒さの余り、自然と足が早くなる。
早く温かい家に帰りたいのに、冷たい風が吹いて前に進みづらい。
……急に風が当たらなくなる。
前の歩道の落ち葉は風に舞ってるのに、私の後ろだけ、風が止まってる。
訝しく思って振り返ると、貴方が、風を塞ぐ様に後ろを歩いてた。
「風除け位にしかなれんけど。」
ぶっきらぼうに言う貴方。
「アリガト。でも、後ろで風除けしてくれるより、横に居て手繋いでくれる方が暖かいけど。」
友達から恋人同士になって。
気安いセリフは言えるけど、甘い空気になる事はなくて、進展がなかった私達。
風のいたずらのおかげで、今日、一歩進めたよ?
風に感謝!勿論、貴方にも。
有難う。大好きだよ。
「透明な涙」
恋を失って流す涙。
友達との別離で流す涙。
映画や本で、感動して流す涙。
テレビやニュースで、悲しくて流す涙。
そして、愛する人やペットとの永遠のお別れで流す涙。
愛し過ぎて、何故か溢れて来る涙。
涙の裏には、数え切れない程の気持ちがある。
悲しみ、喜び、感動、喪失感、愛情。
そこに打算がない限り、全ての涙に理由があり、全ての涙は、美しい。
その、美しい透明な涙に感情という色をつけて、気持を流せばいい。
悲しい、辛い、淋しい、切ないとかの、マイナスの気持ちは外に流して。
嬉しい、感動、感謝、感極まるとかの、プラスの気持ちは内に流して。
「あなたのもとへ」
何もかも投げ捨てて、あなたの胸に飛び込める様な私だったら、違う未来があったのだろうか。
しがらみ、彼女との事、知らなかった事実。
何もかも、貴方と一緒に過ごせる未来と比べると、どうでもいい様な些末な事に感じた。
だから、そんな些末な事に流されず、貴方の元へ行けば良かったのだろうか。
でも、私はそうは出来ない。
ちっぽけだけど、私のプライドが。
しがらみや彼女の気持ちを無視してまで、とは思えない。
例えば心の底でそれを願ったとしても、自分だけの想いの為に、人を踏みにじる自分になる事は、自分自身が許せなかった。
私の矜持が、「NO!!」と言っている。
私が、私で居られなくなる位なら。
私は、貴方も大切だけど、自分が自分である事に価値を持ちたい。
だから、これて、いい。
自分の中の道に反しない事を選んだから、これでいい。
これが、正しい道だと思うから。
「そっと」
まるで壊れ物を抱くように。
そっと、そっと、君に触れる。
君は、小さくて、丸くて、柔らかくて。
少しでも力を入れると壊れそうで。
堪らなく可愛くて、愛しくて、ギュッて抱きしめたくなるけど。
でも、ギュッとするのも怖くて、そっと抱きしめる。
どうしてこんなに可愛いんだろう?
どうしてこんなに愛しいんだろう?
まるで、背中に天使の羽が生えているみたい。
そして、あれから何年か経つと。
どうしてあんなに天使ちゃんだった子が、こんなに反抗期で小憎たらしくなって、悪魔に見える時があるのだろうか?
まぁ、天使でも悪魔でも、所詮親バカな私から見れば、可愛さとか愛しさは変わらないんだけど。
愛情をこめて、そんな軽口をたたけるこの関係性はいいと思うけど、でも、やっぱり時々キーッてな位、腹が立つのもまた事実……
でも、きっと振り返ればそれも懐かしい思い出になると思う。だから、今のこの時期も楽しみたい。
子供は成長するから、良い事も悪い事も、きっと今しかない事がいっぱいあるから。
「まだ見ぬ景色」
人の目って、不思議。
目の前にあっても見えない時もあれば、逆に凄く遠くて小さくても目に入る時もある。
その時々の気持ちでも、同じ景色が違って見える。
旅行とかに行って、初めての場所は勿論新鮮で。
二度と来られないかも、って言う思いも働いて、景色とかは貪欲な程じっくり見ている。
でも、普段の景色や道程は、何時でも見られると思うし、特別な景勝地でも何でもないから、じっくり見る事もない。
でも、何気無い景色や風景の中に、ちょっとした綺麗なモノや、優しいモノが隠れている事もある。
いつもの帰り道。いつもの場所。
それでも、気分次第で違って見えるし、視点を変えると見えて来るモノもある。
目の前にある、まだ見ぬ景色を見る為にも、日々の目の前の事をまず大事にして行きたい。
道端の花、夜空に出た月、夕焼け、雲、草の緑、雪景色。
道行く人々、遊んでる子供達、一生懸命働いている人達。
全てが、珍しくなくても、綺麗でかけがえのない、ただ一つだけの景色だから。