「ココロ」
手に取れない。
目にも見えない。
色も、形も、触った感じも、全てわからない。
でも、確かに、ここに、私の中にある。
貴方の中にも、あの人の中にも。
全ての人の、生き物の中にある。
大切な、誰にも侵す事の出来ないもの。
誰にも変えられる事はなく、自分だけが育てられる、自分だけがコントロール出来るもの。
「星に願って」
もし、星に願って叶えられるなら、私が願いたい事は一つしかない。
もう一度、貴方に逢いたい。
あの頃は毎日が平凡で、明日という日が、今日の続きで自然に来ると思っていた。
変わり映えのない毎日だからこそ、それが幸せで、そんな日が続くと信じていた。
だから、出かけていく貴方に特別な声もかけていない。
伝えたい事もいっぱいあった筈なのに、「今」でなくてもいつでも言えるから、って、何一つ伝えられないまま。
でも、あの貴方は帰って来なかった。
突然知らされた訃報。
耳を疑ったし、理解が追いつかなかった。
いつも通り出かけ、いつも通り帰ってくると思っていた。ううん、そんな事も何も考えない程に当り前の日々だった。
でも、それはあの日に崩れて。
あの日から私は抜け殻で、一歩も進めず。
もがく事も、受け入れる事も出来ず。
毎日をどう過ごしていたかすら忘れてしまって、身動きがとれなくなった。
ただ、貴方の居ない日々を無為に過ごすだけ。
どうしたいとか、どうしようとか、そんな事も考えられず。
ただ、貴方に逢いたい。
逢いたい。愛しい。
……淋しい……悲しい……苦しい……
「君の背中」
あんなにちっちゃかった君が、いつの間にか大きくなって。
生まれたての頃は、ママの腕の中にすっぽりと収まっていたのに、いつの間にか大きくなって、収まり切らなくなってきた。
生まれた頃は、ホントにちっちゃくて、可愛くて。
こんなに可愛い物が生き物がこの世にいるものなのか?って思う位だった。
可愛くて、ギュッて抱きしめたいけど、ちっちゃくて壊れそうで、抱きしめるのも怖かった。
でも、今ではすっかりお姉さんになって。
そもそも抱っこさえあまりさせてくれなくなった。
淋しい様な、嬉しい様な。
君はどんな大人になるの?
ママやパパの背中を見て育つの?
そう思うと、君に対して恥ずかしいと思う様な事は出来ないと思うから、自然と背筋の伸びた、キチンとした生き方を選ぶ様になったよ。
君のおかげだね。
君の背中も大きくなって、いつかは親になる。
その時に、誇れる様な背中を見せられる様な大人に、親になって欲しいと思う。
ママやパパが、君に育てて貰った様に。
君も又、周りに育てられてく。
まだまだ道程は長いけど、誇れる背中になれるその日まで、頑張れ。
「遠く……」
いつからこんなに貴方との距離が離れてしまったのだろう?
ついこの前までは、ゼロ距離で、貴方の温もりを感じる事が出来ていた。
なのに今は、貴方が横に居ても、心の距離がこんなに遠い。
以前の様に、貴方を感じたい。
貴方の心に触れたい。
貴方の視線に射抜かれたい。
でも、それは今の私には、とても叶いそうもない願いで。
貴方の心は、私じゃない別の誰かを見ているから。
あなたが、とてつもなく遠い。
なのに、貴方は更に遠くへ行こうとしている。
戻りたい、と願っても叶わず。
もう一度、を願っても叶わず。
もう、どうしようもならない。
どうにも出来ない。
でも、私は貴方を諦められから、私はこの辛さを抱えたまま、ここで、ずっと貴方を想っている。
来る筈のない、「いつか」に縋りながら。
「誰も知らない秘密」
今日は、私の結婚式。
沢山の花束。皆のお祝いメッセージ。
皆が笑顔で、貴方も私も笑顔で。
幸せいっぱいで、これ以上何を望めばいいの?と思える位。
でも、私の心の一部は、ここにはない。
あの日、あの時、あの場所に。貴方の元に置いてきたままで。
貴方に酷い裏切られ方をして、これ以上ない位落ち込んで、どん底にいた私。
あの時の私は、今考えてもおかしいと思う様な状態だった。
そんな時に夫と出逢い、全てを解った上で望まれて付き合い、今日の日を迎えた。
優しい、穏やかな夫。私を包み込んでくれる。
私を疑う事もなく、今は私の愛を一身に受け止めてると信じて。
打算的かもしれないけど、経済的にも社会的にも安定してて。
大人で、不満な所なんて何一つない。
でも、私は貴方を忘れられない。
幸せな家庭を築けるのは、私を一番愛してくれているのは夫だって解ってるけど、心が求めてるのは貴方で。
きっといつかは、毎日の生活に紛れて、貴方との事も徐々に薄れて行くのだろう。
そして、そこが塗り変わる様に夫の色になって行くのだろう。
でも、染まらない。染まりきれない。
貴方との日々は、決して幸せばかりではなかった。
悲しみも、切なさも山程あった。
むしろ、辛い事の方が多かったかもしれない。
あの子に渡したくないっ!!て思って、苦しかった。
でも、私は今でも貴方を忘れられない。
心の何処かで貴方を求めてる。
今でも貴方が、狂おしい程に好きだから。
だから。
貴方の一部は、ずっと私の中に残り続ける。
貴方の一部を、飲み込んだあの日から。