〈光の回廊〉
暗闇が支配する回廊を一歩…そしてまた一歩、ふと足を止めると不安が込み上がる。俺は一体どれぐらい歩いたんだろうか?
そもそも何処へ向かっていたんだっけ?
見渡す限り、道は一直線でその遙か先で瞬く、たった一つの「光」だけを追いかけて、もう何分……何時間が過ぎが過ぎたのか。考え込んでいると、背後の暗闇から、チリン、チリンと鈴の音が聞こえてきた。
あぁ、またあの音だ。
振り返りそうになるが首を、必死で押さえつける。向こうに何があるのかは分からない。だが、本能が「行ってはいけない」と告げている。
俺は逃げるように、また光の方へと足を早めた。近づいている気はするのに、一向に辿り着けない。
不意に、自分の存在が薄れていくような感覚に襲われた。
「俺は……誰だ? なんで、こんな場所に居るんだっけ?」
すると鈴の音がまた強くなる、チリン、チリンと鈴の音とともに俺の…自分の…何かが、消えてるようなそんな気がして座り込み耳を塞ぐとしばらくして鈴の音は消えた……。
……もう、歩くのをやめてしまおうか。
このままここで眠ってしまえば、楽になれるのではないか。
とそう思い、重い瞼を閉じかけたその時――。
光の奥から、鈴の音とは違う「誰かの声」が聞こえた。
「た……さん!」
「誰か、いるのか……?」
「たく……さん!」
「なあ、どこにいるんだ?」
辺りを見渡しても、人影はなく、あるのはただ、遠く、眩しい光だけ。
「巧弥さん!! 聞こえますか!」
「だから、誰なんだよ……」
「頑張ってください! 絶対に、あなたを助けますから!」
巧弥。そうだ、それは俺の名前だ。
助ける? 誰が、俺を――。
そう思った瞬間、回廊の奥の光が爆発したように輝いた。
「うっ、眩しい……!」
咄嗟に目を瞑り、再び開けた時。
そこには、あの暗い回廊はなかった。目に飛び込んできたのは、無機質な白い天井と、鼻を突く消毒液の匂い。
「……あぁ、そうか」
あそこで座り込み、全てを諦めかけてしまった自分を情けなく思う。
それと同時に、自分をこちらの世界に繋ぎ止めてくれた人たちの必死な形相を見て、視界が熱い涙で歪んでいった
〈降り積もる想い〉
部屋が寒く目が覚め起きると、外は雪が降っていた。
僕は、そりゃ寒いわけだ、と思う。
寒い廊下を歩きリビングに着くと。
テーブルにあるリモコンを手に取り、テレビをつけるとそこに映る彼の姿が目に留まる。
あぁ画面に映る彼は今日も大忙しのようだ。
テレビを眺めながら冷めたパンを食べていると、ふと昔の事を思い出す。
あれは2人で芸能界を目指そうなんて、言っていた頃の僕達だ。
〈なぁアキラ見てくれ!今度の舞台が決まったんだ!まだ小さな舞台だけど、…いつか、いつかきっと一緒に大きな舞台に…!〉
なんて彼は僕に言って聞かせた。
あぁ彼はすごいな、僕には眩しすぎるくらいには………。
〈あのさ、ごめん僕、やっぱり芸能界は諦めるよ。〉
〈えっ…?〉
〈これ以上父さんも母さんにも迷惑は掛けたくないし、それに僕は君みたいには慣れない……。〉
それからは彼には一度も会っていないが、テレビに映る彼はよく見るようになった。今僕は彼とは違う道に立っては居るがきっと後悔はしてないはず、なのになぜだろう?これは寒さのせいか、それとも雪のせいなのか…僕の心のなかでも何故か雪は降り積もっていた………。