ミントチョコ

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12/9/2025, 2:34:23 PM

題 凍える指先

寒くて仕方ない
それはそうだよね。

だって今私は外にいる
雪が頭にぽつりぽつりを積もっている感覚を感じる。

このまま風邪引けたらいいのになぁ。
学校休めるし。

なんて思いながら空を見る。

灰色の空。
憂鬱な、暗い暗い気持ちとリンクする空色。
ホワイト・クリスマスなんて陽気に過ごしてるみんなには嬉しいことなんだろう。

私にはなにもないから。
友達だっていないし、楽しいことだってないし、
学校だってつまらない。

暗い思考が頭の中を巡る。
なぜここにいるのかな?

何度も問いかけた質問。

なぜここで私は生きてるんだろう。

私がいてもいなくても
世界は普通に回るのに。

なんて、そんないつもの思考パターンになってしまう。

「危ないっ」

ボーッと私が上を向いていると、誰かがぶつかってきた。

「わっ」

よろけたわたしの手を掴む暖かい手。

「ごめんね、だいじょーぶ?沢さん」

その手の持ち主を見ると、同じクラスの小島 ゆきさんだった。
陽キャだ。
私とは相容れない人だわ。

「だ、大丈夫っ」

私は直ぐに握られた手を離して、答える。

「急いでて、ほんとにごめんねっ」

小島さんはサラサラした綺麗なロングヘアをきらめかせて私に微かに頭を下げて手を合わせて謝った。

「こっちこそ、ボーッとしてたから」

私は慌てて顔を横に振る。
そんなに謝られたら恐縮してしまう。

「急いでるなら、早く向かってね」

私は、小島さんの急いでるという言葉に、そう促した。

「うん。ありがと⋯ねぇ、でも、何かあったの?なんか元気なさそう」

小島さんは頷いてからわたしの表情を伺って、心配そうな眼差しでこちらを見つめる。

「いや、大丈夫だよっ、小島さんこそ、ごめんねっ、私なんかにぶつかって時間無駄にしたでしょ、ほんと迷惑でしかないよね」

なんて。
自虐しか出てこない自分の思考。
小島さんも困るのにと思うのに、思考を変えることが出来ない。

「迷惑?っていうかラッキーだった!」

そんな私の耳に、小島さんの意外な一言が入ってきた。

「え?」

私が聞き返すと、小島さんが微笑む。

「あのね、沢さん、いつも本読んでるでしょー?あの本私も好きなの!だから、本のことについて語りたいと密かに思っててっ!でもなかなか話しかけられなかったんだよねー!」

小島さんの周りだけぱあっと光がさしたみたいに。
なんだろう、これ。
眩しいくらい明るい空気感だ。

「透明な王国、読んでたよね?沢さん」

重ねて、そう言われて、私は答える。

「うん、好きなシリーズで⋯⋯」

「やっぱりー?話しかけられるの嫌かなって思いながらも、いやでも話したいなって思っててね、そうだよねー?あのシリーズいいよねっ!好きな人が周りにいなくて、沢さんがあの本読んでの見た時うずうずしちゃったよ!」

瞳をキラキラさせて語る小島さんは可愛くて、どこか私とは別の世界の人みたいだ。
わたしの周りのオーラは暗いんだろうな。
私と話してたら、どうせ小島さんたってガッカリする。

私みたいな暗い人と話してたってつまらないに決まってるんだから。

「でも、小島さん、友達沢山いるから、無理に私と話さなくても⋯⋯」

私は彼女のキラキラオーラに怖気付いて、そう言ってしまう。話したくない訳じゃないけど、嫌われたくなくて。

「そんな事言わないでー。あ、沢さんが話したくなかったらいいんだけど、私はすっごーく沢さんと話したいの!だから、今度話さない?沢さんがもしみんなで話すの苦手なら、2人で話そうよ」

私の言葉に気を悪くした様子もなく、小島さんは笑顔でそう提案する。

なんか⋯彼女の雰囲気が好きだな。

そう思った。
私を馬鹿にするでもなく、思いやってくれて、本当に本のことについて話したいのかなって。
私も話してみたいって気持ちに心が揺れた。
小島さんの言葉と雰囲気に自然と気持ちが緩んでいたんだ。

「⋯小島さんが迷惑じゃなければ」


気づいたら私はそう言っていた。

「迷惑なわけないー!えー、嬉しいなっ!じゃあ明日お話しようね🎶あっ、遅刻だわっ!急がなきゃ!!またねっ、沢さんー!」

私の肯定の言葉に、満面の笑みでそう慌ただしく言うと、小島さんは急ぎ足で駅の方へと向かいながら私に手を振った。

私は手を振り返すべきかどうか迷いながら、中途半端な高さに手を持ち上げたままでいる。


⋯⋯嵐が去った。

って言うのが正直な感想だった。
でも、嫌な嵐じゃない。

学校でも人と関わるの苦手な私には
特殊な出来事だった。

しかもこんな道の真ん中で。



ふと空を見あげた。

灰色の空から、白い雪がポトポトと落ちてくる。

とめどなく落ちてくる。

明日なんて
希望なんて


そう思っていたのは何分前?

それでも
そんな気持ちは
いつか変わって行くことだってある。


だってほら
今見上げる空は
全然暗く見えない。

何でかな。
ほわほわとるんるんと雪が踊っているように見えるの。

私は知らぬ間に微笑む。
小島さんと仲良くできるのかどうか分からないけど
でもね、こうして1つの出来事が心をこんなに変えることが出来るのなら。

まだ、私にはたくさん出来ることがあるんじゃないかって思ったんだ。

自分を楽しませること、喜ばせることが。

なぜだか分からないけど
小島さんのあの明るい空気がそう思わせてくれたのかもしれない。

予想外に明るい気持ちになったことに戸惑いながら。
それでも、そんな自分の感覚を楽しんでいる自分を感じながら。
私は、そのまま空から降る雪を眺めていたんだ。

指先の冷たさすらも心地よく感じながら

11/7/2025, 12:55:52 PM

題名 灯火を囲んで

「わぁ、見てみて」

私は隣にいたタカシに話しかける。
思わずタカシの上着の端を握ってしまう。

「ん?ああ、すごく綺麗だな!」

タカシは私が指さした方を見て歓声を上げた。

12月の寒空に、綺麗な灯りが川の上に浮かんでいた。
イルミネーションとは違う温かみのあるオレンジの光が沢山川に浮かんでいる。

その灯りをみていると、どこか昔に戻ったような、不思議な感覚になった。

「あっちでみんな浮かべてるみたい、行ってみようよ!」

デート中のプランを放棄して、私はタカシの手を取ると、灯りの方へと向かう。

「分かったよ、行ってみようか」

私の好奇心の強さを知ってるタカシは苦笑しながら付いてきてくれる。

灯りを流している川では、お金を払うと自分で願い事を書いて火を灯して川に浮かべられるようだった。

「ねぇ、やってみたい·····」

反則なのは分かってるけど、上目遣いでタカシを見つめる。

「いいよ、いいよ」

タカシは即答して私の頭をぽんぽんしてくれた。
私はウキウキで願い事を書く紙を二通受け取りに行く。

「はい、このボールペンで書くんだって!あそこの台で書くみたい、書きに行こっ」

「よし、書こうか」

二人で並んで願い事を書く。
私は·····ずっとタカシと一緒にいられますように、かな?

タカシの願い事を見ようとすると、なぜか隠された。

「えーなんで隠すの?」

「内緒だから」

そんな答えになってない答えをもらいつつ、私たちは願い事を紙の船に浮かべて、火をつけたロウソクを船に立てる。

そっと手で押すと、炎を灯した船はぼんやりとしたオレンジの優しい明かりをふりまきながらゆっくりと水の上を進んでいく。

「わぁ、綺麗だねぇ!水の音もいい感じだね」

「そうだな。灯りがこうして水の上に沢山あるのも風情があるよな」

私たちは船に浮かんだ灯り達を眺めていた。

「·····わたしはね、ずっとタカシと一緒にいられますようにって書いたんだよ」

私は明かりを見ながらふと言葉に出す。
言葉がこぼれ落ちてきた。

「ありがとう。僕も一緒だよ」

「一緒なの?!じゃあ見せてくれても良かったじゃん」

私が思わずムキになるとタカシは拗ねたような顔になる。

「願いが同じじゃなかったら恥ずかしいじゃん」

·····カワイイ·····。

私は思わずタカシの頭をなでなでする。

「そういうとこ、スキだよ」

「からかってるなぁ!」

タカシの言葉に全力で首を横に振る。

「本当だっては!!」

「·····そっか、ありがと·····」

それから2人とも何となく黙ってしまう。

私は川のオレンジの灯り達に目をやる。

寒空の中、優しさがそこには溢れている気持ちになって·····。
優しさをおすそ分けして貰えたような気がした。

そっとタカシの手を取る。

「·····じゃあ、デートの続きしよっか?」

「·····そうするか」

そうして二人で歩き出す。

私の頭の中にはまだ優しいオレンジの灯りが残っていた。
その灯りが心に更に明るさを灯してくれたようで·····。

その場所に、灯りに巡り会えたことは幸運だったなって思えたんだ。

11/6/2025, 2:06:45 AM

題名 時を止めて

お願いだから
時を止めて

今隣にいるこの人が
大切なの
大切で1分でも無駄にしたくないから

時を止めて
お願い

私が突如手を組みあわせてお祈りを始めたので、彼氏はビックリしたように私を見つめる。

「え?何?なんでいきなりお祈りしてるの?」

「祈ってるのっ時が止まりますようにって」

「時が止まったら困るなぁ、終電無くなるし」

とか現実的なことを言う彼氏を私は軽くにらむ。

「終電なんて気にしなくていいでしょ!今私と一緒なんだからー。時が止まったらいいって思わない?」

「思わない」

即答する彼氏を呆気に取られたように見る私。

「えっ、どうして?!時が止まったらずーーっとデートしてられるじゃない」

「ずーっとデートしてる気ないし」

意地悪な彼氏の言葉に涙目になる私。

「そうなの?私だけだったの?こんなに一緒にいたいって思ってるの·····」

思わず視線を逸らして下を向いてしまう。
持っているカバンの取手を意味もなく持ち替えてると、彼氏の優しい言葉が上から降ってくる。

「ずっとデートしてたら結婚できないじゃん」

「!?」

私が一気に上を向くと、今度は彼氏がそっぽ向いてる。

自分で言い出したくせにおかしいの。

私がふふって微笑むと、彼氏はムキになったようにこっちを向く。

「笑うなよー」

「ごめんごめん、嬉し過ぎて、幸せの笑顔だからっ」

そうして彼氏の腕に自分の腕を絡ませる。

「嬉しい、そうだよね、今が終わってもまた会えるよね」

「そうだよ、だから今日は帰ろう?」

「えーでもなぁ、それとこれとは話が別なんだよなぁ」

まとまりかけた話がまた広がりそうになって、彼氏はため息をつく。

「はいはい、じゃあどこかカフェで暖かいものでも飲んでから帰る?」

「うんっ!大好きだよっ!」

現金な私の笑みに彼氏は呆れたように微笑む。
そんなこの一瞬さえ大事なんだ。

将来ずっと一緒にいられたら
私は幸せで時を止めてなんて思わないかな?

ううん、いつもいつもこの時がかけがえない時間だから。
やっぱり時を止めてって思ってしまう気がする。

11/5/2025, 4:58:05 AM

題名 キンモクセイ

フワッと香った。
その香りに振り向く。

柔らかい優しい香り。
小さなオレンジの花のその香りに
私は目をつむる。

あなたの事を思い出す。
というかあなたの事しか思い出せない。

優しさを固めたような
どんな時も傍にいて励ましてくれるあなたが
私の中にいつもいるから。

「沙耶!」

私は微笑んで振り返る。
優しいオーラをまとうあなた。

どこかキンモクセイと似たフワッとした
遠い異国を思わせるような感覚に、何故なんだろうと思う。
こんなに懐かしい気もするのに。

「待ってたよ」

デートの待ち合わせ場所のベンチから立ち上がって私はあなたに言う。

「ごめん、待たせて、電車が少し遅れちゃってて」

「だいじょーぶ、ねぇ、見て?キンモクセイ、あなたみたいだよね」

「いつもそう言ってくれるけど、そうかなー?」

あなたの懐疑的な顔を見てまたフフッと笑みがこぼれる。

そんな瞬間すら幸せなんだ。

「そーなのっ、私にとってあなたはいつでもフワッとして優しいキンモクセイなんだよ」

「君がそう言うなら」

あなたが照れたように言うから、私はあなたの手を衝動的に握る。
離したくなくて。

「?!」

突然手を握られてびっくりした表情のあなた。

「·····繋いでもいい?」

今更のように聞く私。
いいって答えが返ってくるのは分かってるのに。

「もちろんいいよ」

あなたのフワッとした笑み。
·····弱いなぁ、私はあなたには。

「行こっか?」
私は幸せを噛み締めながらあなたと歩き出す。

寒い北風が吹いているけど、私とあなたの間にある空気はいつでもオレンジ色。

いつでもあなたは私のキンモクセイだ。

いつでもあなたは私にとっての癒しなんだよ。

どうかずっと傍で優しさを感じさせていてね。

10/24/2025, 1:50:10 PM

題 秘密の箱

「これなーんだ?」

彼氏が私の前で包み紙に包まれた箱を軽く揺らした。

「えっ?!プレゼント?!」

わたしは嬉しくなって声も弾む。
その淡いピンクの包み紙にレースのリボンで包まれた箱は一見プレゼントと捉えられてもおかしくないほど可愛らしかった。

でも、記念日なんてあったかな?

その後私の思考は少しそこに留まる。

「何かの記念日だったっけ?」

私がホロっと零した言葉に彼氏が不思議そうな顔で応える。

「記念日?違うけど」

「え?じゃあなに?それ」

そう言うと、彼氏は私にその包みを渡す。

「開けてみ」

二人でカフェデート中。
私はその包みを受け取ると、レースリボンを解いてかさかさと包み紙を開封した。

「あっ!」

そこには、有名なブランドの化粧水が入っていた。

「わぁ、嬉しい!私にプレゼントなの?」

私が声のトーンをワンオクターブ上げて話すと、彼氏はヒョイと私の手に持っていた化粧水を取り上げる。

「あ、何?」

「俺の」

「え?何が?」

私が聞き返すと、彼氏は念を押すように繰り返す。

「だから、俺の。この化粧水」

「はぁぁぁぁ?」

思わず大きな声を出してしまい、カフェだと気づいて自分の口を自分で塞いだ。

「男だって美容に気を使う時代だろ!レビューでいいって書いてあったんだよ」

彼氏が何故かヒソヒソ声で言う。

「何でじゃあそんなご丁寧に包まれてるのよ?!」

納得いかなくて、語気荒めに彼氏に問いただしてしまう私。

「だって恥ずかしいだろ、若い女性の店員さんに自宅用なんて」

「なにそれ、紛らわしすぎるのよ!!」

私はさっきの喜びを返せーと思いながら彼氏に抗議した。

「プレゼントだと思ったのにっ」

滅多にプレゼントとかくれない彼氏だから、凄く嬉しかったのにっ。

まさかの自分へのプレゼントなんてー。

私がいじけて下を向いてティスプーンで紅茶をかき混ぜているとトントンと肩をたたかれる。

「なに?」

トゲのある声で上を向くと、水色のレースに包まれた包み紙が目の前に差し出される。

「ちゃんと買ってあるから、美香のぶんも」

「え·····」

包み紙を開けると、可愛いボトルに入った香水が出てきた。

「·····ありがとう、うれしい」

素直にお礼を言うと、彼氏は照れているのか横を向く。

「·····ついでだよ」

そんなこと言う彼氏にふふっと笑みがこぼれる。

私は、さっきの彼氏と同じくらいの囁き声で

「好きだよ」

って言うと、彼氏に満面の笑みを向けたんだ。

大切に貰った香水を胸に抱きしめながら。

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