少し落ち込んでいた。親しい人ともケンカして、すっかり悲しくなった。そこへ、みんなが笑顔で現れた。知っているような、知らないような人たち。「ごめんね。みんな、うそだよ」。あー、そうだったのか。びっくりするくらい涙が出てきた。サプライズ的なことも苦手なのに、すごくうれしい。涙が止まらない。
はっと目が覚めた。夢か。全部夢だったのか。感情は今もそのままあるのに。あと、もう少し…。目をつぶってみても、もうあの世界には戻らない。でも、きっと心の奥底にある感情なのだ。自分が思ったより弱っていたのかと気づく。
夢で見た心の中の風景に教えられた。
「心の中の風景は」
夏の暑さにもめげず、道端で見かける夏草は、青々としてさわやかに見える。どんなに日差しが照り付けても、負けない。熱を帯びたアスファルトの隙間や、街路樹の横で、たくましく伸びている。すっすっと黄緑に光る葉、かわいい小さな花が咲いていることもある。
雨の後は、より一層瑞々しい。涼やかで、その群生のそばを通りたくなる。でも、よく半袖の腕などが、後にポツっと赤く腫れてくる。あー、やられた! そのさわやかさは、蚊とセットだった。すっかり忘れて、ついやってしまうのだ。
「夏草」
もっともっとと自分にムチを打って、まだ足りない、ここも足りないと思う。自分にないことばかりに目を向けていた。
苦手なことをがんばるのは、なかなかしんどい。それを乗り越えたかった。
自分の得意なことは、たとえほめられるようなことがあっても、そうかな? となかなか受け入れられない。でも、それをする時は、とても自然で、あっという間に時間が過ぎていたりする。そうか。もっと努力したいものは、できないことではなく、自分の中にあるものだった。
「ここにある」
足のサイズを測るのに、素足でと言われる。
えっ、素足? ちょっと恥ずかしい。普段、甲を覆う靴ばかり履いているので、すっかり油断している。かかと、爪、きちんとしていただろうか。靴下を脱ぐと、糸くずなんかも指についていて情けない。
サンダルを履き、美しい足で歩く人をよく見かける。かかと、足先もよくお手入れされていて、おしゃれだ。足という細部にまで気を配れる人は本当にステキだと思う。
そんな人に憧れながらも、スニーカーで過ごしている。それでも素足は、きちんとしておかなければ、と思う。そして、たまにはサンダルにチャレンジしてみるかな。
「素足のままで」
ずっと好きなことを追い続けていればいいと思っていた。でも、なかなか思うところへはたどりつけない。だんだん苦しくなってきて、やめてしまった。
すると、自分を通る軸がなくなって、ヨレヨレになった気がした。楽になったはずなのに、何か違う。また、嫌になってきた。
本当はどうなのか、心の奥にある思いを探ってみる。やっぱり好きなのだ。好きなのだから、楽しまなくちゃ。もっと気楽にやってみよう。
またもう一歩だけ、踏み出してみることにした。
「もう一歩だけ、」