光の加減は難しい。真正面に当たる直射日光は強すぎる。さまざまなニュアンスが吹き飛んで、良さも飛ばしてしまう。それなら、ゆるい光の中のほうがいい。ほのかに輪郭がはっきりして、動きやすい。
日差しを背にすると、たくましくなれる気がする。光が後押ししてくれるかのように。でも、それも強すぎると、影が強くなって疲れてしまう。背中ごしに、上からではなく下のほうから優しくあたる光には、勇気づけられる。
写真も、人物は優しい逆光で撮るのが好きだ。
「逆光」
早く行かなくちゃと焦っていた。少し外に出てみただけなのに、思ったより遠くに来ていた。行きたいビルは見えている。でも、鉄道やら道路を越えていかないといけない。なかなかそこに行く道がわからない。
とりあえず、転がるように目の前の坂道をくだる。すると男の人に声をかけられた。あのビルに行く? 少し困った顔をして考えると、「地下に降りて、そこから…」。詳しく説明してくれる。横にいた女の人が「私が一緒に行く」と言う。
気づいたら、女の人と一緒に歩いていた。さっきの人といい、なんだかとても心地よい人たちだった。知らない人なのだけど、自然にすっと馴染むような感じだ。ビルの中をふわふわと歩いていたら、女の人がふとその一角に入った。ん? 人がたくさんいる?
はっと目がさめた。妙に白っぽい、もやがかったような世界だった。
「こんな夢を見た」
あー、やり直したい。時間を巻き戻せたらと思う。ひょいとタイムマシーンに乗って、その時に戻る。でも、また同じことを繰り返す。たとえそこを回避できたとしても、結局同じ結果が待っている。
なんかそんな気がする。そもそも自分が変わっていない。心の準備ができていない。それなら、時間がだいぶ経ってから、またやり直す? その頃には、なんでやり直そうと思ったのか忘れているかも。戻れないから、いいのかもしれない。
「タイムマシーン」
夕方の空がきれいだった。みかんのようなオレンジ色から、夜を迎える薄い青へ美しいグラデーションを作っていた。
下の方にある黒い山々がアクセントになっている。そして、その薄い青のところに、三日月が浮かんでいた。これ以上ないほど細く繊細な三日月。思わず立ち止まって、眺めた。
こんな日の夜は、きっと特別な夜に違いない。
「特別な夜」
水際の海の底は、見ることができる。波にさらわれる砂と、たまに、ちらちら貝が揺れている。深い深い海の底はなかなか見ることがてきない。
船に乗って、海を眺めた。青のような緑のような色から、その奥行きの深さが感じられる。「あー、いっそのこと深海の魚になりたい」。思わずつぶやく。誰にも惑わされず、暗闇の中、一匹狼で生きていきたいなんて思う。
「そこはそこで大変だと思う。深海の中の生き物って、強い気がする。光のない世界で生きるために色々変わってきたのかもしれないから」と、君が言う。
そうか。どこも同じか。それにしても、君はいつも淡々としている。「感情がすごく動くことってある?」と聞くと「あるよ。でもそんな時は、それを海の底にポーンと捨てているから」。にっと笑う。やっぱり君はよくわからない。
「海の底」