NoName

Open App
2/9/2026, 6:48:07 AM

 笑顔の人はステキだ。自分の笑った顔は、あんまり好きではない。いつも笑っているような目元に憧れていた。三日月のように見える目がいい。なんとも柔和に見える気がする。

 鏡をみながら練習してみる。どうやっても眩しそうな目か、眠そうな目になるだけだ。仕方がない。もともとの目の形が違うのだから。

 せめて口元できちんと笑いたい。口角を上げるといいのだそう。口角を上げるってどうするのだろう。考えると分からなくなる。とにかくにっと笑ってみる。変だ。なんだかひきつってみえる。

 あんまり変だったから、つい、あははと笑ってしまう。すると、目元も緩んで見えた。本当に笑う時は、ちゃんと色々なところが緩んで、楽しそうな顔になるのだ。
 
 やっぱり笑顔を見ると、幸せな気分になる。どんなカタチの笑顔だって、まあいいかな。

「スマイル」

2/8/2026, 9:07:39 AM

 夜中に、外でなにか音がしたような気がした。起きて、カーテンを少し開けて外を見ると、雪が降っている。

 右から左から舞い回り、くるくると螺旋状に途切れることなく落ちてくる。しばらく飽きずに見ていた。静かだ。さっきの音の主は分からない。

 目の前には、たくさんの家やマンションが立ち並び、雪と眠りの気配で覆われている。
 
 そのうちの一つの窓が開いたような感じがした。影がベランダで動いている。激しく舞い回る雪のベール。ん?

 珍しい雪は、妙に心を騒がせる。そっとカーテンを閉めた。

「どこにも書けないこと」

2/7/2026, 7:46:54 AM

 毎日、お世話になっているのに、普段は存在自体をあんまり意識していない。リビングの壁でずっと動いている時計がある。

 それが突然、カラカラと音を出しだした。時計の針がぐるぐるとまわっている。何周かしたら、ピタッと今の時間になって普通に動く。

 以前、こうなった時に時計が壊れたと思った。カラカラと回る頻度が増えてきて、そのうちに秒針の刻みが一足飛びになった。そして何日かすると、ピタッと時計が止まった。

 いよいよその時がきたと、時計を外して裏返すと電池に気づいた。あ、そうか電池か。そんな基本的なことを忘れていた。入れ替えるとまた、無事に動き出した。

 ぱたっと止まるのではなく、電池がないことを段階的に教えてくれるのだ。何となく時計が、けなげに見えてくる。今度は早めに入れ替えようと、壁からそっと外した。


「時計の針」

2/6/2026, 8:11:53 AM

 ほっとくと、溢れ出てしまう思いを、持て余している。なんでもないような顔をして、隠している。目に、表情に、仕草に出てしまっているかもしれないのに、必死に何でもない顔をする。

 そうすればする程、じわじわと溢れ出る気がする。何でバレたらいけないのだろう。どうして素直になれないのだろう。よく分からないけれど、とても恥ずかしくて。とにかく隠そうとする。

 心の奥深くでは、バレてしまってもいいのではと思ったりもしている。でも、いざとなるとまた慌てて、方々から思いを隠そうとしてしまう。


「溢れる気持ち」

2/5/2026, 7:18:49 AM

〝キスチョコ〟というのをはじめて見た時、コロンとしたかたち、銀紙からチョロっと出た紙がかわいくて魅力的だと思った。名前も異国の雰囲気だ。ただ、味は独特で子どもだった私にはおとなの味だった。

 学生の時、おしゃれでステキな人が、いくつかの外国のチョコレートを持ってきた。見たことのないパッケージにわくわくした。その中に〝キスチョコ〟もあった。

 その人が持ってきたというだけで、チョコレートが格段におしゃれに見えた。皆でいただくことになって、私は〝キスチョコ〟を選んだ。前に食べたときと同じ味だろうか。少しは変わっているかもしれない。

 紙を引っ張って銀紙を外す。口元に近づけた時、あっと思う。あの懐かしい香りがした。やはり異国の味だった。でも、その時から何だかおしゃれな雰囲気をまとったチョコレートになった。


「kiss」

Next