お題《私の当たり前》
言の葉を織って流すこと
記憶の中に眠る日常や忘れられない時間を描く
わたしの想いや物語を誰かに届けたいから
それで、誰かの日常がすこしでも色鮮やかになればいいと想う
誰かの不安や切なさに寄り添うような物語を
想いの言の葉を伝えたくて
わたしは今日も言の葉を織って流す
《何もしなければ 何も変わらない》
《想いを伝える時に伝えなければ 大切な人も時間も待ってはくれないから》
《大丈夫 あなたと一緒にこれからも歩いてゆくから》
読んでくれてありがとう
いつでもあなたのそばに月がありますように
お題《街の明かり》
青い記憶の街。
水底に沈んだ街を照らすのは、青い満月。
歌語りが聴こえる。
吟遊詩人がハープを奏でながら、月を見上げている。
――何を想っているのだろうか。
美しい旋律は空へと消えてゆく。
この街には青い薔薇がたくさんが咲いていたけど、それも遠い昔のこと。
――あんなに美しい薔薇だったのに。
吟遊詩人の瞳に映る月が照らすのは。
今はもう亡き幻影の街。
お題《七夕》
逢えない日々さえも。
君想うたび彩られていく。
色とりどりの浴衣を纏った人々が行き交う。七夕の日は華やかで、凛としてて。現とは思えない美しさで、夜はあふれかえる。
「すー」
「かなちゃん……!」
笑顔で、ひらひら手をふるショートカットの少女に、手をふりかえす。かなとは小学校からの付き合いだ。高校生になった今もこうして、七夕になると近所の夏祭りに出かけるほど仲良しだ。
「すず、また美人になったじゃん。こりゃあ男もほっとかないわ。でも、まだ彼氏いないんでしょ?」
「もーかなちゃんってば言い過ぎだよ。そういうかなちゃんは、塾で出会った他校生の人とどうなの?」
「えー? ふつーふつー。よくけんかするけどね」
思わず笑ってしまう。雑談しながら出店覗いて、りんご飴や綿菓子を買う。それからヨーヨー釣りをやったけど、見事全滅。水色のが欲しかったが、簡単なようで、難しい。
「かなちゃん、次どこ――」
隣にいるはずの、いると思っていたかなの名を呼ぶが誰もいない。おかしい、さっきまで隣にいた……。
思わず後ろをふりかえる――人が、いない。
「……どうなってるの……?」
音もしない。まるで、神隠しに遭ったみたい。
心臓がうるさい。
どうしたら――静寂を破ったのは、青年の声だった。逢った記憶もないのに、すごく懐かしい。そして悲しい。色々な感情が湧き上がってくる。
私――なんで……。
「やっと逢えたね。この日はいつだって雨が降るから――世間では催涙雨(さいるいう)なんて呼ばれてるけど。そんな美しい言葉では語れない、よね」
この感情は。
この感情は。
「……ずっと、逢いたかった」
「俺もだよ。俺だけの――織姫」
ふれた手は。
ふれた唇は。
あなたと紡ぐためにある。
お題《友だちの思い出》
はじめて光に触れた日。
《落ちこぼれの魔女》は来る日も来る日も魔法、ハーブ、料理、読書、正しい魔女になるための練習を日々欠かさなかった。周りはみんな立派な魔女になって、巣立っていく――喜べない自分がきらいだ。自分で自分を卑下して、周りと比べて、勝手に落ちていく。
そんなのが魔女になんて、なれるはずもないのに。
友だちもいないから、庭園の片隅のベンチでサンドイッチを頬張る。一緒に食事をして、お茶を飲みながら魔法の談義に花咲かせたり、ショッピングしたりしてみたかった。そんな夢ばかりが膨らみ消えていく。
……これからもこんな風に生きていくのかな。
うつむいたままでいると、あまい香りがした。ふと顔を上げれば、月灯りの翅の少女が、木の実を抱えているのが目に入った。
月灯りの翅――珍しい妖精の種族の……!
「これは妖精に伝わるメリアの実よ。心に効くから食べてみて」
「へ?」
「疲れてるように見えたから。ね、主サマ」
妖精が“主サマ”と呼ぶ先に、紺碧色のローブを纏った少年がいた。金の刺繍――認められた高位魔女の証。思わず言葉を失う。この方なら、そんな妖精を連れていても納得だ。
「そうだね。リーザも君を気に入ったみたいだから、食べてみてくれないか?」
陽光に金色の髪が煌めく。
「は、はい」
王子様みたいなひとに言われたら断れない。意を決して口の中に放り込む――甘酸っぱい。思わず笑顔になる。心が解けていくような、不思議な感覚。
「ね、よかったらこれから一緒に魔法練習付き合うよ。もちろんリーザもね」
「え? え? でも……」
「じゃあ、これならどうかな? 僕の友達として」
「ともだち……」
涙がぽろぽろ流れる。――はじめてみた、光。
リーザがそっと頭を撫でてくれる。それが嬉しくて、また泣いてしまう。
そんな様子を見守ってくれる私の、はじめてのともだち。
お題《星空》
先人たちの魂が行き着く先。
星の海を見上げれば――。
たとえどんな罪人でも。
僕にとっては。
星がたくさん流れる草原に墓石はあった。
自ら石を採りにいき、その石を加工し、生前彼女が愛した星に一番近い場所に墓石を建てた。
――僕にとっての彼女はただの“女の子”だ。
やさしくてあたたかい、彼女のつくる料理はとびっきり美味しい。スープにはレモン果汁に、やわらかく煮た月豚の角煮がトロトロ。香辛料でちょっぴりスパイシーで。
それでも世間にとっては“人殺し”。
騙されたのだとしても、それでも“罪人”。
それでも僕とっては。
“スープの味見してくれる? ちょっと今日のは失敗しちゃったかも”
それでも僕とっては“彼女”だ。
オレの世界に人はいない。
生まれてきた時に祝福してくれた奴はいない。
でも小さな月色の猫だけがそばにいてくれた。
どんな時もそばにいて、一緒に眠って、ごはんを食べて、たくさんの風景をみて。
ずっとそばにいたけど、でもオレより先に年老いてゆく。そして最後――力なく鳴いて(泣いて)、そのまま星の海にかえった。
全部、全部、覚えてるから。
おまえのことは、オレが憶えてるから。
星が流れてゆく。
小さな墓石に月色の花をそなえて。
先人たちの魂が行き着く先。
星の海を見上げれば――。