お題《私の名前》
はじめてのおくりもの。
この世で、たったひとつの――。
《名》とはおのれの意味であり、だれかが呼ぶための名だ。存在意義であり、生きていくために必要なもの。
でもわたしは名が無いから、だれにも呼ばれない。捨て子で、どこかの屋敷に拾われて、名前は必要ないと言われ番号で呼ばれる。わたしの他にも色んな子がいて、同じように番号で呼ばれる、それが《あたりまえ》。
そしてまたいらなくなったら捨てられ、また拾われてのくりかえし。もう、あきたの。それくらい《あたりまえ》なんだわたしたち《ドール》は。
人が楽をするためだけに生まれ、生きている屍。
偽りでもいい。
愛されなくてもいい。
《わたし》の居場所がほしい。
だって、名前は居場所でもあるから。
それは、ある日突然世界を変える。
大きな屋敷の広いお庭。光あふれるこの楽園で、ご主人様はわたしに微笑む。
「ローズクオーツからとって、《ローズ》はどうだ? おまえにぴったりだと思うんだ」
光のしずくがこぼれ落ちる。
ご主人様がくれた楽園は――わたしの凍った心をとかしてくれた。
お題《視線の先には》
秋の雪がはらはらと散りゆく街は黄昏色に染まる。
切り取られた季節は繰り返す。
ある青年は言った。「ここは誰かの夢。誰かの季節。失いたくない、このままでいたい――“繰り返す”にはじゅうぶんだろう?」
ある少女は嘆いた。「想いは時に人を苦しめます。それでも想わずにはいられないでしょう、わたしたち人は」
ある少年は、それを絵に描きのこす。
「僕にできることは、絵を描くことだから。この街を描くんだ。それがきっと救いになるって信じてる」
誰かの夢。
誰かの季節。
たったひとりの誰かを救うことが、この季節の先に繋がるんだ。
お題《私だけ》
長い旅路の果ての足跡は 私が今まで歩んできた軌跡
誰にも歩むことなんてできない
私だけの旅
私だけの宝物
《あなた》だから、ここまで来れた
《あなた》だけの旅の
《あなた》だけの物語を聞かせて?
紅茶に星屑を落として 心地よい風に揺られて
物語は始まる――