椿灯夏《少しずつ削除します》

Open App
8/16/2022, 11:13:39 AM

お題《誇らしさ》



雪華(せっか)強くおなりなさい。守る者は誰より強くあらねばなりません、誰より美しく、綺麗な生き方をなさい。


――天に立つ者ならば。





食うに困らずの生活とはどんなものだろう。


空腹とは空白。



――生きるために。



なんでもいいからと、まだ熟してない青い実や草を口に入れ、ときには人様の畑から盗む。――どんなに不味くても食べるし、身体に良くないものでも食べる。




生きることに、意味はない。


ただ本能的に、死にたくはない。




そんな私を変えてくれたのは、今の姉様。



身寄りのない私を拾い、《雪華》という名前をくれた。



雪の降る日に出会ったから、と。




銀色の長い髪を結われた姉様が微笑む。季節の花々に囲まれた姉様は、世界にひとつだけの華。



「雪華の好きな紅茶を取り寄せてたのが今日届いたから、一緒に飲みましょう。それから紅茶によく合うお菓子も焼いたの」


「はい」





私は今日も姉様の言葉を胸に生きている。




8/15/2022, 11:12:29 AM

8/14/2022, 11:50:04 AM


8/12/2022, 10:58:56 AM

お題《君の奏でる音楽》



雨の中手を天に向け、歌う少女。


彼女は女神か天使か。




月並みな表現しかできないが、頭の中に壮大な風景が想い浮かぶ。手を伸ばせば、風に游ぐ花にさえ触れられそうだ。


雨さえも祝福しているかのようで。



「……これは夢なのかな。俺は、もう何かから逃げなくてもいいのか、な……」



戦場にあるのは、それぞれの儚く強き覚悟と。失い奪われ散りゆく風花(いのち)だけ。



せめて。


せめて夢の中だけでは…………。





青年の瞳から零れ落ちる雫が、血溜まりに消えていった。



そして、少女の歌は止んだ。



8/11/2022, 12:53:19 PM

お題《麦わら帽子》



坂道の上から彼女の明るい声が降ってくる。


木漏れ陽が揺れる。



「――――」



大きな麦わら帽子の青いリボンが風にはためく。


彼女は、僕に向かって麦わら帽子を投げた。――それは彼女の宝もの。





「えいちゃん、ありがとうね。大事にするから」




はじめて告白した日、大輪の花火が夜空を彩って。



はじめてのデートは水族館。虹色の魚をふたりで、いつまでも見ていた――。



帰り道頭上には夏の星座がきらめいて、彼女とはじめてのキスをした。






僕の頬が濡れているのは。



僕の手元に、麦わら帽子があるのは。






消えないこの胸の夏を追いかけて。




Next