NoName2

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10/23/2025, 3:40:58 PM

無人島に行くならば、家族に別れを告げたい。
くだらない事で笑い合える友達にも。
良くしてもらっている同僚や先輩、後輩にも。
今もう石の下で眠っているであろう恩人にも。
…俺が迷ってる間に行方を晦ましたあの人にも。
もう会えないのだから。
今から僕が行くのは、国の持っている無人島。
定期的に点検の来る無人島。
かつては、罪人の流刑地として使われていたらしい。
なら、有人島では?と思うが人がいないのを確認しているので、無人島だ。
理由は、疲れたからだ。
こんなにも恵まれているのに、疲れる事があるかって?
感じるんだよ、ここは俺の居場所じゃないって。
こんなにも恵まれているから、余計に感じる。
感じるんだ、その位置に俺は相応しくないと。
だから、来た。誰も気づかないところを終の住処にするために。と言っても、ほんの一瞬だけ。
ぼーっとしていると、船長さんが声をかける。
「着きましたよ。」
「ありがとうございます。」
「本当にいいんですね。」
「はい、もう決めました。」
小さな船の船長さんは、深く被っていた帽子を少しあげて笑った。そこにあったのは、
「昔はあんなに優柔不断だったのに、一丁前に覚悟決めちゃって。」
見覚えのある、顔だった。
「なに?そんなぽけーっとしちゃって、もしかして忘れ物した?」
かつての記憶を振り払うように思いっきり首を横に振る。こんな形で再会はしたくなかった。でも願いを叶えさせてくれたのかもしれない。
「おーい、生きてるかー?」
「ごめんなさい、ではありがとうございました。さようなら。」
「ちょっと待て。」
その人は僕のシャツの袖を弱く掴み、引っ張る。
「…返事、くれよ。」
「そんな話もありましたね。」
敬語で誤魔化すように答える、答えはあるがそれは口から出てくるのを躊躇った。
「ずっと待ってるって言っただろ?」
変わらないヘーゼルの瞳が僕の瞳孔を覗くようにこちらを見てくる。どうやら、離す気はないようだ。口内まで近づいている唾を飲み込んで、答える。
「僕も貴方の事が好きでした。さようなら。」
そういうと、その人は後ろから強く抱きしめてくる。圧と暖かさを感じる。
「気にならないのかよ、居なくなった理由。」
「気になりますよ。」
「気になったなら、この船に乗ってくれよ。」
見えやすい罠だ、敢えて乗ってあげよう。チャンスなんていくらでもあるのだから。

数年後、子育てと仕事の両立に苦戦しながらも間を縫ってここに来た。
はしゃぐ伴侶と子供達を連れて、僕の無人島へ。
景色は変わらず、手入れもされている。
ここはこれから有人島となる。
みんなの人生を豊かにしていくために、色んな経験をしてもらうために。
ああ、豊かなのに苦しい。楽しすぎて、苦しい。
ここを居場所だと主張するように、楽しさが僕を苦しめる。
でもその苦しさも、今や心地よい。
ある意味流刑地なのかもしれない、かつての心を流刑にして薄れさせるための。
なんてカッコつけて、砂浜を歩いていく。

そういや、前にこんな事を考えていたな。
無人島に行くならば、家族に別れを告げたい。
くだらない事で笑い合える友達にも。
良くしてもらっている同僚や先輩、後輩にも。
今もう石の下で眠っているであろう恩人にも。
…俺が迷ってる間に行方を晦ましたあの人にも。

今は違う。
無人島に行くならば、家族に愛を告げたい。
最近は会えない友達にも。
頼もしくて、互いに切磋琢磨し会える仕事仲間にも。
天国で酒飲みながらこちらを見てそうな恩人にも。
…こんな僕といてくれるこの人にも、子供にも。

10/20/2025, 12:59:02 PM

私達友達でいよう、ずっと。
だって、結ばれないから。
一ヶ月後、私は真っ白なチャペルの下で貴方の従兄弟と結ばれてしまう。
二ヶ月後、貴方は真っ白なチャペルの下で私の従姉妹と結ばれてしまう。
しょうがないもんね、決まっちゃったんだから。
友達でいよう、親友でいよう、恋人にはなれないまま。
くだらない事で笑い合って、クソゲーに文句を言いながら夙夜遊んで、老舗の町中華で餃子を分け合って、水族館でお揃いのイルカのペンダントを買って、とても楽しかったよ。
私は友達として、祝福してあげる。
だから友達として、祝福してほしいな。
次会うときは、親戚として、かつての親友として、よろしくね。
なぜか出る涙を笑って私は言う
「貴方は大切な私の友達だからね!」
なぜか出ている涙を拭って貴方は言う
「お前は大切な僕の友達だからな!」
そう言って、それぞれ反対方向に歩いていった。
お互い「好きだよ」なんて言えずに。

10/17/2025, 1:15:11 PM

「サラサラ〜という音が聞こえてきそうな砂時計。」
 今も聞こえてくる、最近よく聞くようになった
 落ちる途中でいつも起きちゃうけど
「砂時計には小さいものから、大きなものまであるって聞いたことがあるな!」
 目の前にあるのは自由の女神位大きいもの
「砂の色はバリエーション豊富!単色から、カラフルまで!」
 目の前にあるのは海を感じさせるブルーとオレンジ

「目の前の砂時計は、何の為にあるの?」
 重力がある事を示すためかな
「お好み焼きを作るため?」
 時間を測るためとか
「テストの制限時間を示すため?」
 ある意味あってるかもしれないね

「砂が全て下に行ったら、どうなるの?」
 しんじゃうとか
「砂が落ちる音は私の死を刻む音って事かな」
 そうかもしれない。だってもう立ってる事すら辛い
「早く落ちてる、という事は近いのかな」
 もう、なにも、考えられないや
 おねがいだから、ひっくりかえってその音をきかせて
 すなどけいの音を
 おちきるまえに、だれかひっくりかえ、して
 あとすこしで、おわっちゃう


「2025年10月6日午前3時25分45秒、○○さん。ご臨終です。」
最後の一粒が落ちて、砂時計は何も音を発さなくなった
彼女は夢を見ていた、砂時計が落ちる夢を
彼女の寿命を示すための砂時計は、もう動かない
何も言わず呆然と立ち尽くしたまま
底に艶やかな青と橙の塊を残して

10/16/2025, 12:47:02 PM

(学芸員):こんにちは、泥棒ですか?
(客):違います。
(学芸員):なら、何をしに来たんですか?
(客):展示を見に来たんです、ここには貴重な星図が期間限定で公開されていると聞きました。
(学芸員):なんでそれを知っているんですか?
(客):ここの公式Xで告知していたからです。
(学芸員):おかしいですね。私が今から投稿しようとしていた内容が、これの告知なんですよ。
(客):はい?
(学芸員):明後日から公開しようとしていました、なのに何故知っているのですか?
(客):それは、
(学芸員):泥棒ですね、通報します。
(客):いいえ、違います。運搬の現場を目撃したからです。それに、その星図は偽物です。
(学芸員):証拠はありますか?
(客):私の祖父がそれの本物を持っているからです、こちらがその写真です。
(学芸員):だから、分からなかったんですね。ご住所はどちらにありますか?
(客):教えません。
(学芸員):こう見えてもGeoGuesserが得意なんです。あと、ケイドロの泥棒側。
(客):だから何ですか?
(学芸員):明日、お伺いしますね。
(客):来ないでください。

数日後、私の家からあの星図が消えました。
きっと、あの学芸員(泥棒)さんは偽物と思ってこれとすり替えたのでしょう。
これが本物とも知らずに。
わざわざ特定しやすい写真を撮っておいて良かったですね。わざと偽物を撮ったんですよ。
今頃、あちらでは偽物が飾られている事でしょう。
そういえば、例の美術館で盗難事件があったらしいですね。犯人はまだ見つかってないとか。
他所の泥棒さんも可哀想に、偽物の星図を掴まされたなんて。
お祖父様、ようやく本物が手に入りましたよ。
これで成仏してください。

10/15/2025, 2:28:13 PM

[愛ー恋=?]

少し高いモニターに映された謎の数式。何だこれ。よく分からない。言葉遊びとかでも無さそうだし、哲学的に考えるべきなのか?愛から心を引いたら、受けるという字になるのは知ってる。
 ヤバい、これ解かないと出られない。帰省でのんびりしてたと思いきや、親に突然誘われてきたのがこんなとこだとは。おまけになんか書類にサインしちゃったし!自分は、思った外ヤバい事に巻き込まれたようだ。こんな監獄みたいなところから抜け出そう。
アイーコイ、ひとまずくっつけてヨにしよう。哲学的な事は専門外!長年テレビやYouTubeで培われてきたひらめき力が火を吹くぜー!
「あいよい、ん?」
Aiyoi、ii oya…いい親?
いい親=?
 要するにいい親って何か聞かれてるんだな!誰も見てないだろうし、思う存分話しちまうか。
「いい親は、普段は優しいけど何か悪い事しちゃった時は怒ってくれる。趣味が合って色々共有する時もあれば、合わなくて喧嘩する事ある。働き者だけど、ダラける時はとことん動かない。甘やかしは少ないけど、なんやかんや家族を思って色々してくれる。辛い時に鼓舞してくれたり、そっとしてくれたり、喜びや悲しみを分かち合う存在。まっ、うちの両親みたいなもんだな。」
 そう言い切ると近くの扉が開いた音がした、ドアノブに手をかけて押すとさっきの駐車場の景色と泣きそうになってる両親の姿が。
「あんたったら、そこまで思ってくれてたの。」
「俺に似て、良く出来た子だな!」
イマイチ状況が掴めていない。えっ、さっきの発言聞いてたって事は?
「実はね、この施設は親が子供の愛を確認する為に出来た施設なの。専用のアプリからあんたがさっきいた部屋が覗けて、あれ、もう出たから見れなくなってる。」
「何その法律スレスレかつ局所的な施設!逆バージョンもありそう。」
「あるぞ。」
「ごめんね、ちょっと気になっちゃった。」
「んだよ、そんなの…(小声)バカみたいじゃねーかよ。」
「悪い悪い!お詫びに、焼肉行くぞ!」
「ったくしょうがねーな!食べ放題な!」
…いつか絶対、逆バージョンの施設も入れてやる。まっ、そんなんしなくても、二人からの愛は十分感じてるけどな。
「どうしたのそんなボケーっとして、早く車に乗りなさいよ。」
「はいはい。」
愛から恋を引いたら、慈しみとか親心が残ったりして。そんな事を思いながら、シートベルトをしめる。少し小さい車の中で流れてる一昔前のラブソングを虚で聴きながら、さっきの問題の別解を考えてみる。

 …サプライズで来年の春、二人に紅白のカーネーションでも送ってやろ。もちろん、然る日に。

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