たーくん。

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8/18/2025, 10:20:43 PM

街灯がチカチカと点滅している静な夜道。
塾が終わり、友達と一緒に帰っていた。
途中の十字路で別れ、私一人になる。
塾を出る前、お父さんから「迎えに行こうか?」とメッセージが来てたけど、友達にお父さんを見られるのは恥ずかしいから断った。
一人になって急激に心細くなり、早足で家へ向かって歩く。
……いつからだろう?
後ろから、足音が聞こえてくる。
私と同じ方向へ歩いているだけかな?
それとも……。
いや、変なことを考えるのはやめよう。
更に、歩く速度を速める。
後ろの足音も、速くなっているような……。
地面をチラっと見ると、私の影と、もう一つ影があった。
勇気を振り絞り、立ち止まって、後ろを振り向く。
「誰!?」
「おぅわ!?」
「お父さん!?」
私の後ろにいたのは、お父さんだった。
「なんでお父さんがここに?」
「いや、その……やっぱり心配だったから、塾の近くで待っていたんだ」
「メッセージで言ったでしょ?大丈夫だから来なくていいって。もう……来てたなら声かけてくれたらよかったのに」
「いやぁ~……お前の友達が居たから声をかけづらくてな。ははは」
「変なところでシャイになるんだから……」
正直、足音の正体がお父さんでよかった。
お父さんと横に並び、一緒に歩く。
心細くて怖かったってお父さんに言ったら、調子に乗りそうだから言わないでおこう。
しばらく歩いていると、違和感を感じた。
……後ろから、足音が聞こえてくる。
おかしい。お父さんは横で歩いているはずなのに。
地面には、私とお父さんの二つの影しかない。
足音をよく聞くと、ビチャ……ビチャ……まるでずぶ濡れ状態で歩いているような音だった。
しかも、少しずつ、近づいてきている。
「お父さん」
「ん?なんだ?」
「逃げよっ!」
「お、おい!?」
私はお父さんの手を引き、家まで走った。

8/17/2025, 11:14:41 PM

脳内に響き渡るセミの声と風鈴の音。
夏に君と出会い、夏に君は亡くなった。
君は夏が大好きで、すごく暑い日でも向日葵畑を走っていたことをよく思い出す。
今でも、麦わら帽子を被って笑う君の姿が目に浮かぶ。
空を見上げると、いつもより高く見えた。
今は秋だという現実を突きつけてくる。
それでも、俺と君の夏は終わらない。
これからも、季節が変わろうとも、ずっと。
どこかに君がいる空を、しばらくの間見ていた。

8/16/2025, 11:54:54 PM

山がずらっと整列し、どこまでも続く青い空。
今日は日頃の鬱憤を晴らすため、山に登り、やまびこをしに来た。
空がいつもより近くて、まるで神様になった気分だ。
息を吸い込み、遠くの空へ向かって叫ぶ。
「たまには家事手伝いなさいよー!バカ夫ー!」
バカ夫~~!バカおっと~~……。
私の叫びが山に響き、何度かこっちへ返ってくる。
う~ん……叫ぶのって気持ちいい!
「最近物価高なのに飲みに行ってるんじゃないわよー!」
行ってるんじゃないわよ~~!わよ~~……。
それから何度か日頃の鬱憤を叫び、気分がスカッとした。
鬱憤の九割が、夫への不満。
「お前の叫びが凄すぎて、圧倒されてしまうよ」
私の叫びを隣で聞いていた夫が、苦笑いしながら言った。
「お前の負担が減るように頑張ってみるか」
「頑張るんじゃなくて、やるのよ」
「はは……厳しいなぁ。今日の家事は俺がやるよ。山登りで疲れてるだろうしな」
夫はそう言いながら、私の手を握る。
私も、夫の手を握り返す。
叫んでスッキリしたし、今日の家事は夫がやってくれるし……。
今日はとっても、清々しい気分だ。

8/15/2025, 11:06:33 PM

スマホのメッセージ画面に現れる色んな形の記号達。
私は彼氏に愛を伝えるため、メッセージを打ってたんだけど……。
「愛してる!」「大好き!」「ずっと一緒だよ!」
う~ん……ビックリマークだけだとなんか物足りない。
だから私は、ハートマークを沢山付けてメッセージを送信。
数分後、彼氏から返信が来た。
メッセージを見ると、愛の言葉と、私の倍以上のハートマークが付いている。
んもう、私よりハートマーク付けちゃって……嬉しい。キャッ☆
それから私と彼氏は、夜遅くまでハートマークの付け合い合戦をした。

8/14/2025, 11:31:11 PM

高台から海まで見える町並み。
朝日が町を照らし、一日の始まりを知らせている。
早朝だから、高台には誰もいなくて静かだ。
「はぁ……」
思わず溜め息が漏れる。
先月、彼女は交通事故で亡くなった。
打ち所が悪く、即死だったらしい。
もし、まだ生きていたら、隣には彼女が居ただろう。
朝日のように明るく笑って、俺を照らしてくれて……。
ズボンのポケットからスマホを取り出し、彼女の写真を映す。
いつも笑っていて、元気な彼女。
見ているだけで、色んな感情が込み上がってくる。
スマホを俺の顔の横に並ぶように持つ。
君には、この景色はどんな風に見える?
俺には、色がない町に見えるよ。
今まで色鮮やかだった町が、君がいなくなってモノクロになってしまった。
君が見た景色を……知りたい。
君の声が……聞きたい。
君と一緒に……もっと居たかった。
いっそのこと、君の元へ……。
いや、そんなことしたら、悲しませるだけだ。
君の分まで、頑張って生きて見せるよ。
俺は彼女の写真と一緒に、モノクロの町をしばらくの間ずっと見ていた。

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