「好きだ」その一言が言えない。
告白は向こうからだった。
キスも、手を繋ぐのも、休日の約束も、全部あいつから。
私はいつも頷くだけ。
告白の返事も「わかった」で済ませた。
好きだ、なんて言ったことがない。
言葉にすると、重くて
自分が自分で無くなってしまいそうで
それでもホープは今日も満足そうに隣にいる。
こんなにも大切なのに
私はずっと受け取るだけだった。
「なぁ、ホープ」
呼びかける声が少し掠れる。
服の袖を摘んだ指先が、ほんの少し震える。
らしくない。
本当に、らしくない。
喉の奥で何度も引っかかってきた言葉を、
今日は逃がさない。
「愛してる」
好き、じゃ足りなかった。
あいつが驚いて、すぐに笑う。
その顔を見て、やっとわかる。
これが、私の“伝えたかったこと”。
タイムカプセルの中で目を瞑る
本当はブーニベルゼなんてどうでもいい
人類なんてクリスタルなんてどうでもいい
貴方に会えるのなら神の僕にでもなる
ただ、僕は貴方に会いたい
1000年後の僕はあなたに会えていますか
1000年先もあなたを愛している
《1000先も》
何度、想像しただろうか
成長した僕が貴方の身長を追い込した時
僕は胸に沢山の花束を抱いて
あなたに想いを告げる
薔薇でもガーベラでもない勿忘草の花束を
会いたい
1人の男の呟きは誰にも届かない
《勿忘草》真実の愛
エクレールの中には空白がある。誰に言われた訳でもない、そんな気がするだけ。
その訳のわからない空白の中身を探す為に各所様々な場所へ行った。旅から旅。電車を適当に乗り継いで、今回は一面緑色であるこの場所に辿りつく。
風に乗って葉っぱと土の匂いがエクレールの背中を押す
誰かが待っている。早く行け。と
あてもなく歩いていると、道の脇に生えている木の下に座り込む銀色の髪の青年。俯いていて表情が見えない。体調が悪いのか、と思い声を掛けた。
「どうした。体調が悪いのか」
声をかけると驚いたのか、勢いよく顔を上げた。
エメラルドグリーンの瞳。宝石のようにキラキラと輝いて見える。
「‥‥いきなり声を掛けて悪かったな。そんなところで座り込んで、何か困り事か?」
自分の顔を見て固まっている青年に問いかける。
「あっ、あぁ、気にかけて頂きありがとうございます。何となく、ここまで歩いて来てしまって。少し歩き疲れてしまったので休憩中で」
「何事も無くて良かった。すまないが、一つ聞いて良いか。」
「僕に答えられることならば」
「ここには何がある。」
「その昔、女神のような存在が人々の魂を救済して回ったとか。噂程度ですが、そんなお伽話があるくらいで他には何も無いですよ。」
「教えてくれてありがとう。そうか。何故かこの先に進まないと行けない気がしてな。もう少し歩いてみるよ」
じゃあ、と手を振り歩き出そうとした瞬間、手首を掴まれる。
振り返ると青年は俯いていた。震える声で問いかけられる。
「あの、僕のこと、覚えていませんか」
その一言を聞いて理由もわからないままエクレールの心臓が大きな音を立てた。
《旅路の果てに》
きっかけは些細な言い合いだった
あなたはいつもそうだ。無茶して怪我して挙げ句の果てに、自分の身体だから口出すなと。わかってますよ。傷つこうが動かなくなろうが、あなたの身体ですし勝手です。それを止める権利すら僕に頂けないですか。こんなに貴方のことを想っているのに、いつも僕の一方通行です。
そういってホープは医務室を出て行った。
やってしまった、と額に手をやるライトニング。徹夜が続きおまけに任務明けでかなり疲れていた。情けなくも縫合を必要とするほどの怪我を負ってしまい、心配し駆けつけたホープに説教をされ、つい言い返してしまった。追いかけないと。
縫合した腕を庇いながらベッドを降りる。追いかけてどうする?謝る?
立ち止まるライトニング。もう一度ベッドに腰をかける。自分の心のようにギシッとベッドが鳴る。
何故ホープは怒っていた?表情は?
もう一度思い出す。
言わないと。私は、ホープに自分の気持ちを伝えていない。口出すなと怒っていただけだ。
勢いよくベッドを降り、痛む腕を庇うこともせず走る。ホープの背中が見えた。
ホープ!!!
驚いた顔で振り向くホープは待って、とライトニングを静止する。
そんなことを構うこともなくホープの腕を掴み壁側に寄せる。
すまない、勢いが強すぎた
まって、ライトさん、血が
それは後でいい。いいか、よく聞け。
さっきはすまなかった。
心配してくれていたのに、口を出すなと言ってしまった。
‥‥‥え?
本心ではないんだ。だが疲れで少し気が立っていた。心配してくれてありがとう。
そんなことを言いに血を流しながら走って来たんですか?
そんなこととは何だ!こっちは真剣に、
ライトニングの言葉はホープの笑い声に遮られる
もう、貴方は本当にめちゃくちゃだ。
もう一つ、言わないといけないことがある!
ずいっと顔を近づけるライトニング。
うーん、キスしたくなっちゃうんで離れてもらっていいですか?
ホープは胸ぐらを掴まれたままピンクに色付いたライトニングの頬をするりと撫でる
き、キスだと、、と狼狽えるながらも良いから黙って聞けとホープを睨む。
お前、自分の一方通行だと言ったな。
そうですね
一方通行ではない。と囁くような小さい声。それでもその言葉はホープの耳まではっきりと届く。
これでも、わたしもお前のことを想っている。物凄くだ。だから、一方通行だとか、言うな。
やっと掴んでいた胸ぐらを外してくれたライトニングをぎゅうっと力強く抱きしめる。
滲んできた血を見て我に帰りライトニングを抱え廊下を走るのはもう少し後のお話。
《(この想い)あなたに届けたい》