冬の足音
やけに顔がつっぱる
化粧水
乳液
保湿
これ一本でOKじゃ…
もしやスキンセンサー発動ってこと?
冬の足音にはいち早く反応するからね
オールインワンのボトルをまたプッシュ
今日はこれでもう3回目
塗っても塗ってもまだ足りない
あー限界かも そろそろ冬用に変えなきゃ
贈り物の中身
倹約家の母は交際費に頭を悩ましていた
何かで経費節減
そこで工夫出来るのはお歳暮お中元だと考えていたらしく頂き物は開けてはならないと子供達に言い渡していた
つまり我が家を経由して他家への贈り物に変身させるために
そう選択肢のない時代で包装紙と透けて見える箱からおおよその中身は察しがつくらしかった
砂糖 調味料 鰹節たまにカルピス
儀礼的に物だけが行ったり来たり
---------
時が過ぎ時代が変わった
自分が大人になり贈る側になった
私は必ず頂き物は開けお礼と共に感想を添える
それは物と一緒に気持ちも受け取った表れ
特にお中元お歳暮は日頃お世話になっている方々に喜んでもらいたいと一層贈り物の中身にこだわる
膨大な情報の中から悩み悩み一品を選ぶ
なんの反応もない時には好みじゃなかったと判断して次回には違うものを苦心してまた贈る
出費を伴うこの1年に2回の慣習を儀礼的に終わらせたくない 強い思いで何十年も続けてきた
目を悪くしたこともあり近年それは楽しみから苦行にかわりつつある
それでも初心忘るべからずだ!と自分に喝を入れ 今日もぼやけるお歳暮リストを前に頑張っている
一軒ずつ中身を変え想いを添えた我家の贈り物
凍てつく星空
本格的な寒さが到来した
キーンと張りつめた大気の中で
星が小さく身震いした
3日前に亡くなったおばちゃんかしら
温めてあげるね
空に向かってハーと長く息を吹きかける
曇りガラス一枚分の温もりは
目の前でふんわり広がり散り散りになった
星空よもっと近づいて
私の息がかかるところまで
寄り添ってギュウしたい
お星になった大切な顔が沢山見えるの今夜は
君と紡ぐ物語
どうしてここに来てるかって?
無趣味だとぼやいたらこんな場があるよって友達が教えてくれたの
まあ自分で言うのもなんだけど飽き性には自信があるんだよね
自信って言葉の使い方が間違ってるって
うんそうかも…でも敢えて使っちゃう
半世紀以上生きてきて99%一週間以内に放り出すのは実証済みだから
今日のお題は 君と紡ぐ物語か
紡ぐ…なが〜い時間かかりそう
物語…絶対無理 プロットは思いついても
伏線回収できずに投げちゃうなきっと
一年前の自分のぼやきが聞こえてきた
そんな私がどうしてここに通い続けているかって?
それはね認知症っぽい恐怖と戦うためによ
最近記憶がとんじゃうことがあってね
私が消えてるのに私は存在してるってどういう事??
その間は君が何食わぬ顔で私を語っているんじゃないかと…でもねまだ疑心暗鬼なんだ
それでここを利用して一日の終わりに私と君の答え合わせをしてるってわけ
君が紡ぐ物語には私の記憶が確かに綴られているか
私の身体が君に乗っ取られないよう毎日見届けるためにね
心の深呼吸
「はい息を深く吸ってー」
「吐いて止める」
私得意なんだ腹式呼吸
技師さんからほめられそう ふふん
キンキングォーン ガガガグワッ
Domeの中は騒がしい
ヘッドホン越しの金属音がまるで工事現場だ
でも騒音を除けば痛くも痒くもない
私?どこで何してるって?
ただDomeのなかで仰向けになってるだけ
輪切り画像撮影してるのよお腹のね
胴体真っ二つどころかいくつ切ってるんだか
つまりMRIの最中よ
脳じゃないってばお腹
なんかね…再検査なんだ
ちょっとだけ心の深呼吸がいるかも今の私
ドキドキ上手くいかない鎮まれ鎮まれこの心臓
妄想おしゃべりでもしてリラックスしなきゃね
ってなわけで…只今心の深呼吸中