枯葉が落ちていた。
いつもの散歩道を歩いていたら、枯葉が落ちていた。
枯葉が落ちたら、落ち葉といった方が正しいか?
と思いながら、目の前のそれを何となくつまみ上げる。
子どもの頃は気にも留めていなかった枯葉を気にかけるなんて、自分は大人になったんだなと感慨に耽りながらそれを眺める。冬の風物詩である枯葉は、その寒さに耐え切ったかのような表情で茶色に染まり上がっていた。
その姿に「お見事」という言葉が心の中で溢れた。
いい色だ。この色はそう、牛丼。牛丼と同じ色だ。
肉と玉ねぎがつゆで染まり上がり、味が染み込んだ
あの色。
彩り豊かとはいえない、しかし食欲がそそられる
あの色。
そうだ、お昼は牛丼にしよう。どうせならカレーも
追加して思いきり茶色い牛丼にしよう。
そうだ そうしよう。と枯葉を片手に散歩道を歩み進める
日曜日の朝。
【スノー】と曇った窓ガラスに誰かが書いたらしい。
14回目の冬、放課後の教室。
外と中の温度差からできたちょっとした黒板に思い思いの文字が散らかる中、ぽつんと端に書かれたそれが目に入った。
その書き込みの下に【↑Snowな】とお節介な誰かの指摘。そういえば昨日の宿題の中にあったな、とぼんやりと帰り支度をしながら教室を見渡した。
自然の黒板に飽きた子達は、部活へ家へと捌けていく。
こっそり窓ガラスに近づいて指摘に手を加える。
「n」を「h」にし、「な」をかき消してみた。
【↑Show⬛︎】
思いついた悪戯書きにちょっとした満足感を覚えて、出来上がった四角を覗いてみる。
真っ白なスノーに飾られた世界。
まだ冬は止みそうにない。
どうしても…どうしても…許せなかった。
だってずるい。あの子はテキトーに生きているのに、ただ人懐っこいだけで、こんなに真面目に生きてる私が、選ばれないなんて、バカみたいじゃないか。
一瞬の妬みが私を動かした。
ほんの冗談のつもりだった。悲しませるつもりはなかった。…悲しませたかった。
(「生まれてこなければ良かったのにね」)
あの子はどんな顔していただろう。
生きる意味を考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えていた。
生まれちゃったもんなぁ。仕方ないよなぁ。
でもなぁ、天寿を全うするまで生きていくのに、
この先の人生あまりにも長すぎるよなぁ…。
とブランコを漕ぎながらぼんやりと星空を見上げた。
やっぱり公共の場じゃまずいかなぁ…と右手の縄を
握りしめながら、そこら辺の木に視線を移した。
すると、公園の入り口辺りでドサッという音が聞こえ振り返ってみると、女子高生らしき子が不自然に地面に伏せていた。どうやら転んだらしい。手を貸した方がいいかという心配より先に、女子高生のスカートが捲れているのを認識してしまい、動くことができなかった。
すぐさま立ち上がった女子高生は、恥ずかしそうに周りをキョロキョロと見渡し、こちらの存在に気づくと顔を真っ赤にして走っていった。
女子高生の足音が遠のくのを耳に、1人深呼吸をした。
うん、こういう事があるから生きているんだな。不純な動機ほど、物事の成長や継続に欠かせないもんな。
よし、明日も頑張ろう。
とブランコから腰を上げ、再び星空を見上げながら、これから先、さっきみたいなことがどれだけ起こるだろうかと縄をポケットに突っ込み、帰宅路についた。
今日の心模様はいかがでしたか?
え、最悪だった?それはいけませんね。
何か心安らぐもので癒されましょう。
そうですね、手始めに美味しいディナーを召し上がっていただいて、その後はのんびりハーブティーを飲みながら子猫の動画鑑賞。ドルチェも用意しましょう。
食休めをしたら、香りのいいバスボムを入れたお風呂にゆっくり浸かって今日の疲れを洗い流しましょう。
そして、ふかふかのベッドに包まれてぐっすり眠りましょう。
あなたは今日もよくがんばりました。
たまには、肩の力を抜いて自分を甘やかしましょう。
そうしましたら、明日のランチは、
牛丼特盛温泉たまご付きを食べましょう。