お題『静かな終わり』
私はあなたのところから去った。
最初は大好きだった。ずっとそばに居たかった。もっと話したかった。
今は?
あなた以外のことを気にかける時間が増えた。あなたのそばにいなくても、平気になった。話さなくても、伝わると思った。
こうやって静かに終わっていく。
さよならをする時が来た。
さよならすら、したつもりも無いまま、そっと消えていく。雪が上から降るから、足跡が残らないように。
お題『祈りを捧げて』
どうか、星よ、月よ、太陽よ。
空に浮かぶ動物や、偉人たち。
聞き入れてください。
阿呆で、間抜けで、傲慢で、尊大なわたしの祈りを。
お願いします、明日、どうかあの人が泣かない日を。
あなた達の、精一杯の祝福を与えてください。
幸福ではありません。祝福です。
明日私が泣いても良いから、あの人だけは、明日1日だけでも、世界の祝福を全て受けて欲しい。
それがわたしの呪いです。
お題『星になる』
あのいちばん綺麗な星に、名前をつける。
きみの名前をつける。
きっと、あれにきみの名前を。あの星に既に、皆が呼ぶような名前があったとしても、ぼくは、きみの名前であの星を指さす。
星はいつか死ぬ。
きみもいつか死ぬ。
少しでも、君の名前を長く呼びたい。
少しでも多く、君の名前を呼びたい。
そうして、星になる。
お題『手放した時間』
手の中の懐中時計がカチ、カチ、と鳴いていた。
私は待っていた。来ないあなたを。とっくにティーカップの中身だったはずのレモンティーは消えて、カップの底に咲くバラは柔らかい赤色を見せている。
暖かな装いをした人々が、靴底を少しずつ減らしながら、忙しなく歩みを進めていく。どこかへ行く彼らを横目に、私は座って、待っていた。今の時間、出来たことが。やりたかったことがあったよなあとぼんやり考え込む。
今の時間でもう少しメイクを凝ることが出来た。
今の時間で、ニュース見られたなとか。
手羽した時間は戻ってこない。本当に、戻ってこない。
私が決めたことかと言われたら、そうだ。待つ選択をしたのも、しないことを選択したのも私だ。
貴方を思う時間は決して嫌ではない。
でも、貴方が私を考えていた時間が少ないのは、悲しい。
お題『祈りの果て』
私たちが手のひらを合わせたり、指をおり、「どうか」と祈り続けたその先には何があるだろう。
祈りとは、私たちの刃だ。それは私たちを脅す。
歩けと。私たちの勝手な願いで、きみは傷つきながら歩くのだ