G14(3日に一度更新)

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11/9/2023, 9:21:36 AM

「はい、かれこれ10年間、こうして意味がないことをしております」
 楽しそうに語る彼は、トイレの便座に釣り糸を垂らしている。
 私は、世にも奇妙な意味がないことをしている男がいるときき、インタビューをするため山奥の病院までやってきた。
 彼は噂に違わぬ、意味の無さである

「子供の頃本で読んでからずっと頭に残っていたのです」
 そう言って、垂らした釣り糸を見る。
「なんの本なのかもう覚えていません。作者が知り合いの医師から、精神病院では釣りをする患者がいることを聞いたそうです」
「それを真似たのですか?」
「ええ。ですが、面白いのはここからです。
 ある時、担当の医師が“釣れますか”と聞いたところ、“トイレで釣れるわけがないでしょう”と返していました。
 患者は釣れないと分かってて釣りをしていたのです」

「世の中色んな人がいますね。しかし、その人は実在するのでしょうか?」
「そこまでは分かりません。
 でも子供の頃の私は感銘を受けました。人は自由なのだ、と。
 私も自由な人間で在りたいと思い、こうしてトイレで釣りをしています」
「なるほど。私もその気持ちは分かります」
 私は彼が羨ましい。
 私も自由な人間になりたかった。
 しかし現実は厳しく、こうして不自由な人間になってしまった

「私は死ぬまで意味がないことをすることにしました。人生は夢のようなもので、全て意味がないものですから」
「なるほど。深いお言葉です。とても有意義な時間でした。‥あれ、釣り竿引いてますよ」
「馬鹿な。釣れるはずがっ」
 彼は驚いて立ち上がろうとすると、服に釣り竿が引っかかる。
 その勢いで釣り竿が跳ね上がり、獲物が釣り上がった。
 そこにあったのは、一匹のドジョウであった。

 近くにいた病院の職員が、それを見て驚く。
「こいつは‥十年前からこの便器のつまりの原因が分からなかったのですが、コイツが犯人だったんですね」
 職員は彼の方を見る。
「十年間、あなたはつまりを直そうとしてくれてたんですね。我々は、あなたを勘違いしてました。職員を代表してお詫びいたします」
 職員は綺麗な謝罪のお辞儀をした。おそらく本心なのだろう。

 しかし彼の顔は絶望に染まっていた
 無理もない
 なぜなら彼が続けてきた意味がないことが、ここに来て意味を持ち、彼の十年間が意味がないことになってしまったのだから。

11/8/2023, 9:28:59 AM

 あなたとわたし
 一卵性双生児で生まれた瓜二つの美人姉妹
 親も見分けがつかなかった。
 生まれたときから、どこでも一緒で、趣味も一緒だった

 高校生になってからは、少し離れることが多くなった
 お姉ちゃんは運動部、私は文化部
 でも時間があればいつも一緒だったよね

 けれど、私に彼氏ができてから変わってしまった
 なんだかお姉ちゃん、よそよそしくなった
 私は寂しかったけど、我慢した。
 いい大人だから、一緒にいるわけにはいかないから
 でも心はずっと一緒だったよ

 だけど今のお姉ちゃん怖いよ
 お姉ちゃん、前の優しいお姉ちゃんに戻ってよ

―――――――――――――――――――――――――

 私は一気にまくし立てる間、お姉ちゃんはずっと目を閉じていた
 息継ぎも忘れて喋ったため、呼吸が荒くなる

 するとお姉ちゃんは、閉じていた目を開けて、厳かに告げた

「言いたいことは以上か。じゃあ続けようか」
「まって、こんなのおかしいって」
「じゃかあしい。ダイエットしないと彼氏に嫌われるって言ったのあんただろ」
「僻み入ってるでしょ」
「当たり前だ。先に彼氏作りやがって。だいたい彼氏優先したのお前のほうだろ。腕立て伏せ、もうワンセットだ。始めろ」

11/7/2023, 9:50:42 AM

 雨の中を歩いていた。
 折りたたみ傘を持っていたが、使う気はなかった。
 あまり雨が強くないというのもあるが、そんな気分ではないのが大きい。

 大好きな恋人と喧嘩して別れた。
 原因は向こうの浮気。
 裏切られたという事実は私を打ちのめした。

 雨が降ってきても、傘を出す気力が湧かなかった。
 土砂降りであれば、いっそ清々しくなるのだろうが、ずっと弱い雨だった。
 濡れるか濡れないかというような、柔らかい雨。
 もしかしたら雨が慰めてくれてるのかもしれない。
 
 おせっかいと感じるが、きっと気の所為なのだろう。
 だけどそんな考えに至ってしまった自分に、ちょっとだけおかしくて笑ってしまった。

 気がつくと雨は止んでいた。
 雲の切れ間から陽の光が差し込み、大きな虹が架かっていた。
 あまりのおせっかぶりに、おかしくなってしまう。
 そして晴れていく空のように、私の気持ちも晴れ渡っていく。

 新しい恋を頑張ろう。
 そう思うのだった。

11/6/2023, 9:29:07 AM



 夜、街を歩いていると空の方に一筋の光のようなものが見えた。
 なにかと思い、空を見上げてみると光の筋がまた見える
 流れ星だった

 それを見て、願い事をしようとして、やめた。
 願い事をとっさに思いつかないのもあるが、そんな年でもない。
 そう思っていると、また流れ星が光る。
 なんだか流れる星が、願い事を催促してるような錯覚を覚える
 また流れ星。
 段々願い事をしないことが悪いことのような気がしてきた。
 そこまで言うならと、願い事を考えると、叶えて欲しい願い事がたくさん思い付く。
 色々考えてふとイタズラを思いつく。
 ワクワクしながら、流れ星を待つ。

 そして流れ星を発見し、すかさず願い事をする
「流れ星を沢山ください」
 そして星空を眺めるが、何も起こらなかった。
 まあそうだよな。
 そう思って歩き出そうとすると、空のほうが明るくなる。
 慌てて空を見ると、その景色に驚く。
「まさか本当に願いが叶うとは」
 惜しいことをしたと想いながら、星空を埋め尽くした流れ星をずっと眺めていた。
 

11/5/2023, 8:30:57 AM

「やった完成だ」
「博士、何ができたのですか」
「助手か。見てくれ。これが哀愁をそそるサソリだ」
「哀愁をそそるサソリですって!?」
「色々な角度で見るといい」
「本当だ。どの角度からも哀愁をそそられます」
「フハハハ。どうだ天才だろう」
「天才です。博士は世界一天才です」
「そうだろうそうだろう。フハハハ。はあ、虚しい」

 博士は近くにあった椅子に座る
「こんなもの作って何になるというのか」
 男はがっくりと肩を落とす。
「いえどこかに需要ありますって。多分」
 助手は博士を励ますが、言い切ることはできなかった。
「諦めてはいけません。足掻きましょう」
「助手よ。若いな」
「いけません、博士。諦めたらそこで試合終了です」
「無理だよ」
「大丈夫です。私がついてますから、さあ行きましょう」

 そして部屋にはサソリ以外誰もいなくなった。
 サソリは静かになった部屋で、自分の存在意義を考えてようとして、やめた。
 何度か考えたが、意味がないとしか思えなかったからだ。
 
 サソリは世界が赤く染まっていることに気がついた。
 ケースの周囲を見渡して、夕日を見つける。
 そしてサソリはずっと夕日を眺めていた。
 夕日が沈むまで、ずっと。




ps
 哀愁をそそるってどういう意味なんですかね。
 だれか教えて欲しい

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