「うわ、寒っ」
仕事終わりに恋人と待ち合わせ。
彼女が車で迎えに来てくれるっていうので、待ち合わせ場所に走って向かった。
頬に当たる風が冷たくて痛みを感じる。もしかしたら雪でも降るのかもしれない。
それくらいの寒さだった。
角を曲がると待ち合わせの駐車場だから足元に気をつけながら曲がると車のそばに彼女が立っていた。
「ちょ!?」
うっかり出した声に彼女が反応して、俺に笑顔を向けてくれた。
色素が薄い上に、白や水色をメインに服を選ぶ彼女だから冬の精霊みたいでドキッと胸が高鳴る。
「なんで外に出てるのー?」
「え、早く会いたいからです」
当たり前のように言う彼女。
確かにコートは着ているけど、どう見たって寒いのに。
俺は彼女の手を取ると冷たくてびっくりした。
「冷たっ!」
「え、そうですか?」
俺は彼女の両手を取って口元に寄せてハアと息をかける。
「うふふ、暖かいです」
体温を分けたくて、しっかり手を覆った。
あ、でもダメだ。
「ねえ、俺が運転する。キー貸して」
こんな寒いところに居て、指先がこれだけ冷たいんだから身体だって冷えているでしょ。
暖かいところにさっさと向かおう。
おわり
五七二、凍える指先
暖かい日がまだある中で、一気に寒くなる日が繰り返される。
こんなに寒暖の差が激しくなると体調を崩し安くなってしまう。
年末年始の病院は毎年人手が足りなくなるから、休みを取るのは難しい。
だから忙しい時期を過ぎてから恋人と癒し旅行にら行くことを計画していた。
ぼんやりと空を仰ぐ。
白い吐息が立ち、俺の視界をぼかしてはクリアになる。
都会だと雪原を見ることもないから、そういうところに行きたいかも。
運動もできるからスキーやスノボを楽しみに行ってもいいな。
でも雪が降るところで温泉に浸かるのもいいな。
今日、帰ったら恋人に相談しよう。
おわり
五七一、雪原の先へ
「見てくださいー!」
前を歩いている恋人が振り向く。
寒空の中、寒さで頬を赤らめつつ息を吐いた。
「息が白くなってますー!」
目を輝かせて無邪気に笑っている彼女が愛らしくて自然と表情が緩んでしまう。
本当に可愛くて愛しいね。
おわり
五七〇、白い吐息
きらめく街並みの中には、大好きな恋人が命懸けで人を助けに行っている。
彼は優しくて太陽のような笑顔をくれる救急隊員さん。
この都市は眠らない街だから、昼夜問わずに誰かが助けを求めている。そんな人たちを助けたいって手を振ってくれた。
彼の背中はとても頼もしい。
危険なことはして欲しくない気持ちはあるけれど、それでも彼の背中に誇りを感じて。
やっぱり好きだな。
って思ってしまう。
だからこそ、一緒にいる時はめいっぱい甘やかすんだ。
きらめく街並みのどこかに、彼がいる。
おわり
五六九、消えない灯り
夜勤の中、一段落ついて廊下を歩いていた。
疲労も出てきたから、目を覚まそうと飲みものを買おう。
窓から外を見ると、夜景の中にたくさんの照明がキラキラ輝いている。
ここは都会のど真ん中にある大きな病院だから、この都市を見下ろしていた。
と、言っても高層ビルが近くにあるものだから、この病院も見下ろされているんだけどね。
もっと高いところから見える景色であれば、ジュエリーボックスのような夜景ってやつになるのにな。
このキラキラとした都市の中には、気になる彼女もいる。
俺の手で届く限り手を差し伸べていきたい。
そんなことを思いながら、自販機で買った飲みものを口に含んだ。
おわり
五六八、きらめく街並み