John Doe(短編小説)

Open App
7/1/2023, 10:51:38 AM

クラス


画面の向こうで悪の軍団が行進している
『悲惨な歴史を繰り返さないように』
先生は生徒たちに向かってそう言った
誰も真面目に聞いちゃいない
そんなことよりヤりたいだけだ

誰かが僕の机に落書きをした
もう学校に来て欲しくないらしい
ずぶ濡れの上履きが気持ち悪くて仕方ない
誰かの笑い声が聞こえてきた
今すぐにでも帰りたくなった

悪の軍団は真っ黒な軍服が似合う
僕も小遣いで黒いコートを買った
ポケットがたくさんついてるヤツだ
ナイフを忍ばせておくにはちょうどいい
ハーケンクロイツに敬礼する

いつもと同じ時間に起きた
通学カバンの中には教科書は入っていない
コートをはおりサングラスをかけタバコを吸う
そのまま教室まで歩いていく
途中で何人かとすれ違ったけど無視をした

授業開始前に教室に入る
クズどもが一斉に僕を見る
カバンから秘密兵器を、ポケットからはナイフを。
どうした?いつもみたいに笑えよ。
誰一人笑っていない。僕だけを除いて。

7/1/2023, 12:57:03 AM

拝啓、おかあさん


逃げ出すことだってできたんだ
船に乗って別の国に移り住むこともできた
でも、私たちはそうしなかったのは
この小さな島でしか生き方を知らなかったから

敵の艦砲射撃も、空襲も恐れてはならない
戦いに勝てばまたいつもの日常がやってくるから
兵隊さんは恐ろしい敵と戦っているのだ
彼らに敬意を払い、陛下の旗を振る
あまりにも多くの犠牲者がでても
私たちが死んでしまったとしても
この島を、国を守らなければと
学校ではそう教わった

ひとり、またひとりと命を落としていく
それは敵も同じことだった
いつか本で読んだ外国のお話
少女が夢の国へと迷い込んでしまう話
でも、私の前にウサギは現れてくれない
トランプの兵隊なら死体になって転がっている
私は夢を見ているのだろうか
死んでしまえば、この悪夢から覚めるのだろうか
校庭には死んだ友達が楽しそうに遊んでいる
私もそこに行けるだろうか
ここが地獄なら、きっと向こうは天国のはず

ふと、お母さんに会いたくなった
声が懐かしくなった
匂いが懐かしくなった
お母さん。
生きているなら会いたくなった

6/28/2023, 11:58:44 AM

15の夏


15の夏、私は大人になった
意味のない理由ならいくらでもある
学校に居場所がなかったから
クラスの皆と私は違ったから
そんな心の閉塞感から逃げたくて
酒と大人の男に手を出した

けだるい夏の雨の下で
不登校になった私は酒ばかり飲んでいた
気がつけば夏休みに入っていたけど
どうでもいいことだった
幼稚な私は自分の将来に何の興味もなかった
愛を知りたくて、知らない男と交わった

15の夏
それは私がみんなより早く大人になった季節
家族のことなんてどうでもよかった
一人前の大人になったのだから
サイレンの音に吐き気がした
男はどうなったか知らない
私は入院した
病室の窓から入道雲を見た
私の身体に新しい命が芽生えたのを聞いた
少しも嬉しくなかった

15の夏、私は大人になったと同時に
自分自身を廃人にした。

6/27/2023, 11:04:06 PM

非常口


いい加減にしてくれ
僕はもう疲れてしまったんだ
時計は止まってしまったんだ
意味をなくしてしまったんだ
答えを見失ってしまったんだ
両手は拘束されている
心は壊れかけている
何もかも手遅れなんだ
光が見えるけど希望の光じゃない
僕には分かる
非常階段に続く終わりへの扉が

すべてを終わらせて欲しい
解放されたい
無菌室に閉じ込められている
早くここから出して欲しい
髪の毛がまた抜けた
僕の身体はもう元に戻らない
誰にも会えない
こんな地獄はもうたくさんだ

6/26/2023, 12:01:02 AM

ヘリコプター


ビルの屋上に立って空に向かって腕を伸ばす
ほらプロペラの飛行音が聞こえてくる
私のヘリコプターが迎えに来たんだ
迎えに来たんだ
迎えに来たんだ

残念ながらここに神様はいなかったようだ
あるのは瓦礫のような薄暗い町だけ
雲の間からヘリコプターが降りてくる
降りてくる
降りてくる

さっきファーストフードで昼食を食べた
私の好物のチーズバーガーを二つ食べたの
私はヘリコプターに乗って上昇していく
上昇していく
上昇していく

相変わらず空は曇ったままだった
パイロットは無表情で操縦している
飛行音が絶えずリズムを奏でている
バ バ バ バ バ
バ バ バ バ バ

空のどこかには神様がいるかもしれない
どうでもいいことだ
私が向かう場所にそれは必要ないもの。

Next