クラス
画面の向こうで悪の軍団が行進している
『悲惨な歴史を繰り返さないように』
先生は生徒たちに向かってそう言った
誰も真面目に聞いちゃいない
そんなことよりヤりたいだけだ
誰かが僕の机に落書きをした
もう学校に来て欲しくないらしい
ずぶ濡れの上履きが気持ち悪くて仕方ない
誰かの笑い声が聞こえてきた
今すぐにでも帰りたくなった
悪の軍団は真っ黒な軍服が似合う
僕も小遣いで黒いコートを買った
ポケットがたくさんついてるヤツだ
ナイフを忍ばせておくにはちょうどいい
ハーケンクロイツに敬礼する
いつもと同じ時間に起きた
通学カバンの中には教科書は入っていない
コートをはおりサングラスをかけタバコを吸う
そのまま教室まで歩いていく
途中で何人かとすれ違ったけど無視をした
授業開始前に教室に入る
クズどもが一斉に僕を見る
カバンから秘密兵器を、ポケットからはナイフを。
どうした?いつもみたいに笑えよ。
誰一人笑っていない。僕だけを除いて。
拝啓、おかあさん
逃げ出すことだってできたんだ
船に乗って別の国に移り住むこともできた
でも、私たちはそうしなかったのは
この小さな島でしか生き方を知らなかったから
敵の艦砲射撃も、空襲も恐れてはならない
戦いに勝てばまたいつもの日常がやってくるから
兵隊さんは恐ろしい敵と戦っているのだ
彼らに敬意を払い、陛下の旗を振る
あまりにも多くの犠牲者がでても
私たちが死んでしまったとしても
この島を、国を守らなければと
学校ではそう教わった
ひとり、またひとりと命を落としていく
それは敵も同じことだった
いつか本で読んだ外国のお話
少女が夢の国へと迷い込んでしまう話
でも、私の前にウサギは現れてくれない
トランプの兵隊なら死体になって転がっている
私は夢を見ているのだろうか
死んでしまえば、この悪夢から覚めるのだろうか
校庭には死んだ友達が楽しそうに遊んでいる
私もそこに行けるだろうか
ここが地獄なら、きっと向こうは天国のはず
ふと、お母さんに会いたくなった
声が懐かしくなった
匂いが懐かしくなった
お母さん。
生きているなら会いたくなった
15の夏
15の夏、私は大人になった
意味のない理由ならいくらでもある
学校に居場所がなかったから
クラスの皆と私は違ったから
そんな心の閉塞感から逃げたくて
酒と大人の男に手を出した
けだるい夏の雨の下で
不登校になった私は酒ばかり飲んでいた
気がつけば夏休みに入っていたけど
どうでもいいことだった
幼稚な私は自分の将来に何の興味もなかった
愛を知りたくて、知らない男と交わった
15の夏
それは私がみんなより早く大人になった季節
家族のことなんてどうでもよかった
一人前の大人になったのだから
サイレンの音に吐き気がした
男はどうなったか知らない
私は入院した
病室の窓から入道雲を見た
私の身体に新しい命が芽生えたのを聞いた
少しも嬉しくなかった
15の夏、私は大人になったと同時に
自分自身を廃人にした。
非常口
いい加減にしてくれ
僕はもう疲れてしまったんだ
時計は止まってしまったんだ
意味をなくしてしまったんだ
答えを見失ってしまったんだ
両手は拘束されている
心は壊れかけている
何もかも手遅れなんだ
光が見えるけど希望の光じゃない
僕には分かる
非常階段に続く終わりへの扉が
すべてを終わらせて欲しい
解放されたい
無菌室に閉じ込められている
早くここから出して欲しい
髪の毛がまた抜けた
僕の身体はもう元に戻らない
誰にも会えない
こんな地獄はもうたくさんだ
ヘリコプター
ビルの屋上に立って空に向かって腕を伸ばす
ほらプロペラの飛行音が聞こえてくる
私のヘリコプターが迎えに来たんだ
迎えに来たんだ
迎えに来たんだ
残念ながらここに神様はいなかったようだ
あるのは瓦礫のような薄暗い町だけ
雲の間からヘリコプターが降りてくる
降りてくる
降りてくる
さっきファーストフードで昼食を食べた
私の好物のチーズバーガーを二つ食べたの
私はヘリコプターに乗って上昇していく
上昇していく
上昇していく
相変わらず空は曇ったままだった
パイロットは無表情で操縦している
飛行音が絶えずリズムを奏でている
バ バ バ バ バ
バ バ バ バ バ
空のどこかには神様がいるかもしれない
どうでもいいことだ
私が向かう場所にそれは必要ないもの。