川柳えむ

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3/4/2024, 10:30:42 PM

 大好きな君の為に、何だってしてあげたい。
 甘やかし過ぎかもしれない。だけど、それだけ大好きなんだ。
 今日も晩ご飯を用意して、君の帰りを待つ。

「やめてよ」
 君に言われた。
 なんで。どうして。もしかして晩ご飯失敗してる?
「いつもいつもそんなことして」
 もしかして、本当はいつも不味くて、不快にしていたのかもしれない。他のことでも不快にしてたかも。いや、そもそも俺のことが不快とか――
「私だって君の為にいろんなことして甘やかしたいのにー!」
 ――え、そこ?
「たまには私にもやらせてよ! 今日の食器洗いは私がやるからね!」

 大好きな君の為にすることも、大好きな君にしてもらうことも、どちらも心地良い。
 一緒に居る、至福の時間。


『大好きな君に』

3/3/2024, 3:03:42 PM

 雛人形を早く片付けないとと行き遅れるという。そんな話は聞いたことない?
 雛祭りが終われば、もう出番は終了。また来年ね。と、もう用無し扱いみたいで可哀想だ。
 ところで、私の地域は雛祭りが一ヶ月遅れだった。
 三月三日が終わっているのに出していていいの?
 雛祭りが三月三日だということを、いろんな情報から知っていたものだから、そんなことを小さい頃の私はずっと疑問に思っていた。
 まぁそんなわけで立派に行き遅れたわけですよ。あ、は、はははぁー……。


『ひなまつり』

3/3/2024, 2:57:28 AM

 天界から堕とされた。
 元々位の高い天使だった。周りに頼られていたし、真面目にやることをやっていた。何も問題はないと思っていた。
 それが、罠に嵌められた。
 結果、世界には疫病や貧困、争いなど、様々な厄災が広がってしまった。
 取り返しの付かないことをしてしまった申し訳なさや後悔と、なぜこんなことになってしまったのかという疑問、そして恨みや憎しみが心を支配して、ぐちゃぐちゃなまま、天界から堕とされた。
 これからどうしたらいいのか。何もわからなかった。
 ただ、たった一つ心に残ったものがあった。
 ――復讐心。自分を陥れた者へ必ず復讐してやるという固い意志だった。
 それが今の自分を生かして動かす動力源。たった一つの希望である。


『たった1つの希望』

3/1/2024, 10:30:48 PM

「君って好きな人いる?」
 人が少しずつ捌けていく放課後の教室、彼女の隣の席に勝手に座って、そう声を掛けてみた。
 俺を怪訝そうに見ていた彼女が、途端に顔を薄い紅色に染める。
「あなたには関係ないでしょう?」
「誰か当ててみようか」
 彼女のそんな返答など気にせず、笑ってその名を言ってやる。
「五組の坂崎君」
 彼女は焦って俺を見る。
 その顔はいよいよ真っ赤になって、声を荒らげた。
「ど、どうして……!!」
「あー、マジで当たっちゃった?」
「――~……っ!」
 からかう俺が嫌なのか、無言でひたすら鞄に荷物を詰めている。
「でもさー趣味悪いよねぇ。坂崎君ってさ、噂によると何股もしてるっていうじゃない? 君もそのうちの一人になりたいわけ?」
 刺激するように続ける。
 彼女がこちらを向いた。
「変なこと言わないでよ! あなたがあの人の何を知っているっていうの!?」
「君よりは知っているつもりだけどな。男の間では有名だけど? 女の間ではどう王子様に映ってるか知らないけどさ」
「もういい! 私、もう帰るんだから!」
 鞄を持ち上げ教室の扉へと向かおうとする彼女の腕を、掴んだ。
「何……!?」
 怒った様子で振り向く彼女の唇を、出し抜けに塞ぐ。
 ――間。
「……なっ、何するの!?」
「君は、そいつと付き合いたいの? 付き合って何をしたいの? こういうことがしたいの?」
 いつの間にか二人きりの教室で、静かに彼女を抱き寄せた。
「――…………っ!!!! ……っ!!」
 彼女の抗議の声も耳の奥まで届かない。
 ただ、俺の呪縛を必死に振り解こうとする、その表情から伝わってくる。

 そう、それでいい。
 ――あぁ、その君の嫌そうな瞳。
 もっとずっと近くで見ていたいんだ。


『欲望』

2/29/2024, 10:31:47 AM

 逃げ出した。
 きっと疲れていたんだ。
 いつも通り出勤していた。なのに、会社の最寄駅に着いたっていうのに、足が動かないんだ。
「いきたくない」
 そのまま、電車のドアは閉まり、こんな自分を乗せたまま進んでいく。
 ……どこに行くんだろう?
 どうしよう。今引き返せばまだ間に合う。でも、体が、心が、行きたくないと言っている。
 なら、もういいや。このまま、行けるところまで行ってやろう。電車に乗って、どこまでも。
 こうして、初めて無断欠勤をしてしまった。
 窓の外の景色は、都会から少し田舎へと姿を変えていく。
 終点まで来て、僕は電車を降りた。
 さっきからスマホが鳴りっぱなしだ。スマホの電源を切ると、辺りを散策してみることにした。
 個人経営だろう店が駅前にぽつんとある。しかし、まだ開店していない。他の店は見当たらないし、少し先は閑静な住宅街といったところか。どうしようかな。
 適当に少し歩くと、見たことないローカル線が走っていた。
 今度はそれに乗って、行けるところまで行ってみることにした。こんな行き当たりばったりの旅も楽しいね。
 列車に乗って、どこまでも。僕の心が晴れるまで。


『列車に乗って』

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