こうして、お姫様は王子様と結婚し、幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
その裏側で、王子様との願いが叶わなかった女の子は泣いていました。お姫様を狙っていた男はどこかへ消えてしまいました。悪いことをした魔女は殺されました。
『ハッピーエンド』
視線を感じて振り返ると、じっと見つめられていた。
まいったなぁ……。
そんなに見つめられると困ってしまう。
仕方ない。この店での窃盗は諦めよう。
視線を感じて振り返ると、じっと見つめられていた。
まいったなぁ……。
そんなに見つめられると困ってしまう。
仕方ない。この犬は拾って帰ろう。
今日は散々だ。盗みを働けなかったし、帰りには食い扶持が増えてしまった。
しかも、あまりにも真っ直ぐに見つめてくるこいつの瞳に、そろそろ真面目に働いてもいいかもしれないなんて、そんなことを考えてしまった。
『見つめられると』
My Heart? 私のハート?
それなら、その、右下の名前をタップした後の、上のところに出てきた星マークをタップすると、ありますよ。
試しに出てきたそのハートをタップしてみるといいと思います。はい。
――って、露骨なことやってると、逆にハート貰えなそうだなぁ。そして嫌われて心が傷付きそう。
最近伸び悩んでるしなぁ。もちろん日によるけど。心がもやもやするよ。
でも、ハート欲しいなぁ。
悩める複雑なMy Heart……。
『My Heart』
夕方のチャイムが鳴り、みんな帰っていく。
「帰らないのー?」
「大丈夫。迎えが来るから」
「ふーん。じゃあまた明日ね」
手を振り、元気に走っていく後姿を見送った後、私は一人公園のブランコに乗ってじっとしていた。
温かい家。待っている両親。美味しいご飯。眠りに就いたらまた明日、楽しい一日が始まるんだろう。
私は持っていない。……羨ましい。でも、どれだけ羨んだって、私はそれを手に入れられない。ないものねだりだとわかっている。私は、独りだ。
「あ、いたー!」
「何やってんですか。帰りますよ!」
ただぼーっと地面を見つめていたら、元気よく声を掛けられた。
顔を上げると、よく見知った姿があった。
「また遊んでたんですか?」
「もう暗くなりますよ。帰りましょう。僕らの家に」
そう手を差し伸べてくる。
ちゃんと私を迎えに来てくれた。
温かいものが胸に広がっていく。
「……ねぇ、私達って家族なのかな?」
そう問い掛けてしまい、はっとする。
もし、これで家族じゃないと言われてしまったら――
「当たり前でしょ!」
「僕らはそう思っていますけど」
「…………そっか」
嬉しくなって、思わず顔が綻ぶ。
「さぁ、神社に帰りましょう。神様」
「うん、ありがとう。狛犬達」
私の手を引いていく家族。まるで両親のように。
普通の家ではないけれど、私しか持っていない大切なもの達だ。
『ないものねだり』
別にあんたのことなんか好きじゃないんだからね!
あー……俺も。
好きじゃないのに、何で付き合おうとするの?
周りがうるさいし、お前といるのは気が楽だから。
たしかに。それはそう。
じゃあそういうことで。
好きだなんて思ったことない。
でも気付けば、結婚して、死ぬまで一緒にいた。添い遂げた。
好きじゃないけど、あなた以外は考えられなくなってたな。
『好きじゃないのに』