川柳えむ

Open App
4/9/2024, 6:36:23 AM

 突き抜けるような青空に、白い雲が心地良さそうに漂っている。暖かい風が優しく吹いて、もうすぐ春が来ることを告げている。
 あぁ。なんて素敵な、お別れ日和だろうか。
 今日という日、僕らは別々の道へ旅立つ。それぞれがそれぞれの胸に、様々な想いを抱いて――。

「もう卒業かぁー。早いねぇ」
「そうだね。なんだかあっという間だったな」

 こうやって、教室でみんなとわいわい会話するのももう最後。
 そんなことを考えてしまうと、鼻の奥がツンと痛み、目の端から何か零れ落ちそうになる。
 それを気付かれないように、あえて元気良く振る舞う。

「卒業だしさ、せっかくだから今月中にどこかみんなで集まって、一日遊ぼうよ」
「おー」
「いいねぇ」
「そういやここ行ってみたいと思ってたんだけど」
「みんなで夜タコパしたい」

 そうやって、遊ぶ計画を立てていく。みんなの楽しそうな顔を眺める。

 大切な仲間。楽しい時間。忘れたくない。絶対に、忘れない。
 寂しさはあるけど、大丈夫。だって、お別れしたって、何もかもが終わるわけじゃない。きっとみんなわかっている。こうやって集まって話したり遊んだり、そういったことが簡単にはできなくなってしまうけど。
 この青い空は繋がっていて、その下にみんないるんだ。僕らは違う道を、果てしなく広がる世界を、それぞれに希望を持って旅を続けていく。それでもお互いを思う心はきっと一緒だ。
 これからも、ずっと――。


『これからも、ずっと』

4/8/2024, 7:37:33 AM

「姫は私のだ!」
「いや、俺のものだ!」
 私はこの国のお姫様。
 今、私を取り合って、隣国の王子達が争っている。お城の外でバッタリと二人に出くわし、こうなってしまった。
 わかってる。私が美しいのがいけないんだって。私は間違いなくこの物語のヒロイン!
「私の為に争うのはやめてー!」
 止めに入ってみるが、一向に止む気配はない。
 そして、それはそのうち殴り合いの喧嘩にまで発展してしまった。
 どうしよう……。
 それは結局、二人の気の済むまで行われることになった。
 殴り合いに疲れ、倒れ込む二人。
「はぁ……やるじゃないか、おまえ……」
「そっちこそ……」
 沈んでいく夕日が二人を照らす。
 お互いに支え合い、立ち上がる。夕日を背に、二人は熱い握手を交わした。
「まさかここまでやるとはね……気に入ったよ。どうだ? これから一緒に食事でも」
「いいね。俺もおまえの話を聞いてみたい」
 そして、二人はそのまま夕日に溶けるように、行ってしまった。私を置いて……。
「って、ねぇ! 私がヒロインじゃないの!? どういうことなの!? いつの時代の漫画よ!」

 ハッピーエンド♡

「ハッピーエンドじゃないわよ!」


『沈む夕日』

4/7/2024, 4:10:14 AM

 横顔が美しいなと思った。後ろ姿も、静かに佇むその様子も、どんな仕草でも。
 一目惚れだったんだ。
 だから、君の目をじっと見てみたいと思った。
「ずっと好きでした」
 君の目をじっと見て、そう伝えた。
 君の目を見つめると、動けなくなる。正面から見た君に、その瞳の美しさに、思わず固まってしまう。思っていたより、ずっとずっと綺麗だ。
 たとえこのまま固まって、動けなくなって、死んでしまったとしても、本望だ。
 美しい。僕の愛するメドゥーサ。


『君の目を見つめると』

4/5/2024, 10:24:49 PM

 ママはどこへ行ったのか聞いたら、パパは「ママはお星様になったんだよ」って言った。
 だから、夜、星がよく見える公園まで行って、空を見上げながら、どれがママだろうって探した。
 僕を探しに来たパパにはいっぱい怒られた。
 でも、ママに会いたかったんだ。
 僕は寂しいよ。ママは寂しくない?
 泣きながら、今度はパパと二人で空を見上げた。
 空にはいっぱいの星がある。それなら、ママはきっと寂しくないね。こんなに友達がいるんだから。
 ねぇ、ママ、見えてる? 今はまだ寂しいけど、パパと二人で頑張るよ。僕も友達いっぱい作るよ。
 星空に向かって手を振った。


『星空の下で』

4/4/2024, 10:27:04 PM

 私とあなたとの関係に名前を付けないで、今はそれでいいと、自分に言い聞かせる。
 それでいい。それでもいい。それがいいわけじゃないけど。

 そうやってずっと言い聞かせてきた。いつかあなたが私の前から消えてしまう瞬間まで。
 そしてそこで初めて、それでいいわけなかったと、強く後悔をしたんだ。


『それでいい』

Next