すっかり肌寒くなってきて、もうすぐ君の出番ですね。
頼りない僕を、いつも助けてくれてありがとう。
僕は、今年どうだったかな? 少しくらいはちゃんと役目を果たすことができたかな?
ここからは君が頑張ってね。僕が言うことじゃないかもしれないけど。
僕は君の季節も楽しみにしてるよ。
また来年会いましょう。
秋より
『冬へ』
月が君を照らしていた。
雲の隙間から顔を覗かせた月が、まるで君だけのスポットライトのように、ぽっかりと。
そんなことがあるのだろうか? 君は月の精のように見えた。
儚く笑う君は、今にも月に帰っていきそうで。
思わずそっと優しく抱き締めた。
『君を照らす月』
誰も来ないような薄暗い森の中、一人突っ立っていた。
風が吹いて、木を揺らしていく。
木々の間から木漏れ日が照らし、一瞬視界を白く眩ませる。何も見えない。
ただ、ざわざわと騒ぐ木々の声が、耳を掠めていく。
感じるのはその音と、木漏れ日の暖かさだけだった。
それが体を包み込んでくるから、まるで慰めのようにも感じて、悔しくて。
木漏れ日の下で、しばらく泣いた。
気付けば、いつしか光は去ってしまっていたが、暖かさが跡をつけたように、心を照らしていた。
『木漏れ日の跡』
「大きくなったらパパと結婚するー!」
「パパとは結婚できないんだぞ。パパにはママがいるからね」
「やだー! 結婚するの。約束して、パパ!」
そんな娘の頭を撫でて宥めていたのはどれくらい昔のことか。
大きくなった娘は、俺とじゃなく、娘自身が見つけた素敵な男と結婚する。心底嬉しそうな笑顔で、涙を浮かべている。
俺の目頭にも熱いものが込み上げてくる。
ささやかな約束は、果たされない。誰よりも幸せになれ。
『ささやかな約束』
毎日祈り続けた。
どれだけ悲しいことが起きても、どれだけ苦しくても、いつか報われると、いつか神様が声を聞かせてくださると。
虐げられても、死にそうになりながらも、ただひたすらに奉仕して、毎日の祈りを欠かさずにいた。
神様、私が救われるのはいつでしょうか?
瞼を閉じる。どんどん意識が薄れていく。
日毎夜毎の祈りの果て、神様はようやく私を呼んでくださった。
『祈りの果て』