誰よりも好きなのに
誰よりも遠い
誰よりも思っているのに
誰よりも話せない
誰よりも近ずきたいのに
誰よりも避けてしまう
誰よりもそばに居たいのに
誰よりも何よりも…
渡したかった
でも渡せなかった
事務所で他の女性達と談笑してる貴方を見て、両手に抱えた紙袋に力が入る
挨拶くらいで大した話しさえ出来ない
貴方は他の女性とは笑顔で話しかけるのに、私にはそんなことしてくれないね
どうせ無理なんだ
どうせ叶わないんだ
だからバレンタインの力を借りて、貴方の好きなお菓子を用意した
チョコが食べれない貴方のために伊勢丹にも行った
でも渡せなかった
勇気がなかった
優しい貴方は笑顔で受け取ってくれるだろうけどね
今週は散々な1週間だった
3年付き合った彼氏が二股していたと知った日曜日
仕事しない癖に威張り腐った上司のご機嫌取りをした月曜日
残業しないで、自分の仕事を放って定時で帰る後輩の尻拭いをした火曜日
晴れ予報だったのに、退勤時間になって大雨になった水曜日
無理難題を押し付けてくる取引先に頭を抱えながら、終電間近まで資料を作り上げた木曜日
契約間近まで漕ぎ着けた案件が白紙になった金曜日
擦り切れ寸前の心を立て直すために
今日は街へ出よう
いつもは着ないタイトなワンピースに高いピンヒール
そうだ、口紅は紅く染めあげよう
化粧という鎧を纏って
わたしは私を守り抜こう
高貴な姫のように麗しく
騎士のように逞しく
優しさとは
人が憂うと書いて優しさと言う
憂いた時に気がつくのが優しさなのだと思う
また憂いたことのある人が与えられるのも優しさだと思う
人が憂い優しさに変化していく
長年勤めていた介護施設の退職日
いつも私の顔を見ると喜んで手を振ってくれたおばあちゃん
綺麗な瞳に目尻には優しさの溢れた皺が刻まれている
いつも私の手を取り、「あなたは素敵な子。この世の宝」と頬ずりをしてくれた
いつも私に愛と温もりをくれた
退職日、彼女に辞めると伝えた
彼女は寂しそうに振り絞った笑顔で「また会おうね。サヨナラなんて寂しすぎるから」と言ってくれた
「うん。もちろん。また会おう」私は涙をこらえてささやかな約束を彼女と交わした
2人とも分かっていた。「また」がないことを
でもその約束に縋りたいほど、私たちは思い合っていた