「誰かしら?」
私はみんなの笑いもの。
街を歩けば、すれ違う人が。
学校へ行けば、クラスのみんなが。
家に帰れば、両親が。
いつしか鏡を見るのが恐怖になった。
そんなある日、彼女はちょっと顔貸してと言って強引に私を連れ去った。
「…できた!ほら、鏡見てみ?」
「……いや、怖い、です。無理です無理です。」
「大丈夫!!!」
彼女の真剣な目に負け、恐る恐る鏡を見た。
「えっ…これ…誰?」
鏡の中の別人のような自分に驚いていると、彼女は太陽のような眩しい笑顔で笑った。
「芽吹きのとき」
放課後。特にやることもなく、校内を適当に散歩していた。
人気のない西棟の校内を何の気なしに歩いていると、教室の扉が少し開いていて、人の歌声が微かに聴こえてきた。
誰もいないと思っていた僕は驚いたが、興味本位で教室に近づいて様子を盗み見た。
とても綺麗な歌声と後ろ姿に思わず夢中になり見惚れていると、扉に軽くぶつかり物音を立ててしまった。
歌っていた彼女がビクッとして、僕の方に目を向ける。
「ごめんなさい!!た、たまたま、歌が聴こえてきて!!凄いキレイで!あの、えっと…すいません。」
「…ふふっ、いいよ。別に。キレイだった?ありがとう。」
振り返った彼女は暖かな西陽に包まれ、まるで後光が差した女神のようだった。
僕の心になにかが芽吹いた瞬間(とき)だった。
「あの日の温もり」
「迷惑かけて…ごめんね、私の分も…幸せに…生きて…ね。」
それが、母の最期の言葉だった。
俺の母は末期の癌を患っていた。辛い闘病生活の末、最期まで苦しんで逝ってしまった。
人の死に立ち会うのはあれが人生で初めての経験だった。握っていた母の手から徐々に母の温もりが消えていくあの感覚は、俺に深い絶望感と…
己の手の中でひとつの命の温もりが消えてゆく、得も言われぬ興奮を覚えさせた。
「cute!」
予報では今日は1日晴れなのに、突然雨が降ってきた。傘を持っていなかった私は上着を頭に被って屋根のあるところを探して走っていた。
突然、ドンっと衝撃があった。
尻もちをつく私の反対側で同じく尻もちをつく彼。
「괜찮아? (大丈夫?)」
直ぐに立ち上がって優しく手を差し伸べてくれる彼。
「あ、え、えっと…。」
とっさの出来事に困惑して座り込んだまま、あわあわしていると、彼がクスッと笑った。
「cute.」
その微笑みを見た瞬間私の心は鷲掴みにされてしまった。これが、私と彼の始まりだった。
「記録」
私は毎日"私"として生きた記録を付けている。
毎日、その日の日付と曜日と出来事を簡単に書いていた。
1日だけ記録が抜けている日があった。
「あぁ、この日は"ワタシ"として生きた日か。」
その日の夜、近くで殺人事件が起きたニュースを見た。次の日、私は直ぐに自首しに行った。