「約束」
約束は嫌い。
約束を守るか破るかは、結局その人次第だから。
約束は嫌い。
たった4文字で人を縛ることも
自分を苦しめることもできるから。
約束は嫌い。
たくさん裏切られたから。
「必ず帰ってくるからね、約束。」
お互いの小指を繋ぎ合わせ、そういって出ていった母は二度と戻らなかったから。
「ひらり」
僕は普段は都内の大学に通う、冴えないただの男子大学生。
裏の顔は誰も知らない。
僕には気になる女の子がいる。同じ学部の可憐なあの子。授業中ボーっと眺めていると、ふと目が合ってしまい、逸らしてしまった。
私は普段は都内の大学に通う、ごく普通の女子大生。
裏の顔は誰も知らない。
私には嫌いな奴がいる。同じ学部の冴えないアイツ。授業中、ふと目が合ったが逸らされた。
今日の任務は政府要人の暗殺。2人はバディ。
今日も今日とて息のあった(?)コンビネーションで敵をひらりと躱してゆく。
「誰かしら?」
私はみんなの笑いもの。
街を歩けば、すれ違う人が。
学校へ行けば、クラスのみんなが。
家に帰れば、両親が。
いつしか鏡を見るのが恐怖になった。
そんなある日、彼女はちょっと顔貸してと言って強引に私を連れ去った。
「…できた!ほら、鏡見てみ?」
「……いや、怖い、です。無理です無理です。」
「大丈夫!!!」
彼女の真剣な目に負け、恐る恐る鏡を見た。
「えっ…これ…誰?」
鏡の中の別人のような自分に驚いていると、彼女は太陽のような眩しい笑顔で笑った。
「芽吹きのとき」
放課後。特にやることもなく、校内を適当に散歩していた。
人気のない西棟の校内を何の気なしに歩いていると、教室の扉が少し開いていて、人の歌声が微かに聴こえてきた。
誰もいないと思っていた僕は驚いたが、興味本位で教室に近づいて様子を盗み見た。
とても綺麗な歌声と後ろ姿に思わず夢中になり見惚れていると、扉に軽くぶつかり物音を立ててしまった。
歌っていた彼女がビクッとして、僕の方に目を向ける。
「ごめんなさい!!た、たまたま、歌が聴こえてきて!!凄いキレイで!あの、えっと…すいません。」
「…ふふっ、いいよ。別に。キレイだった?ありがとう。」
振り返った彼女は暖かな西陽に包まれ、まるで後光が差した女神のようだった。
僕の心になにかが芽吹いた瞬間(とき)だった。
「あの日の温もり」
「迷惑かけて…ごめんね、私の分も…幸せに…生きて…ね。」
それが、母の最期の言葉だった。
俺の母は末期の癌を患っていた。辛い闘病生活の末、最期まで苦しんで逝ってしまった。
人の死に立ち会うのはあれが人生で初めての経験だった。握っていた母の手から徐々に母の温もりが消えていくあの感覚は、俺に深い絶望感と…
己の手の中でひとつの命の温もりが消えてゆく、得も言われぬ興奮を覚えさせた。