「手放す勇気」
現代社会はモノで溢れている。
様々な文明の利器によって生活が豊かになったのはわかるが、あまりにもモノが溢れすぎていると思う。
特にスマートフォンは1度持ってしまうと手放すことはかなり難しいだろう。
そんな時、わたしはスマートフォンの電源を消して鍵のかかる箱にしまってみる。
現実逃避ならぬスマホ逃避だ。
スマホから離れると、辺りの景色が鮮明に見えた。様々な音がはっきりと聞こえる。
思考が巡る。言葉が紡げる。心にゆとりができる。不思議と気分が良かった。
完全には手放せなかったけれど、手放した少しの間、確かにわたしはいつもより人間らしかった。
「光輝け、暗闇で」
僕の片目は生まれつき視力を失っていた。
残りの片目も、次第に視力が失われていった。
そんな日々の中、僕はバレエと出会う。
毎日のレッスンのお陰で、舞台に立てるほど上達した。
きっと、僕の両目はもう少しで見えなくなるだろう。
暗闇の世界へ行くのはまだ少し怖いけれど、僕は輝かしい光に照らされて舞台の上で舞い続ける。
そんな僕の輝きが誰かに届くことを願って。
「酸素」
もしもこの世界から酸素が消えてしまったらどうする?
私は命よりも大切なあなたを、1分でも長く生かせるために身体中の酸素を全部あなたにあげる。
どうせ2人とも死ぬのに?
そんなのわかってる。でも、私は最期にあなたの役に立って、酸素がなくなる苦しみの中、あなたに看取られて逝きたい。
彼は口づけをするように優しく私の口から酸素を吸い取った。
「記憶の海」
誰にでも、思い出したくない記憶はあるだろう。
わたしの記憶は海のように果てしなく膨大だ。
ふとした瞬間、高波のように思い出したくもない嫌な記憶が押し寄せる。
わたしの気持ちとは裏腹に、わたしの中の記憶の海は否応なく思い出させる。
海の奥底に沈めてやりたい。
けれど、忘れたい記憶はどんなに沈めても沈めても、忘れた頃に浮かび上がってくる。
いっそのこと、記憶の海を消してしまおうか。
わたしは壁に頭を叩きつけた。
すると、額が少し切れて海水が流れ出た。
「ただ君だけ」
※ 4/17 「静かな情熱」にかかるお話。
僕は根暗で髪もボサボサに伸びてジメジメしたオーラを纏っていて、クラスメイトからは腫れ物のように扱われる。
人と関わることは苦手だから今の環境は正直ありがたい。
ただ1人を除いて。
隣の席のギャルの子は僕に毎日必ず話しかけてきて、ちょっかいをかけてくる。
ある日、彼女が話しかけてきたけど、いつもより静かだった。体調が悪いようだ。
すると、つるんでいる友達が集まってきて、放課後遊びに誘っていた。
彼女のことが見えていないのだろうか、あんなに体調が悪そうなのに。
仕方ないと思い、彼女の手を引いて保健室へ連れていく。
教室に戻ろうとすると、服の裾を引っ張られた。
「…ありがとう。めっちゃ優しいよね。君のかっこいくて優しいとこ、わたしだけが知ってるんだ!へへっ。」
顔を真っ赤にして僕に笑いかけた。
君だけだよ、めげずに僕に近づこうとする人は。
あぁ、もう可愛すぎて無理だ。そろそろ、降参しようかな。